「身の丈IT」とは? 中小企業が抱えるIT活用の課題と成功事例

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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

今やITは企業活動にとって重要な存在となりました。エクセルやワードでの書類作成、ホームページやSNSの活用、会計ソフトの利用、ネットバンキングによる振り込みなどさまざまな業務でITが使われています。しかし、未だにITの活用をしていない中小の事業者も少なくありません。
中小企業庁が公表した2019年版中小企業白書によると、100~299人規模の中小企業の約54%がITを利用する意向がないと書かれています。さらに東京商工会議所が実施した中小企業の経営課題に関するアンケート結果によると、100人以下の中小企業のうち4割程がITを利用していません。
中小企業におけるIT導入の課題は、コスト、目的・効果、ITスキル・人材、ツール、取引先などにあるとされますが、そもそも経営者層のITへの理解が低く、身近な使えるツールとして捉えていない、どう使えるかわからない、といったことが最大の障害となっています。

このような中小企業の現状を受けて、経済産業省や中小企業庁は、中小企業のIT化、ITツール活用の遅れを解消すべく「中小企業の身の丈に応じたITツール(以下、身の丈IT)の普及促進」のためのさまざまな支援策を準備しています。
中小企業のIT活用を支援する「身の丈IT」はどのようなものなのか、またなぜ中小企業がITを活用することが重要なのかなどについて事例を交えて解説していきます。

参照:中小企業庁「2019年版中所企業白書 p.292」
参照:東京商工会議所中小企業委員会「中小企業の経営課題に関するアンケート 調査結果p.13」

身の丈ITとは ~IT活用の落し穴~

IT人材が豊富とは言えない中小企業においては、自社に最適なITツールを選択し、使いこなすことはハードルが高いと言わざるを得ません。そのため自社のビジョンや経営戦略に沿ったIT戦略の立案、また高度なIT活用を行うことは困難でしょう。
実際「高価なシステムを入れたものの、結局、集計と帳票の印刷程度しか使っていない」「組織の活性化のために有名なグループウェアを導入したがまったく効果が出ない」「集客のためにホームページを作ったがインターネットからの予約はほとんどなく維持費だけがかさむ」などはよく聞く話です。
これらは解決したい課題が明確でないために「アレもコレも」と欲張ったシステムを導入したり、よくわからないので、営業社員に言われるままに契約したりしたことなどが原因です。つまり、導入すること自体が目的となってしまい、本来解決すべき課題が置き去りになっていることに起因していると言えるでしょう。課題が明確でなければ的外れなIT活用になり、結果的に導入しても無駄になってしまいます。

ITは手段であって万能薬ではありません。身の丈にあったシステムでなければ活用しきれないだけでなく、コスト面でも導入にかかる労力の面でも無駄な投資になってしまいます。重要なのはあくまでも自社の経営戦略に基づいてビジョンや目標実現のための手段としてITを使いこなすことです。「身の丈IT」の「身の丈にあった」というキーワードの重要性はそこにあるのです。

中小企業にとってのIT活用の意義と必要性

中小企業にとって、IT導入の最大の課題はコスト負担です。一方で人的リソースが不足しがちな中小企業において、IT活用による効率化や生産性の向上は、リソース不足解消の有効な手段と言え、経営戦略上の重要なポイントとなります。また、アナログな業務の場合業務が俗人化しやすいですが、IT導入をすることで業務を型に落とすことができるため、業務の引継ぎなどが簡易になり、人的リソースの配分が柔軟にできるようになります。コスト負担以上にメリットが大きければ、IT化を検討しないという選択肢はないでしょう。

また、結果を出すIT化の手始めは、効果が目に見えるところから始めるべきです。
たとえば、交通費や経費の精算業務などは全社員が関わっており、効率化の効果が見えやすいでしょう。手作業により紙やエクセル管理で行う企業が多いようですが、それでは、経路や金額の申請・承認、その後の経理のチェックや仕訳、振込手続きまでをすべて手作業で行うことになります。精算業務をIT化すれば、経路を入力するだけで交通費が自動計算される他、仕訳作業や振込データ作成も自動化できます。IT化で一元管理できるようになれば、作業時間や手間を省くことができる上、ペーパーレス化によるコスト削減にもつながるでしょう。

経費精算のIT化に関して言えば、月額契約のクラウドサービスなどもあるので、小額から始められるというメリットもあります。こうした小額で始められるクラウドサービスは近年増えており、複数の選択肢から自社の事情にあったところを選択できることでしょう。

身近なIT活用事例

今やITは生活に欠かせない重要なインフラを支えており、身近なところでは、自動運転システムやETCカード、交通機関の交通系ICカード(SuicaやICOCAなど)、ドローンによる農薬散布などのスマート農業、医療における遠隔診療、コロナ禍で注目されたZoomなどのWeb会議サービスを活用した会議や、セミナー、商談など多くのIT活用事例があります。ここでは、中小企業がITを活用し成果を挙げている事例をご紹介します。

1. 株式会社ドミノ・ピザ ジャパン

配達車両のメンテナンス管理業務において、直営店・外部業者との情報共有で、大幅な業務改善に成功。1日3時間の入力作業がなくなり、10分の確認作業だけで済むように業務負担が軽減し、新たな業務にあてられるようになりました。

参考:楽楽販売 直営店・外部業者との情報共有で、大幅に業務改善

2.株式会社ナレッジワイヤ

クラウドでの「販売管理」「労務管理」「勤怠管理」を実施しました。
請求処理が担当者別に分散することで業務がスムーズになり、場所を問わず同期が取れるようになったことでタイムリーな対応が可能に。また、労務管理のミスがなくなり、手作業で行っていた添付ファイルの暗号化業務も不要になりました。

参考:中小企業庁 ここからアプリ クラウド型のITツールの導入で、勤怠管理、労務管理などの社内情報の共有化を実現

3.日進工業株式会社

iPhoneで進捗報告をして、工場内にSiriの音声が響くようにし、設備稼働率100%を目指すためにIoT導入をしました。費用10万円ほどの身の丈IoTの活用で、従業員のモチベーションや設備稼働率が93%以上へと向上しました。

参考:アスキー “身の丈”IoT現場レポ:iPhoneで進捗報告、 工場内にSiriの音声が響く! ~日進工業 編~
※動画のため音声が流れます。

4.両国屋豆腐店

紙伝票の事務作業をクラウドで自動化し、1日2時間の経理事務を30分に(年間で600時間削減)短縮しました。営業強化とキャッシュレス対応で新規顧客も獲得しています。

参考:アスキー 100年つづく経営を目指す、中小企業の挑戦~クラウドで克服する人手不足~(両国豆腐店)
※動画のため音声が流れます。

5.ベジアーツ

多拠点に散らばる農場のレタスの生育データの把握が課題でした。そこで、スマホでいつでもどこでもデータを集約して収穫時期を把握・決定することで、レタスを収穫する人員を効率的に配置することができました。

参考:アスキー 100年つづく経営を目指す、中小企業の挑戦~クラウドで克服する人手不足~(株式会社ベジアーツ)
※動画のため音声が流れます。

IT導入は手段であって目的ではありません。IT導入の目的は経営戦略上の課題解決です。だからこそ経営戦略と結びついたIT戦略を作る必要があり、それは実現可能なものでなければいけません。その意味でも「身の丈」にあったシステム導入が重要なのです。

行動につながるIT戦略の立案

ITを導入する上で最も重要なことは課題を明確にすることです。経営戦略が明確であれば、解決すべき課題も明らかになるでしょう。そこから実現可能なIT戦略を作っていくことが重要です。「現実可能」の基準は、個々の課題解決に向けて行動可能なものであるかどうかが判断基準となります。

身の丈ITには経営者のITリテラシー向上が重要

ITシステムについて調べてみると、高額なシステムを使わなくても、安価で簡単に使えるクラウドサービスがたくさんあります。月額で利用できるクラウド型のサービスであれば導入への敷居も低く、中小企業のIT戦略構築に大いに役立つはずです。
あわせて、経営者自らが勉強してITの「使い方」を学ぶことが必要です。組織としての行動につなげるためには、経営者がリーダーシップを持ち、経営ビジョンを明確にし、先頭に立って経営改革を進める姿勢が欠かせません。また、組織全体で「あるべき姿となるゴールを描き、それを全員で共有する」ということができているかどうかが、行動につながるIT戦略構築の重要なカギとなります。

まとめ

2020年7月にまとめられた中小企業庁「中小企業のデジタル化に向けて」には以下のような記載があります。

「生産性の高い中小企業は、IT投資や設備投資等に積極的で、一人あたりの賃金が高い傾向にある」

引用:中小企業庁「中小企業のデジタル化に向けて」

ITの活用は企業として競争力を高める上で非常に有効であることは疑う余地がありません。まずは中小企業経営者自身が、身の丈ITという言葉を理解し、ITを経営に活用することの重要性を認識するところから始めるのがいいでしょう。身の丈ITを理解し進める中で、自社の経営戦略に関わる重要なピースに気づく可能性もあると思います。実際、IT化を進める中で、将来の事業展開のヒントや経営戦略上の新たな武器を見出した企業も少なくないのです。自社の成長と飛躍のためには「身の丈IT」に取り組まないという選択肢はないでしょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

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※:デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

著 者 佐藤 義規

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Fortuneトップ100に入る米欧4社でのマネジメント経験と、IT ベンチャーでの起業経験を活かし、ビジネスコンサルタントとして活躍。国内外の事業家支援や企業向けコンサル、起業家や経営者向けセミナーなどを数多く実施。専門は、業績改善や業績アップ。また、心理カウンセラーの認定を持ち、経営幹部のメンタルサポートや社員のマインド改善セミナーなども行っている。