【ブックレビュー】ケースで学ぶ管理会計-ビジネスの成功と失敗の裏には管理会計の優劣がある
ベストターゲット
- CEO・CFO・経理責任者・財務責任者
- 管理会計業務の構築を担うコンサルタント
読了目安
- 3時間
30秒で分かる! この本のポイント
- JALやソニーといった著名企業を具体例として挙げ、部門別会計といった古典的手法からバランスト・スコアカード(Balanced Scorecard)といった先進的手法まで幅広い管理会計手法が解説されています
- 前半は、管理会計を業績評価指標やコスト・マネジメントの概念で捉え、各項目をより細分化して説明することにより会計知識が無い読者に配慮されています。
- 後半は、管理会計という枠を超え会計の必要性やあり方を再定義することにより、幅広い会計知識について記載されています。
要約
管理会計は理論を実例に応用して始めて実務的に有効なツールとなります。
前提知識と専門用語を用いた関連書籍が多い中で、本書は具体例を中心とした記載が行われており、自然と管理会計の理論を身に付けることが出来ます。会計の初歩的な知識しかない読者に対しても読み進め易く、読了時には管理会計の大枠を理解できる内容となっています。
「ケースで学ぶ管理会計」の構成
業績評価という視点から管理会計の概念を説明したのち、各企業における管理会計の採用事例を個別に分析しています。
さらに、書籍終盤にかけて会計業務の本質的性格とあり方を筆者独自の視点から記載することにより、管理会計という枠組みに捉われない記述が行われています。
「ケースで学ぶ管理会計」はどのような人が読むべきか?
会社全体だけでなく個別の事業・部門においてまでも「利益」「採算」という視点が重視される昨今、個々の事業のマネジメントや意思決定に欠かせないツールは「財務会計」ではなく「管理会計」と言われます。
全社的に利益を意識した事業運営が求められている現在、管理会計は経理・財務部門の社員はもとより、経営企画部門、営業部門、人事・育成部門などすべてのビジネスパーソンが身に付けるべき必要不可欠な知識であり、管理部門社員に捉われることのなく読まれるべき内容となっています。
どんな内容が書かれている?
管理会計の基礎とそれに伴う実際の導入事例を中心に企業毎の管理会計のあり方が記載されています。
なかでも、“グーグルの「生態系モデル」”や“「忙しい」が口癖の営業マン“の章は、管理会計を経理財務部門のみでなく事業全体領域での課題と捉えた考察が行われており、非常に興味深い内容となっています。
全部読む必要がある本か?
事業部制・バランストスコアカード・ABC(Activity Based Costing)といった管理会計手法毎に項目立てた記載が行われており、自社に導入済の制度や今後導入を検討する制度部分のみを読む形でも十分に内容を理解することが出来ます。
また、会社毎の導入事例は個別章立てた記載が行われているため、興味のある分野、興味のある会社のみを掻い摘んで読むことも可能です。
「ケースで学ぶ管理会計」はどういう使い方をすればいいのか?
管理会計は経営層にとってのみ意味のあるものではなく、ミドルクラスのマネージャーや、現場の一社員にとっても非常に有益です。
現場社員に正しい会計情報が提供されることで、社員による自発的な分析や経営改善に向けたアクションが取られるケースも多々見られるため、管理会計を導入済の企業にとってはその再構築のため、管理会計を未導入の企業にとっては新規導入検討のために利用すべきでしょう。
「ケースで学ぶ管理会計」に不足している点
「ケースで学ぶ管理会計」と題されている通り、具体例を用いた管理会計に対する幅広い知識を得ることができる一方で、個別管理手法についての深堀りはされていません。
個別管理手法のより詳細な内容については、専門書籍にあたるべきです。
合せて読みたい本
- 会計のことが面白いほどわかる本 会計の基本の基本編 天野 敦之
- この1冊ですべてわかる 管理会計の基本 千賀 秀信
経理プラスのこちらの記事もお勧めです。
経理プラス:押さえておきたい中小企業の会計指針・会計要領
経理プラス:業績評価指標や業績評価基準が見える損益分岐点分析(CVP分析)とは?
著者紹介
金子 智朗(かねこ ともあき)
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