キャッシュ・フロー計算書の無料エクセルテンプレート|作り方も解説

キャッシュ・フロー計算書とは、現預金の動きを表示した財務諸表を指します。構成する要素は、営業CF・投資CF・財務CFの3つです。

本記事では、キャッシュ・フロー計算書を作成するメリットや、手軽に作成するための無料エクセルテンプレートを紹介します。

キャッシュ・フロー計算書の無料エクセルテンプレート

企業は、キャッシュ・フロー計算書を作成することで、資金繰りの悪化を未然に防ぎ、社外から信頼を得ることができます。そこで、初めての方でも簡単に作成できるエクセル形式の無料テンプレートをご用意しました。このテンプレートを使用すれば、複雑な計算にかかる手間も省けます。

自社の現預金の動きを正しく把握したい場合などに、ぜひテンプレートをご活用ください。

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キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書(C/F)とは、現預金の動きを表示した書類のことです。貸借対照表・損益計算書と並び財務諸表のひとつとして位置づけられています。

キャッシュ・フロー計算書の特徴は、過去に発生した資金の流れを可視化している点です。そのため、将来手元に残る資金を予測する際に作成する資金繰り表とは異なります。

キャッシュ・フロー計算書の作成が義務づけられているのは上場企業ですが、資金の流れを把握して健全な経営をするために、非上場企業も作成するに越したことはありません。

キャッシュ・フロー計算書を作成するメリット

キャッシュ・フロー計算書を作成する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 資金繰りの悪化を防げる
  • 金融機関や投資家からの信頼を得られる

それぞれ解説します。

資金繰りの悪化を防げる

資金繰りの悪化を未然に防げることは、キャッシュ・フロー計算書を作成する大きなメリットのひとつです。

業績が好調で帳簿上は利益が出ていても、手元資金が不足すれば、支払いが滞り黒字倒産に陥る可能性があります。黒字倒産を回避するためには、自社の入出金状況をこまめに把握してキャッシュ・フローがプラスになるような経営を目指さなければなりません。

キャッシュ・フローの「プラス」とは現金が会社に流入することで、「マイナス」とは現金が会社から流出することです。キャッシュ・フロー計算書を作成して、自社のキャッシュの流れ(現金がどこから来てどこへ行っているのか)を把握することで、資金不足への意識が高まり、安定した経営につながります。

金融機関や投資家からの信頼を得られる

金融機関や投資家からの信頼を得られることも、キャッシュ・フロー計算書を作成するメリットのひとつです。キャッシュ・フロー計算書を毎期作成し、自社のキャッシュ・フローが良好である旨を示すことにより、銀行から「返済不能に陥るリスクは低い」と判断され、融資を受けやすくなる可能性があります。

また、自社でも経営の健全性を判断するための資料として、キャッシュ・フロー計算書が役に立つでしょう。

キャッシュ・フロー計算書の記載項目

キャッシュ・フロー計算書の「タイトル(キャッシュ・フロー計算書)」や「対象期間(自YYYY年MM月DD日~至YYYY年MM月DD日)」の下に、以下の内容を記載します。

  • 営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)
  • 投資活動によるキャッシュ・フロー(投資CF)
  • 財務活動によるキャッシュ・フロー(財務CF)

「財務活動によるキャッシュ・フロー」の下には、営業CF・投資CF・財務CFを合計した「現金及び現金同等物の増減額」の記載が必要です。また、「現金及び現金同等物の期首残高」や、「現金及び現金同等物の期首残高」に「現金及び現金同等物の増減額」を加えた「現金及び現金同等物の期末残高」も記載します。

ここから、3つのキャッシュ・フローに記載する項目を確認していきましょう。

営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)

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営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)とは、企業の主な営業活動(本業)による現金の増減を示したものです。キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローには、以下のような項目を入れます。

  • 税引前当期純利益
  • 減価償却費
  • 引当金の増減額
  • 受取利息・受取配当金
  • 支払利息
  • 受取手形の増減額
  • 売掛金の増減額
  • 棚卸資産の増減額
  • その他流動資産の増減額
  • 支払手形の増減額
  • 買掛金の増減額
  • 未払金の増減額
  • 利息及び配当金の受取額
  • 利息の支払額
  • 法人税等の支払額

項目によって、税引前当期純利益から加算する場合と減算する場合があるため注意しましょう。たとえば、減価償却費は損益計算書で費用として計上されている項目ですが、実際に現金の流出は伴わないため、キャッシュ・フロー計算書では税引前当期純利益に加算されます。

投資活動によるキャッシュ・フロー(投資CF)

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投資活動によるキャッシュ・フロー(投資CF)とは、投資でどれくらい資金を投入したのか、あるいは現金を得たのかを示したものです。キャッシュ・フロー計算書の投資活動によるキャッシュ・フローには、以下のような項目を入れます。

  • 有形固定資産の取得による支出
  • 有形固定資産の売却による収入
  • 投資有価証券の取得による支出
  • 投資有価証券の売却による収入
  • 関係会社株式の取得による支出
  • 貸付金の増減額
  • 無形固定資産の取得による支出
  • 無形固定資産の売却による収入
  • 繰延資産の増減額
  • その他投資の増減額

たとえば、工場を建てるために新たに土地を取得した場合は現金が流出するため「有形固定資産の取得による支出」で減算するのに対し、土地を売却した場合は現金が入ってくるため「有形固定資産の売却による収入」で加算します。

なお、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の下には、営業CFと投資CFの額を合計したフリー・キャッシュ・フローの記載も必要です。フリー・キャッシュ・フローとは、企業が自由に使える現金の量を指します。

財務活動によるキャッシュ・フロー(財務CF)

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財務活動によるキャッシュ・フロー(財務CF)とは、借入や出資でどれくらい資金を調達したのか、返済などでどれだけ資金が減少したのかなどを示したものです。キャッシュ・フロー計算書の財務活動によるキャッシュ・フローには、以下のような項目を入れます。

  • 短期借入金の増減額
  • 長期借入金の増減額
  • 社債の増減額
  • 増資による収入
  • 自己株式の取得・処分
  • 配当金の支払

たとえば、銀行から融資(借入期間1年以上)を受ける場合は現金が増えるため「長期借入金の増減額」で加算するのに対し、返済した場合は現金が減るため「長期借入金の増減額」で減算します。

キャッシュ・フロー計算書の作成方法

キャッシュ・フロー計算書を作成する際の大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 総勘定元帳を作成する
  2. 貸借対照表・損益計算書を作成する
  3. 該当するキャッシュ・フローの種類ごとに項目を分類したうえで、キャッシュ・フロー計算書にまとめる

キャッシュ・フロー計算書のうち、営業活動によるキャッシュ・フローに関する部分は、直接法と間接法でやり方が異なる点に注意が必要です。それぞれの特徴を解説します。

直接法とは

直接法とは、現金の収入や支出を記録して、キャッシュ・フローを直接計算する方法です。現金売上・現金仕入や売掛金・買掛金の回収、人件費の支出などを個別に集計していきます。

直接法を用いれば、本業による直接的な収入や支出を明らかにできる点がメリットです。一方で、作業に手間がかかることがデメリットとして挙げられます。

間接法とは

間接法とは、営業活動によるキャッシュ・フローの部分で、税引前当期純利益を基準にして各項目を増減する方法です。実務上、直接法で作成することは困難な場合が多いため、ほとんどの会社で採用されています。

間接法を用いるメリットは、比較的簡単に計算できる点です。一方で、取引を細かく記録しない分、具体的な資金の流れが読み取りにくい点がデメリットとして挙げられます。

なお、本記事で紹介しているエクセルのテンプレートは、間接法を用いたキャッシュ・フロー計算書です。

間接法で営業CFを計算する流れ

間接法を使って、キャッシュフロー計算書の営業CFを計算する流れは、以下のとおりです。

  1. 税引前当期純利益を入力する
  2. 現金の増加や減少を伴わない部分を調整する
  3. 本業以外の損益などに関する部分を調整する
  4. 営業活動に関するキャッシュの増減を調整する

各手順の詳細を解説します。

1. 税引前当期純利益を入力する

間接法を用いて営業活動によるキャッシュ・フローを計算する際は、まず損益計算書から「税引前当期純利益」に該当する箇所を探します。見つけたら、数字をそのままキャッシュ・フロー計算書の「税引前当期純利益」に転記しましょう。

たとえば、税引前当期純利益が2,300万円であれば、「23」と入力します(単位が百万円のケース)。

2. 現金の増加や減少を伴わない部分を調整する

税引前当期純利益を入力したら、非資金損益項目を調整します。非資金損益項目とは、減価償却費や貸倒引当金のように、損益計算書で計上されていても実際は現金の流出・流入を伴わない項目のことです。

たとえば、減価償却費が800万円で貸倒引当金の増加額が200万円であれば、「減価償却費」に「8」、「引当金の増減」に「2」と入力します。

3. 本業以外の損益などに関する部分を調整する

営業外収益や営業外費用のように、本業以外の損益部分を一度調整します。営業外収益の具体例は受取配当金、営業外費用の具体例は支払利息などです。

たとえば、受取配当金が100万円、支払利息が200万円の場合は、「受取利息・受取配当金」に「△1」、「支払利息」に「2」と入力しましょう。ただし、「小計」の後の「利息及び配当金の受取額」や「利息の支払額」で反対の符号の数字を入力するため、入力した数字が営業キャッシュ・フロー自体には影響を与えない可能性があります。

4. 営業活動に関するキャッシュの増減を調整する

売上や仕入には売掛金や買掛金のように現金以外の金額も含まれているため、調整します。調整する項目は、受取手形・売掛金・支払手形・買掛金などです。

たとえば、売掛金が2,500万円増加して買掛金が1,800万円増加している場合は、「売掛金の増減」に「△25」、「買掛金の増減」に「18」と入力します。ここまで入力した項目を合計した値が、間接法を用いた場合の営業活動におけるキャッシュ・フローの額です。

まとめ

キャッシュ・フロー計算書とは、財務諸表の一種で現預金の動きを明らかにするための書類です。本記事で紹介した無料エクセルテンプレートを活用し、キャッシュ・フロー計算書を作成することで、資金繰りの悪化を未然に防げます。

キャッシュ・フロー計算書を構成するのは、営業CF・投資CF・財務CFの3つです。いずれも、構成する項目によって加算する場合と減算する場合があるため、間違わないよう注意しましょう。

その他のテンプレート

監修 安田亮

Author Yasuda

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。 大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。 連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。