e-文書法とは 導入のメリットと電子署名・タイムスタンプの役割を解説

e-文書法と導入における電子署名・タイムスタンプの役割とは

「e-文書法」という言葉をご存知でしょうか。
e-文書法とは、法的保存が義務とされている文書をすべて電子化保存してもよいと認めた法律です。
電子文書での保存には、コスト削減や業務効率化など多くのメリットが有りますが、「誰が作ったかわからない」「改ざんの可能性がある」等の問題点も抱えています。この問題点を解決し、電子文書が本物であることを立証するための技術が、「電子署名」と「タイムスタンプ」です。

今回はe-文書法や関連用語について解説します。

e-文書法とは

法的に保存義務がある文書は、従来紙媒体での保存が求められていましたが、紙保存の際のコストの問題やIT化が進むにともない、電子データでの保存を望む企業が多くなっていきました。
そこで、2005年に「民間における文書の電子的保存を容認する」法律として施行されたのが、e-文書法です。
このe-文書法により、書類をスキャナで取り込んで、画像データ(電子書、デジタル文書)でも保存することが可能になりました。

e-文書法とは、正式には、以下の法律の総称です。

この法律は、わが国の電子政府化や電子社会化を目指す一連の「e-Japan戦略」の実施過程の中で制定された法律です。
e-文書法の内の通則法によって、これまで、紙での書類の作成や保存をしなければ法律上認められなかった文書についての規制が緩和され、原則として電子文書の作成や保存などが認められることとなりました。通則法によって、約250本の法律による書類保存を、各法の改正なしで電子保存可能となりました。

一方で、文書の性質上、一定の要件が必要になる場合には通則法の内容では十分でないケースがあります。整備法は、個別法の規定整備を行うためのもので、国税関係書類を扱う電子帳簿保存法はこちらに当てはまります。したがって、e-文書法と一口に言っても、ありとあらゆる書類を必ずしも電子化できるわけではないという点は注意が必要です。

e-文書法導入のメリット

電子文書で保存できることにより、

  • 紙コストの削減
  • 保管コストの削減
  • 付随する業務のIT化による業務効率アップ

などの、e-文書法導入のメリットが期待できます。

電子的な文書管理が確立できれば、電子データと紙、そのそれぞれの媒体返還に伴うコストや、膨大な紙の書類の管理や保管に伴うコストの削減が可能になります。

e-文書法の問題点

便利に思えるe-文書法ですが、e-文書法にはデジタルならではの問題点もあります。
それは「文書の原本性」です。紙媒体と比べると、電子文書には以下の課題がありました。

  • コピーを簡単に作ることができる
  • 作成日時を操作できる
  • 誰が送ってきた文書なのか、確認が難しい
  • 改ざんがあっても、気付くことが難しい
  • 外部から閲覧できる可能性がある
  • データが消える・アップデートにより読めなくなる可能性がある

紙媒体であれば、原本を複製し、改ざんしようとすれば分かります。しかし、電子文書の場合は、簡単に手を加えられます。痕跡を残さずに改ざんすることさえ、可能なのです。
e-文書法を導入するメリットを受けるには、こうしたデジタルならではの問題点を解決する必要があります。

そこで、正確な情報として扱うために「文書の原本性」を証明する手段として用いられているのが、「電子署名」と「タイムスタンプ」です。

e-文書法における電子署名・タイムスタンプの役割

「電子署名」と「タイムスタンプ」は、インターネットの中において「誰が」「いつ」「何を」を担保するための証拠となるものです。同時に、電子文書の原本性を確認できる手段でもあります。
そのため、e-文書法における「電子署名」と「タイムスタンプ」は、重要な役割を持つと言えます。
また、「電子署名」と「タイムスタンプ」には、それぞれカバーしている領域が異なります。その違いについて見ていきましょう。

電子署名とは

電子署名とは、「誰が作成した文書か」を証明するものです。認証の流れの中で、改ざんの有無も確認することができます。認証局を通した、公開鍵暗号方式の技術によって実現しています。インターネット上では、なりすましした第三者が文書を送ってくることも想定されます。電子署名を用いることで、こういったトラブルを防ぐことができます。

「電子署名及び認証業務に関する法律」が2001年に施行され、電子署名の法的な効力が定められ、認定制度や環境の整備が進んできました。

ただ、平成27年度の要件緩和により、電子署名は必須ではなくなりました(後述)。しかし、電子署名は訴訟対策や原本性の担保として、今なお多くの場面で導入されています。

タイムスタンプとは

タイムスタンプとは、電子データと時刻情報を組み合わせることで、「ある時期に間違いなく存在した文書」であることと、「改ざんされていないこと」を証明する仕組みです。

パソコンの時刻設定は自由に変えられますし、作成日時等を変更できるソフトもあるため、自動的に付与された時刻情報は信頼性に劣ります。タイムスタンプでは、「時刻配信局」「時刻認証局」という第三者機関を通すことで、正確な時刻情報を付与することができるのです。

2004年に「タイムビジネスに関わる指針」が発表され、これに基づき、日本データ通信協会がこの認定を行っています。

2015年度 e-文書法の要件緩和によりペーパーレス化が進む

e-文書法における電子署名やタイムスタンプは、電子文書の原本性を担保する技術として、重要な役割を持っています。
税関系の書類や医療・消防関係の法律で保存義務が定められている文書等に導入されていますが、領収書や契約書は額面で電子化の可否が分かれており、電子署名・タイムスタンプも必要だったため、結局は紙媒体での保存を継続する企業も多くありました。(詳細は、それぞれの法律・ガイドライン等で定められています)

そういった背景を受け、2015年9月に、e-文書法の要件緩和が行われました。これにより、さらにペーパーレス化が進むと予想されます。

大きな変更点は下記の通りです。

  • 入力者の情報保存(ユーザーIDなど)は必要だが、電子署名は不要(※タイムスタンプは必要)
  • 領収書、契約書などの金額基準が廃止され、すべてをスキャナで保存することができる
  • カラー画像以外でも保存できる

e-文書法の要件緩和により、電子データ化を検討する企業も多くなっていると思います。
今後も、ペーパーレス化が進むように、適宜要件が変更される可能性があります。
e-文書法の背景と、電子署名・タイムスタンプの考え方を理解して、業務に活かしてくださいね。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。