クラウド会計ソフトとは? オンプレミス型との違いやメリットを解説
経営戦略のための資料の細分化や企業が提供するサービスの多角化などに伴い、煩雑かつ膨大な処理量となってきた経理業務では、会計の正確性を担保するためのITの活用が必要不可欠となりました。そのため、手書きで作成する作業を省略して処理を行える会計ソフトを導入している企業も多いでしょう。
従来はパソコン上でシステムを起動させるオンプレミス型の会計ソフトが主流でした。しかし近年は、クラウド型の会計ソフトが主流になりつつあり、従来の会計ソフトからの移行が進んでいます。このクラウド型のシステムは、会計に限らず、さまざまな分野で活用されているため、耳にする機会も多いでしょう。
しかし、「クラウド」について理解できているかと聞かれると、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、クラウド会計ソフトとはどのようなものか、また、従来の会計ソフトと比較した際の違いやメリット・デメリットなどについて解説していきます。ぜひ経理業務のIT活用のための参考にしてください。
クラウド会計ソフトとは?
はじめに、「クラウド」の意味について確認していきましょう。
そもそもクラウドとは
クラウドは直訳すると「雲」という意味です。クラウドを表す場合に、よく雲のイラストが使われています。
クラウドは、ネットワークでつながっているサーバーを指しています。従来は、パソコンや会社のサーバーにシステムをインストールしてソフトウェアを利用していました。しかし、クラウドが登場したことによって、ソフトウェアをインストールしなくてもソフトを起動させたり、データを保存したりできるようになったのです。このような仕組みをクラウドサービスと総称しています。
クラウドサービスが広まる前は、パソコン本体や会社のサーバーにインストールして利用するソフトウェアが一般的でした。ソフトウェアは、ソフトを起動させれば利用できるため、インターネットにつなげる必要はありません。一方クラウドは、ソフトウェアのインストールこそ必要ありませんが、起動させるにはインターネットにつながっている必要があります。
言葉で理解しようとすると難しく感じられるかもしれませんが、実は、普段からクラウドサービスを利用しているケースは少なくありません。たとえばGoogleが提供しているGmail(Gメール)は、個人のパソコンにインストールするメールサービスではありません。しかし、インターネットにつながっている環境では、特に意識することなく利用しています。Gmailのデータを保存している場所がインターネット上にあり、メールサービスそのものがクラウドサービスになっているのです。
注目されるクラウド会計ソフト
クラウドサービスの中で、会計に特化したものを「クラウド会計ソフト」と言います。上述しましたが、クラウドサービスはインターネット上でソフトウェアを利用するものですので、そのままですがクラウド会計ソフトも同じようにインターネット上で利用できる会計ソフトです。
近年はテレワークやサテライトオフィスの導入など働き方が多様化したり、会計業務に関連する他のサービスとの連携が拡大したりすることによって、インターネット環境があればどこからでもアクセスでき、システム連携も柔軟に対応できるクラウド会計ソフトの導入が注目されています。
こういった点を踏まえると、クラウド会計ソフトは今後もますます活用されていくことが予想されます。そのため、経理担当者は、数多くの会計ソフトの中から自社の業務スタイルに合うものを選択するための知識を養わなくてはなりません。では、どのような視点で会計ソフトを選択すれば良いのでしょうか。
次の見出しでは、会計ソフトの種類とそれぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
会計ソフトの種類について
会計ソフトの形態として「クラウド型」「オンプレミス型」という2つの種類が存在します。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
クラウド型のメリット・デメリット
クラウド型の会計ソフトの大きなメリットとしては、ネットワーク環境があれば利用する場所、利用するデバイス(パソコン・ダブレット・スマートフォンなど)を選ばないという点が挙げられます。自社で専用のシステム開発をする必要がありませんから、初期費用を抑えられる点はシステム開発までの予算が厳しいと考えている企業にとって導入しやすいでしょう。
また、ソフトをパソコンなどにインストールする必要がなく、バージョンアップの際は自動的に更新されて常に最新の環境で利用できます。ネットワーク環境を活かすことで、簡単に他のクラウドサービスと連携することができるため、効率的な処理が可能です。
一方、デメリットとしては、ネットワーク環境の下でなければ利用できないという点が挙げられます。また、ネットワーク環境の下で利用することから、ログイン時のIDやパスワードの管理は非常に重要です。セキュリティが脆弱だと、Wi-Fi環境下では情報漏洩のリスクも考えられます。そのため、定期的にパスワードを変えるなどの対策が必要になるでしょう。
オンプレミス型のメリット・デメリット
オンプレミス型の会計ソフトは従来から広く使われているもので、パソコンなどにソフトをインストールして利用します。ネットワーク環境がなくても利用できる点がメリットの1つです。また、ネットワークで使う場合、社内に限定されているためセキュリティの面での安心感があります。
デメリットとしては、バージョンアップの際に、都度ソフトをインストールしなければならないことが挙げられます。パソコンを買い替えたときにも同じ作業が必要です。複数人で利用するような際には、再インストールに手間がかかることもあります。
会計ソフトがクラウド化すると何が変わるのか
会計ソフトをクラウド型にすることによって経理業務は大きく効率化されます。ここでは具体的に2点ご紹介します。
情報共有が簡単にできる
オンプレミス型の会計ソフトの場合、たとえば顧問税理士に情報共有する際は、対象データをソフトから出力した後に、メールなどに添付をして共有する作業が発生していました。この作業は手間になるばかりか、メールの誤送信や情報漏洩などのリスクが伴います。しかし、クラウド型の場合、顧問税理士に会計ソフトへのアクセス権限を付与することで、データ共有の手間が無くなり、セキィリティなどのリスクも軽減されます。
システム間のデータ連携の手間を削減できる
クラウド型の会計ソフトの利点として、銀行口座の明細情報やクレジットカードの利用履歴などを自動で取得できることが挙げられます。さらに仕訳が自動化される機能や、請求書などの帳票類と連携して処理を補助してくれる機能などが搭載されたソフトも増えています。従来のオンプレミス型の会計ソフトでは、銀行のインターネットバンキングやクレジットカード会社の管理画面から入出金明細や利用明細をダウンロードしてソフトに取り込んだ後に仕訳するなどの手間が必要でしたが、クラウド型の会計ソフトによって、会計業務にかかる時間は大幅に削減することができるようになったのです。
まとめ
会計ソフトが広く浸透している中で、IT化が進み、クラウド会計ソフトも一般的に認知されてきています。テレワークなど働き方の変化もあり、今後はますます注目されるでしょう。クラウドサービスを最大限に活用するには、連携サービスを積極的に導入することもおすすめです。ぜひこの機会に、クラウド会計ソフトの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。
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※:デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より