コンサル料は何費?勘定科目や計上タイミングを解説
企業で発生する様々な問題を解決するために、コンサルタント会社や弁護士などの専門家に相談することもあるでしょう。コンサルティング費用の仕訳や経理処理は、以下によって異なります。
- 発注先が個人か企業か
- 発注頻度が定額かスポットか
- 発注期間が月額制か年棒制か
コンサルティング費用の勘定科目、パターンごとの仕訳処理や注意点について、詳しく解説します。
コンサルティング費用は「外注費」や「支払手数料」が一般的
コンサルティング費用とは、コンサルタント会社へ仕事を依頼した際に支払う費用や会計士、税理士、弁護士といった専門家と顧問契約などを結んだ場合に発生する費用のことです。報告書のような成果物があるケースもありますが、多くは相談料に該当するでしょう。
事業に関連するコンサルティング費用は、「外注費」や「支払手数料」、「顧問料」など勘定科目で経費計上します。ただし、企業会計原則の「継続性の原則」に則って、同じ勘定科目を継続的に使用する必要があります。
「外注費」とは、請負契約を締結して業務の一部を外部に委託したときに使用する勘定科目です。また、「支払手数料」には銀行などでの振込手数料、為替手数料の他に弁護士や経営コンサルタントなどへの支払い報酬を含みます。
仕訳方法は発注内容によって異なる
仕訳の方法は発注内容によって違います。具体的には、下記条件の違いによって処理が異なります。
- 発注先の形態の違い(個人か企業かの違い)
- 発注頻度の違い(定額発注とスポット発注)
- 発注期間の違い(月額制と年額制)
それぞれのケースについて詳しく解説します。
発注先の形態の違い(個人か企業かの違い)
発注する先が企業の場合、通常の仕訳を計上します。
例:顧問弁護士に12月分の顧問料5万円を支払った。(源泉徴収については、省略)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
外注費 | 50,000 | 普通預金 | 50,000 | 12月分顧問料 |
外注費や支払手数料といった勘定科目は、他の委託費用や手数料なども計上されます。そのため、摘要欄に内容が分かるよう記載すると良いでしょう。
発注先が個人の場合、支払いの都度、金額に応じた所得税および復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。
例:個人の経営コンサルタントへ経営相談料3万円を支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
外注費 | 30,000 | 普通預金 | 26,937 | 経営相談料 | |
預り金 | 3,063 | 源泉徴収税 |
源泉徴収税は、下記の表に基づいて計算した金額を預り金として処理し、原則として、翌月10日までに納付します。
報酬額(=A) | 税額 |
---|---|
100万円以下 | A×10.21% |
100万円超 | (A-100万円)×20.42%+102,100円 |
報酬額の中に消費税が含まれている場合、原則は消費税を含めた金額が源泉所得税の対象となります。ただし、請求書等で消費税が明確に区分されている場合は、消費税抜きの報酬額で計算することも認められています。なお、求めた税額に1円未満の端数があるときは切り捨てます。
参考:No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金|国税庁 (nta.go.jp)
発注頻度の違い(定額発注とスポット発注)
コンサルタント費用の発注方法は、毎月の定額発注とスポット発注に大別されます。
定額発注は、コンサルタントや弁護士などと事前に顧問契約などを取り交わし、契約書に記載された条件や金額に基づいて支払います。相手方から請求書や領収書の送付はなく、毎月一定額を口座振替することが多いでしょう。この場合は、支払い時に経費計上します。
スポット発注は、特定の期間やプロジェクト単位などスポット的にコンサルタントを利用するケースです。例えば、新規プロジェクトのアドバイザリーや、税理士であれば修正申告や税務調査対応の依頼が該当します。
例:顧問税理士へ税務調査対応を依頼し、終了後に10万円を支払った。(源泉徴収については、省略)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
支払手数料 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 | 税務調査対応 |
スポット報酬は、いつ費用として計上するかに注意が必要です。経費への計上は、業務が終了し請求が確定した時点に行います。事前に費用を支払う場合は前払費用で処理し、完了した時点で経費へ振り替えます。また、相手先からの請求書が遅れるようであれば、先に未払費用として計上しましょう。
スポットのコンサルタント依頼で、固定資産やソフトウェア開発に関連する場合は取得額に含めることがあるので注意が必要です。
例:自社会計システム構築にあたり、開発に係るコンサルタント料30万円をシステム会社へ支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
ソフトウェア | 300,000 | 普通預金 | 300,000 | ソフトウェア開発費 |
開発に関連するコンサルタント費用は、外注費などの経費ではなく無形固定資産であるソフトウェアとし減価償却によって費用計上を行います。なお、開発等の事前検討の段階でかかったコンサルタント料は、経費計上して問題ありません。
発注期間の違い(月額制と年額制)
コンサルタント料の発注期間が、月額制と年額制のどちらかによっても仕訳方法は異なります。月々の顧問料を月額制で支払う場合は、支払時に経費計上します。一方、年額制のように1年分を一括して支払う場合、当月に対応する分のみ費用計上が可能であり、その他は前払費用として資産計上する必要があります。
例:経営コンサルタント会社に顧問料24万円(1年分)を開始時期の1月に全額支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
支払手数料 | 20,000 | 普通預金 | 240,000 | 1月顧問料 | |
前払費用 | 220,000 | 2~12月顧問料 |
費用計上の原則は、役務の提供が完了したタイミングです。翌月以降は、前払費用を取り崩して月々の費用として計上していきます。
例:2月に前払費用2万円(顧問料)を支払手数料へ振り替えた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
支払手数料 | 20,000 | 前払費用 | 20,000 | 2月顧問料 |
なお、法人税法の特例措置として「短期前払費用の特例」がありますが、顧問料の年度払いなどは適用できませんので注意しましょう。法人税法では、一定の要件を満たす短期の前払費用は、支払った日での全額損金算入を認める特例があります。要件の1つに、毎月等質・等量のサービスが継続的に提供されていることがありますが、士業の顧問契約における業務は毎月異なるためこの要件を満たさないと考えられます。
ちなみに、短期前払費用の特例は土地や建物の賃料、システムのリース料、保険料、などが適用可能です。
参考:No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合|国税庁 (nta.go.jp)
まとめ
コンサルティング費用について様々なケースでの仕訳を解説しました。特に、個人の士業の方への報酬の支払い時には、源泉徴収を行う必要があるので注意しましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。