下町ロケットに学ぶ、経理が目指すべき「財務責任者」の役割とは

池井戸潤氏の人気小説で、ドラマ化もされている「下町ロケット」は、佃製作所という部品メーカーを舞台に、中小企業の実態をリアルに映し出しています。
原作によれば、佃製作所は資本金3,000万円、従業員は200人ほど、小型エンジンや特殊バルブの製造をしている中小企業です。

中小企業白書によると、国内の大企業はわずか0.3%で、99.7%が中小企業。
世の中のほとんどが中小企業ですから、その規模・業種は幅広く、経理担当者に求められるレベルも様々です。

ドラマの中では、主人公である佃社長が「うちは売上高100億円、経常利益10億円の中小企業だ」と話す場面があります。製造業で売上高経常利益率が10%であれば、優良な中小企業と言えるでしょう。中小企業といっても、この佃製作所のような、ある程度の規模の会社になると、経理の仕事は、「経理部」としての業務から、いわゆる「財務部」としての役割が強くなってきます。

 

トノさんに学ぶ財務部に必要な3つの能力

下町ロケットの登場人物の中で、とりわけ重要な役割を果たすのが、落語家・立川談春氏が演じる経理部長・殿村直弘(愛称・トノさん)。
実直で温厚な経理のオジサンといった雰囲気で、経理財務の責任者として、佃社長からはもちろん、会社のみんなから頼りにされている人物です。

経理と財務の定義は明確ではないですが、経理部と財務部の仕事には、次のような違いがあります。

一般的な経理の仕事は、伝票の起票、会計データの入力、請求書の発行や支払業務、月々の試算表の作成、決算業務などが中心です。

一方、財務部の役割として、主に下記の3つの能力が必要とされます。

(1)財務判断能力

具体的には、財務諸表の分析、経営状況の把握、財務体質改善の実行などになります。経理の仕事が「過去の結果の集計」、「日々の入力作業」を正確にこなすことが求められるのに対し、財務部はそれに加えて、財務の現状把握から、「経営者の進むべき方向を提言する」、未来志向の判断能力までを求められます。

(2)資金管理能力

資金管理とは、仕入先や税金の支払いなど、単なる「経費管理」や「毎月の支払業務」のことではありません。
経営者が資金繰りに追われて急な銀行回りに忙殺されることがないように、損益の予測から長期的なキャッシュフローの把握、未来投資のためにいつまでに、いくらの資金を蓄える必要があるか、また、経営者に代わって、金融機関や投資家に対しても、将来の資金需要の説明、交渉、調達までを担う能力が要求されます。

(3)計画立案能力

企業が作るべき経営計画は、広範囲におよびます。
財務部として責任を持つべき計画は、全社の利益計画、中期事業計画、部門別利益計画、資金運用計画、販売計画等があります。
もちろん、利益計画や販売計画は、役員や営業幹部も作成に携わることになるでしょう。
しかし、財務の観点で傾向を分析し、会社が出さなければいけない利益を提示、その数字の妥当性を、裏付けのある形で検証できるのは、数字のプロフェッショナルである財務部だけです。
決して、「前年比200%の売上をやろう!」などという根拠もない営業主導の計画を、会社全体の計画として容認してはいけないのです。

ドラマの中で経理部長トノさんは、社長や営業、技術部門に振り回されることなく、財務責任者としての手腕を発揮しています。
「社長、このままではうちは〇月までしか資金が持ちません!」と提言したり、

佃社長:「この資金調達、なんとかならないか、トノさん?」
トノさん:「私がなんとかします!」

と、資金調達において、責任感ある力強い発言も多く出てきます。
そこには経営者任せの、受け身の姿勢はありません。

 

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佃製作所の危機と財務責任者の役割

そして、「下町ロケット ゴースト編」では、こんな場面が出てきます。
ある時、佃製作所は、得意先である大企業、帝国重工から、信用調査を受けることになります。財務責任者であるトノさんは不測の事態で立ち会うことができず、代わりに経理係長である迫田(芸人・今野浩喜氏)が対応することになりました。

そこで、帝国重工の審査部から、佃製作所が検討を進めているM&A案件の、長期事業計画の提示を要求されます。
準備をしていなかった迫田経理係長は、言葉に窮して対応できず、佃製作所は万事休すかと思われます。

そこに財務責任者であるトノさんが遅れて登場。
帝国重工から求められる以前に、自分で準備、検証をしていた、「M&A後の長期事業計画」を提示し、佃製作所はこの信用調査を無事に乗り切ります。

この場面は、「財務判断能力」、「資金管理能力」、「計画立案能力」といった観点から、従来型の一般経理マンと、財務責任者の役割の違いを、端的に表現しています。

 

財務責任者として本当に大切な能力とは

そしてもう1つ、財務責任者に要求される能力として、トノさんは大切なことを教えてくれます。
「下町ロケット ロケット編」で、佃社長に対して、涙ながらに訴える場面です。

「逃げちゃ行けない。お願いだから、諦めないで下さい。佃製作所は良い会社です。本当に良い会社です。だから、なんとしても守りたい。守りたいんだ!」

果たして、一般の経理担当者は、このような気持ちで仕事ができているでしょうか。
財務責任者として本当に大切な能力は、トノさんのように会社を想う、熱い気持ちなのかもしれません。

 

まとめ

過去と日々の処理作業だけをする経理担当者か、未来の経営に携わる、経営者から頼られる財務責任者を目指すか、「下町ロケット」の佃製作所 経理部から、理想の経理の姿を学ぶことができます。

 

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● 著者

株式会社古田土経営 執行役員 川名 徹

株式会社古田土経営 執行役員 川名 徹

京セラ株式会社で営業・マーケティングを7年間経験後、毎月、中小企業2,200社の財務指導をしている古田土会計グループにて、会計・税務に携わる。 現在は、経営者向けの財務コンサルの他、同業者向けコンサル「会計事務所 経営支援塾」や、一般企業の経理向け「財務責任者 養成講座」などの企画・運営を行っている。

税理士法人古田土会計