キャッシュフロー計算書の間接法での作り方!これで中小企業も簡単作成
中小企業ではキャッシュ・フロー計算書の作成は義務付けられていません。しかし、頭の中で利益を追っていて、決算の段階になって、利益がたくさん出ているのに、現金が思ったより増えていないという経験をしたこともあるのではないでしょうか?そんな時に役立つのがキャッシュ・フロー計算書です。
キャッシュ・フロー計算書とは
キャッシュ・フロー計算書とは、現金及び現金同等物の流れを見るための決算書です。現金同等物とは、容易に換金可能であり、価値変動において僅少なリスクしか負わない短期投資のことをいいます。企業会計は発生主義をベースとしているため、損益計算書における損益の計上時期と現金の取引時期は大きく異なります。キャッシュ・フロー計算書は、企業がその期にどのように資金調達し使用したのかを直接的に明らかにできるのです。
このように有用なキャッシュ・フロー計算書ですが、法令で作成が義務付けられているのは、上場企業をはじめ証券取引法のディスクロージャー制度(企業内容の開示)の対象となる大規模法人のみです。
キャッシュ・フロー計算書の作り方
キャッシュ・フロー計算書には2つの作成方法があります。
直接法
資金の流入と流出を直接足し引きして、キャッシュ・フローを表示する方法です。作成が非常に面倒なのですが、IFRS(国際会計基準)では直接法による作成が推奨されています。
間接法
損益計算書の当期純利益を出発点とし、そこにキャッシュ・フローに関連する調整をすることで誘導的にキャッシュ・フローを表示する方法です。日本の全上場企業の9割以上が間接法を採用しています。
実務上、多く利用されている間接法によるキャッシュ・フロー計算書は以下のようになっています。
科目 | 金額 | 備考 |
税引前当期純利益 | ××× | |
減価償却費 | ××× | A |
受取利息及び配当金 | ××× | B |
支払利息 | ××× | B |
売上債権の増加額 | ××× | C |
棚卸資産の減少額 | ××× | C |
仕入れ債務の減少額 | ××× | C |
… | ××× | |
小計 | ××× | |
利息及び配当金の受取額 | ××× | B |
利息の支払額 | ××× | B |
法人税等の支払額 | ××× | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | ××× | |
有形固定資産取得による支払 | ××× | D |
投資有価証券の取得による支払 | ××× | D |
貸付金の回収による支払 | ××× | D |
… | ××× | |
投資活動によるキャッシュ・フロー | ××× | |
長期借入による収入 | ××× | D |
社債の発行による収入 | ××× | D |
配当金の支払額 | ××× | D |
… | ××× | |
財務活動によるキャッシュ・フロー | ××× | |
現金及び現金同等物の増減額 | ××× | |
現金及び現金同等物の期首残高 | ××× | |
現金及び現金同等物の期末残高 | ××× |
Aの減価償却費は損益計算書上費用となっていますが、現金支出がありません。Bの受取利息や支払利息も発生ベースで経過勘定を用いて計上しています。Cの売上債権、棚卸資産、仕入債務も計上と現金の入出金のタイミングにラグが生じます。よって、A、B、Cについては現金の入出金に合わせて、調整します。Dについては、実際の現金支出額を記入します。以上の通り、間接法によれば、利益に非資金収支である減価償却費や貸借対照表の増減などを加味するだけで、キャッシュ・フロー計算書を作成することができます。
中小企業でもキャッシュ・フロー計算書を経営に生かせ、経営状況ひもとき方法
キャッシュ・フロー計算書を作成しても、経営に生かせなければ意味がありません。各キャッシュ・フローの特徴と経営分析の事例をお話しします。
営業活動によるキャッシュ・フロー
本業によるキャッシュ・フローを表す数値ですので、経営の健全度を表す指標となります。プラスになっている事業者は、本業からキャッシュを獲得できていることを意味します。営業活動によるキャッシュ・フローの水準が高いほど、強い競争力をもっている会社であることが予測されます。一方、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスである場合、企業は本業からキャッシュを獲得できておらず、問題を抱えている可能性があります。ただし、創業初期で研究開発が必要な場合や、急速に事業が拡大し売掛金の期ずれが生じている場合は、健全性に問題がなくても一時的にマイナスになることもあるので、同業他社比較など、各事業者の実態を分析しましょう。
投資活動によるキャッシュ・フロー
固定資産や投資有価証券のような投資に関連する購入や売却により発生したキャッシュ・フローで、営業活動によるキャッシュ・フローを稼ぐ前提として、何にどれくらい投資しているのかが分かる数値です。投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスになることが多く、多額なマイナス額を計上している場合は、将来に向け大きな投資を行う経営意思決定を行い攻めの経営戦略をとったことを意味します。この場合、資金調達の必要性が高まるため、手元資金で投資額を賄えない場合、次に記載する財務活動によるキャッシュ・フローに記載される借入金の増加や株式の発行による収入等に記載されることになります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
金融機関からの資金調達・返済及び株式発行による資金調達や配当金の支払、社債発行による資金調達・償還など、財務状況を示すキャッシュ・フローであり、キャッシュの過不足の状況や資金調達方法や財務戦略を大まかに把握することができます。
財務活動のキャッシュ・フローのプラス・マイナスを見ることにより、営業活動によるキャッシュ・フローが投資活動によるキャッシュ・フローを超えて稼いでいるかを把握できます。財務活動によるキャッシュ・フローがプラスの時は、調達が多いことを示しており、必要な資金が不足していることがわかります。マイナスの場合は、営業活動で十分なキャッシュを稼いでおり、さらに有利子負債の圧縮等の施策を行っていると考えられます。
まとめ
キャッシュ・フロー計算書を作成するだけで、貸借対照表と損益計算書だけではわからない分析ができますので、作成することを検討するのも一考かと思います。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。