【ブックレビュー】経営参謀—戦略プロフェッショナルの教科書
ベストターゲット
- CEO、執行役員、経営企画に携わる中堅社員
- 事業戦略立案、不振事業再生を取り扱うコンサルタント
読了目安
- 2.5時間
30秒で分かる! 「経営参謀—戦略プロフェッショナルの教科書」のポイント
- マッキンゼー出身の企業改革請負人である著者が織り成す企業改革ノベル
- 前半は、管理会計を業績評価指標やコスト・マネジメントの概念で捉え、各項目をより細分化して説明することにより会計知識が無い読者に配慮されています。
- 社内の地雷を踏みまくりながら、愚直に改革に取り組む主人公の姿を通して、トップの参謀役である経営企画の仕事とは何か、そして、企業改革のあり方をリアルに描く
- PDCAサイクル、定量調査といった戦略立案はもちろん、改革推進派と現状維持派との駆け引きや心理戦などのリアルな面にも言及している
- 4. 章末の解説や図式を用いて、読者に腹落ちさせる工夫もあり
どんな内容が書かれているか? -低迷するブランドの立て直しストーリーを通して経営参謀の仕事を学べる
レディースアパレルブランドに転職した、主人公の高山昇が、同社の社長から低迷するブランドを「半年間で立て直してほしい」と依頼されるところから物語が始まる。
本書のテーマは「市場をいかに攻めるか」「いかに戦略を立て実践するか」である。
前半の3つの章にかけて、目標の設定、現状の認識、市場の定量分析を用い図説等で解説しながら、戦略を立案していく。その中で、実践力の基となるPDCAサイクルの重要性についても説いている。
後半にかけては、対抗派閥や競合の思惑と闘いのなかで、経営陣の仕事としていちばん大切なことは何なのか、経営参謀として身につけるべきマインド、思考と行動の勘所が学べるだろう。
「経営参謀—戦略プロフェッショナルの教科書」は全部読む必要がある本か?
第1章から第3章にかけて、現状の認識と市場の分析、PDCAの重要性、市場調査の分析方法やマーケティング手法の活用法などの元来の意義について書かれており、参考になる部分も多く一度目を通しておきたい内容である。
後半は、対抗派閥とライバル企業との心理戦と駆け引きが繰り広げられており、興味が引かれれば、読んでもよいだろう。
第7章からは、経営陣として身に付けるべきマインドが書かれているので必読である。
以下については、常に心に留めておきたい。
戦略は『魔法の道具』ではない
- 戦略やマーケティングという言葉は、成功へ導く『魔法の道具』のように使われることが多い
- 本来は、経営理論という科学分野の一つであり、使い方によって、効果は天と地の差が発生する
- 戦略論などの経営理論を盲目的に信じず、摘要の前提条件を熟慮して用いる
経営に必要な3つの要素は「戦略」「実践力(PDCA)」「リーダーシップ」である
- 上記の3つの要素を機能させ、改革が常態化している状態が企業にとっては健全な状態ある
- 改革と進化は、初期仮説である戦略を調整しつつ、PDCAを駆使して確実に実施していく必要がある
- いかなる形でも、改革を仕掛けPDCAを回していくには、トップのリーダーシップが不可欠である
改革における最大の弊害は周囲の「思惑」、人の「業」
- 元来、人は、性善なれど、性怠惰なものである。自信への評価が曖昧な場合、全力で業務を行うことは少ない
- 人は、高い知能による、危機察知能力が保身行動をとり、改革の弊害となる
- 推進者のトップは、保身による思惑が組織内にどう作用しているか一番に気を配り、封じ込める必要がある
「経営参謀—戦略プロフェッショナルの教科書」の使い方-経営陣として、経営者の右腕としてそれぞれ考えるきっかけに
経営陣として
社内を再活性化や不振事業の再生に行きづまってしまったとき、組織全体をどのような視点で見るべきか、どういったマネジメントをとるべきかを考えるきっかけとなるだろう。トップのリーダーシップの重要性と、身に付けるべきマインドを見直すためにも読んでおきたい一冊。
経営者の右腕的存在の方・コンサルタントとして
経営改革を行う際に、戦略のフレームワークや前提条件についての説明がされているので、参考にすべき点は多い。
それ以上に、本書はストーリーを通してPDCAを中心とした組織のマネジメント、参謀機能を強化することによって、トップがリーダーシップを振るいやすい環境を整えることの重要性や、組織内の思惑の弊害にどう対処すべきか、を説いている。これは、経営参謀としてどうあるべきか、考えるきっかけを与えてくれるだろう。
「経営参謀—戦略プロフェッショナルの教科書」の不足点-本書で使用されたマーケティング理論や戦略論については、他の書籍を
経営や戦略論に現れる概念について、図解を用いて丁寧に説明されているため、頭に入りやすい。しかも、従来の理論のみで完結している戦略論とは違い、どの企業にもありがちな事例を小説形式にすることで、通俗的な人間の様相を描き、経営に際する心構えを学ぶこともできる。
しかし、本書はマネジメントに大きく焦点が当てられているため、本書で使用されたマーケティング理論や戦略論については、他の書籍を参考にする必要がある。
合わせて読みたい本
- 企業参謀―戦略的思考とはなにか– 1999/10/29 大前 研一
- 戦略参謀―経営プロフェッショナルの教科書 2013/8/30 稲田 将人
- V字回復の経営―2年で会社を変えられますか 2006/4 三枝 匡