ムダに税金を払っていませんか?印紙税の要・不要を見極めて賢く節税!

ムダに税金を払っていませんか?印紙税の要・不要を見極めて賢く節税!

節税は何も法人税だけではありません。
印紙税も税金です。
無駄な印紙税を貼らないようにすることも、節税の一つです。

印紙税とは

印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成する契約書や領収書等に課税される税金です。

印紙を貼る必要のある書類を「課税文書」といいます。
「課税文書」に該当するものは、国税庁が「印紙税額一覧表」に列挙している20種類です。
「課税文書」の判断は文書の名称でするのではなく、内容から判断します。
たとえば「請負契約」と書かれていても実質的な契約内容が「委任契約」であるならば、印紙を貼る必要はありません。

また20種類に該当する文書でも非課税文書である場合、印紙を貼る必要はありません。
非課税文書に該当する文書については、国税庁のサイトで確認ください。

国税庁HP:第9節 非課税文書

印紙を貼らなかった場合のペナルティ

印紙は貼る必要がないものに貼っても罰則はありませんが、貼らなければならないものに貼っていない場合、過怠税が課されます。
過怠税は本来貼るべき印紙税額とその2倍に相当する金額の罰金がかかります。
要は約3倍の費用が発生するわけです。

国税庁HP:印紙を貼り付けなかった場合の過怠税

加えて通常の印紙代は費用として損金算入できますが、過怠税は損金不算入ですので税金の面でも損をします。

このように貼らなかった時のペナルティが大きいため、判断が難しい場合に、貼っておこうかなと判断してしまうケースもあると思います。

今回は、間違いやすいケースと、貼る必要がないものに貼ってしまった際の対処方法を見て行きましょう。

「請負契約」と「委任契約」の違い

印紙を貼るかどうか迷うケースに「請負契約」なのか「委任契約」なのかというのがあります。
上記の例で、「委任契約」の場合印紙を貼らなくてもいいと書きました。
「請負契約」の場合は印紙が必要で、「委任契約」の場合は印紙不要です。
違いを理解するために、それぞれの言葉の定義をはっきりさせておく必要があります。

民法では「請負」と「委任」は以下のように書かれています。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

「請負」632条

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

ちなみに法律行為でない事務の委託といった行為は「準委任」といいます。

「委任」643条

出典:民法(明治二十九年法律第八十九号)

簡単に説明すると「請負」は仕事の『完成』に対して報酬が支払われ、「委任」は仕事の『行為』に対して報酬が支払われるということです。

国税庁のサイトで「請負の意義」というページがあり、以下の一文が書かれています。
請負とは仕事の完成と報酬の支払とが対価関係にあることが必要ですから、仕事の完成の有無にかかわらず報酬が支払われるものは請負契約にはならないものが多く、また、報酬が全く支払われないようなものは請負には該当しません(おおむね委任に該当します。)。

国税庁HP:請負の意義

契約内容が委任契約であるにも関わらず、請負契約と判断して印紙を貼っていたものがあったら、再度確認してみることをおすすめします。

還付について

印紙税を必要ない文書に印紙を貼って納付したり、必要以上の印紙税を貼って納付した場合、還付を受けることができます。

還付の方法は、『印紙税過誤納確認申請書※1』に必要事項を記載し、過誤納となっている文書と合わせて、その印紙税の納税地の所轄税務署長に提出します。

還付申請可能の期間は、文書を作成し、印紙を貼り付けた日から5年以内と期限があるので注意しましょう。

国税庁では以下のケースを具体例として紹介しています。

1:請負契約書や領収書などの印紙税の課税文書に貼り付けた収入印紙が過大となっているもの
2:委任契約書などの印紙税の課税文書に該当しない文書を印紙税の課税文書と誤認して収入印紙を貼り付けてしまったもの
3:印紙税の課税文書の用紙に収入印紙を貼り付けたものの、使用する見込みのなくなったもの

国税庁HP:誤って納付した印紙税の還付

※1『印紙税過誤納確認申請書』は印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続の記事中のリンクから取得できます。

電子的契約の取り交わしで印紙を節約

印紙を貼らなければならない文書に注文請書があります。
これは発注者の注文書に対して、注文を請けるという契約承諾の文書です。
一般的には紙の文書で取り交わしますが、電子メールなどを通じて取り交わすことも認められています。
電子メールを利用して取り交わした場合、印紙税はかかりません。

印紙税法の第2条に『~文書に(省略)印紙税を課する』と書かれています。
この文書とは紙の文書をさしており、電子文書は課税文書にあたらないというのが印紙が必要でないという根拠になっています。
ここで押さえておきたいのが、どのタイミングで課税文書となるかということです。

紙で請書を作成した時に課税文書となるのではなく、相手に対して請書を提出(行使)することで課税文書となります。
電子メールを利用して相手に対して注文を請けるという承諾を行った場合、紙の文書を行使したことにはならないので、課税が発生しないというわけです。

印刷した場合も、あくまで原本は送信した電子データであり、印刷したものはその複製物にあたり課税文書にはなりません。
ただ、後日原本を相手に交付した場合、課税文書となります。

参考:請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について

近年、電子契約というPDF等の電子文書に電子署名とタイムスタンプを付与して取り交わす契約が注目を浴びています。
WEB上で取り交わすため、即時性のメリットが一つ。
加えて電子契約の場合、印紙が必要ないというメリットがあるためです。

では、電子メールを利用して契約を交わした場合、電子署名が必要となるかという疑問が生じます。
しかし、印紙税法では電子署名を付与しなさいとはしておらず、あくまで課税文書を行使した場合には、印紙を貼りなさいというもので、電子署名の有無は関係ありません。

契約は双方合意のもとに成立するものです。

電子署名等を付与するのは、契約成立後の電子文書の改ざんを防ぐためのものであり、非常に重要です。
業界各社が提供している電子契約のサービスは、企業間取引を電子契約サーバーを通して電子署名等を行うことで、双方の合意を担保しています。
印紙税がかからなくなるのはもちろんのこと、漏れや抜けをなくすことができますので、業務の効率化やコンプライアンスの強化にもなります。

どのような方法で行うにしても相手がいることですので、ハードルは高いといえますが、試してみる価値はある運用方法です。

まとめ

印紙税を貼るべき文書なのか判断に迷った時は、最寄りの税務署へ問い合わせすることをおすすめします。
私も契約書等で判断に迷った場合は、聞くようにしています。
とっても丁寧に対応してくれます。

国税庁HP:税についての相談窓口

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 谷澤 佳彦

谷澤佳彦様(トリミング&圧縮)

1993年に税理士資格を取得し、「谷澤佳彦税理士事務所」を開設。近年は相続・事業承継に対する税務相談を数多く対応する。司法書士や不動産鑑定士など他の専門家とタッグを組み、組織として企業の繁栄・事業承継をサポートすることも得意とする。AFP(Affiliated Financial Planner) 資格を 2002 年に取得、 2 級 FP 技能士資格を2003 年に取得。

谷澤佳彦税理士事務所