人員変動に対応した経営を行うにはどうすれば良いか?

日頃の企業経営において人材不足、人材教育など人材に関する課題は尽きないと思います。人員の異動が発生することで、引継ぎや業務分担などを行う必要があり、通常業務に遅れが生じることがあります。特に経理部門の場合、経営に直結する数値を扱う部署のため、業務の遅れは経営判断の遅れにつながることにもなりかねません。そこで今回は人員変動が起きた時においてどのように考え、対応すべきなのかについてポイントをご紹介します。

中小企業は常に人材不足の問題を抱えている

中小企業の人材確保の状況について、中小企業庁の「2020年度版中小企業白書」において従業員300人以上の企業における大卒予定者の求人倍率は2020年卒業予定者で0.9倍となっています。一方、従業員299人以下の企業における大卒予定者の求人倍率は8.6倍となっており、大企業との差が大きくなっています。また、過去10年においても従業員300人以上の企業は1.0倍前後であるのに対し従業員299人以下の企業は常に1.0倍を大きく上回り、最低でも3.3倍、最高で9.9倍となっています。このデータから、中小企業の人材不足が常態化していることが分かるでしょう。

参考:中小企業庁 2020年版「中小企業白書」第1章

人材不足の状態が続くことによる問題

人材不足が常態化するとどのような問題が発生するでしょうか。様々な問題が発生しますが、代表的な問題を見ていきましょう。

  • 社員への業務負荷増大によるパフォーマンスの低下
  • 労働環境悪化による離職者の増加
  • 経営目標未達、業績悪化
  • 新規事業を実施できないことによる機会損失

上記の問題が続いてしまうと、さらに離職が増え、さらに人材が不足し、と負のスパイラルに陥ってしまいます。

また、特に経理で人材不足が起きた場合の具体例を挙げると、日常業務においては特に支払業務の遅延と支払遅延に伴う取引条件等への影響、月次・中間・期末決算においては決算確定遅延により経営判断が遅れ、その後の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、申告納税遅延、利害関係者への業績報告遅延にもつながってしまいます。

場合によっては周囲の信頼を大きく損なう問題につながりかねないのが経理の人材不足なのです。

人材不足の問題を解決するには

慢性的な人材不足や人員の変動などによる人材不足に対応し、労働環境を改善していくためにはどのような対策をすればよいのでしょうか。様々な角度から見てみたいと思います。

人材採用(定期採用、中途採用)・・・正社員、契約社員、準社員など

慢性的な人材不足を解決する方法の一つとして正社員や契約社員など長期に渡って安定して経営に貢献していただける人材確保が考えられます。雇用できれば人材不足解消に大きな改善が期待できますが、前述の大学新卒予定者求人倍率が高水準であることから、求める人材確保や求める人数の雇用ができる可能性は低いため、労働条件や労働環境の整備を行いつつ時間をかけて中途社員や契約社員等含めじっくりと採用活動を行った方が良いと考えます。中途社員や契約社員を採用する際は経理業務経験者で、かつ、不足する業務担当(例えば支払業務経験者、会計システムに詳しい人材、経理業務全体が分かる方など)に応じて募集を行うことが人材不足解消につながります。

派遣社員による対応(一時的な対応、社員採用までの間)

長期間雇用できる安定した人材を確保することで慢性的な人材不足を解消したいという希望は持ちつつも、目前の人材不足に早く対応しなければなりません。このような時に社員等が採用できるまでの一時的な対応策として、派遣社員による対応が考えられます。企業に必要なスキルを持った人材、即稼働できる人材をすぐに確保できるという点ではメリットがあるでしょう。派遣社員による対応も派遣会社との事前打ち合わせにおいて必要な経理業務スキルを具体的に伝えておくことが重要です。

人員の異動、再配置

社員や派遣社員のように外部から人材を確保しないで人材不足に対応する方法としては社内の人材を異動、再配置することによる方法が考えられます。人材が常に不足している、急に不足する事態となった時には、必ず一度社内全体の人員配置についても確認を行いましょう。これには日頃から社員との面談やスキルシートなどを活用して社員について情報を収集しておくことが重要です。急きょ経理業務担当を社内から登用するには簿記や経営についての知識がある社員がいれば即人材不足解消へとつながりますが、そうでなければ教育稼働が発生することも考慮しなければなりません。

業務改善による業務量圧縮

人を増やす以外の方法によって人員不足に対応するには、業務手法変更による業務量圧縮やITツールを活用した生産性向上による業務量、業務時間圧縮が考えられます。システムが稼働し始めれば安定して業務改善できますが、退職・人事異動による急な人員不足、外部環境変化に伴う組織改編など大きな変化があった時にすぐにシステム導入をするといった対応するには難しく、効果が出るには時間がかかるという点においては課題があります。そのため、業務改善等については定期的に見直しがされ、先を見て改善を行えるような仕組み作りが必要であると考えます。

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経営者が事業を継続させるためにやらなければならないこと

経営者は、どのような経営状態でも事業を継続しなければならないため、人材不足については主体的に対応しなければなりません。

人材を大量に採用できれば解消するかもしれませんが、小規模企業はそう簡単には実現できませんし、業務効率化や生産性向上という点から見てもマンパワーだけで解消できるというものではありません。

このような人材不足に陥らないようにするためには、以下のような業務について根本的な改善が必要と考えます。

  • 社内の各種業務についてシステム化するなど、誰でもできるようにする仕組み作り
  • 定期な業務ローテーションによる多業務対応人材の育成

業務の俗人化を解消するために、業務の定型化やマニュアル化をしたり、システム導入により効率化をするなど、担当者が変わっても業務が回る仕組みを作ることが必要です。また、定期的な人事異動や部署内での業務のローテーションなどを行い、1つの業務を複数人ができる状態にすることも重要です。これにより、急な人事異動が起きたときでも対応することができるようになります。例えば、業務ローテーションでは「売掛金担当⇒買掛金担当⇒預金管理担当」というように経理部内での業務担当を定期的に代えることで多業務を行える人材が複数育成できます。また、一つの業務についてメインとサブの担当を決める方法で長期休暇や急な人事異動にも対応することができます。

業務ひっ迫や、人材不足にどのように対応すれば良いか

業務過剰を原因とする業務ひっ迫や人材不足を原因とする業務ひっ迫にどのように対応すればよいのでしょうか。事前に準備する余裕がある場合と緊急性を伴う場合とで対応方法が違ってきますが、取れる策を以下でまとめます。

業務の定型化、マニュアル化を行う

業務過剰や人材不足により一時的もしくは長期的に、ある部署の人材が不足する場合、業務の定型化や業務手順をマニュアル化しておくと、他部署から急に異動してきたような人材でもある程度対応することができます。ただし、この業務定型化や業務手順のマニュアル化を行うには数カ月単位で準備の時間が必要となり、業務ひっ迫や人材不足の状態が生じてから行うことは難しいため、緊急事態でない平時において事前に準備することが重要です。

一時的な業務ひっ迫に対応するために外部人材等を活用

業務ひっ迫や人材不足が一時的な場合、その業務内容に応じて派遣社員や顧問等の専門家を活用することによって対応するという方法も考えられます。

具体的活用方法の一例として以下の内容が考えられます。

  • 少し教育すれば誰でもできる日常業務を派遣社員で一時的に補う
  • 組織・部門責任者などの重要なポジションについて経験豊富な外部顧問等で補う
  • 業務改善プロジェクト等で一定期間業務過多となる時の人員不足を業務の内容に応じて派遣社員もしくは顧問等で補う

システムを導入・活用して業務の均一化を行う

業務過剰や人材不足に対応する方法としてシステムを導入・活用することにより業務負荷軽減を行う方法が考えられます。システム導入については仕様、導入スケジュールなど稼働するまでにある程度の時間は必要となりますが、稼働を開始すれば定期的なメンテナンスのみで単純作業をシステムに任せられるため業務が均一化され、社員はさらに高度な業務を行うことができます。

まとめ

企業経営における人材不足は現在、未来の経営に大きな影響をもたらします。また、これは現在働いている社員の労働環境悪化にもつながります。これらの課題に対応するには、常に人員も含めた経営状態の把握を行うことはもちろんのこと、事前に人員不足になることを予測でき、対応できる仕組み・組織作りが求められます。

また近年は予測できない事件・事象も多く発生していることから、日頃から業務の平準化・マニュアル化・均一化を行うとともに定期的に見直す仕組みを作り、動かすことにより企業経営の緊急事態にも即対応できるでしょう。

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経費精算システム「楽楽精算」

● 著者

大間 武

大間 武

飲食業をはじめ多業種の財務経理、株式公開予定企業などの経理業務構築、ベンチャーキャピタル投資事業組合運営管理を経て、2002年ファイナンシャル・プランナーとして独立。2005年株式会社くらしと家計のサポートセンター、NPO法人マネー・スプラウト設立。「家計も企業の経理も同じ」という考えを基本に、「家計」「会計」「監査」の3領域を活用した家計相談、会計コンサル、監査関連業務、講師・講演、執筆など幅広く活動。