【経理担当者向け】CFOへのキャリアパスとしての統計学

【経理担当者向け】CFOへのキャリアパスとしての統計学

近年、ビジネスにおいてビッグデータが一つのキーワードになっています。インターネットの普及とIT技術の進化により、様々なデータが入手しやすくなり、これまでは入手できなかったデータが溢れることになりました。その結果、与えられた情報から背後の要因や構造を読み解き、解釈し、適切な意思決定を行うことの重要性が高まっています。今回はCFOを目指す上で、有効な武器として、統計学をご紹介いたします。

統計学とは何か?

そもそも統計学とはどのような学問なのでしょうか。
一般的に統計学とは、データを用いてその特徴や傾向、あるいは確率を分析することで、意思決定に有益な情報に変換するための学問といわれています。つまり、ビジネス上で使用するならば、データを解釈し、一定の根拠に基づいた意思決定を行うためのツールと考えることができます。実際に統計学的な手法は様々なビジネスシーンで用いられています。

<例>

  • プレゼンのためのデータの可視化と整理。
  • アンケート等の小規模集団から集めたデータを基に大規模集団に関する結論を導く。
  • 品質改善のために「シックスシグマ」などの管理手法を用いる。
  • コーポレートファイナンスにおける投資意思決定の際のリスクを把握し、またはコントロールする。

統計学というと何か専門的な響きがしてきますが、上記例のように、企業は日常的に統計学的な手法を使ってデータをまとめ、そこから結論を導き出し、信頼性の高い予測を行い、日々の経済活動を行っています。
中にはアクチュアリーやデータサイエンティストといった専門家として統計学を使用する人々もいます。しかし、一般的なスキルとして考えると、統計学を完全に理解するというよりも、道具として使えることを目指すのが効率的です。

CFOというポジションに対する統計学の必要性

では、CFO(最高財務責任者)というポジションを目指す上で統計学がどう役立つかを見てみましょう。

そもそもですが、CFOはどんなポジションなのでしょうか。現状ではCFOは、大企業にみられるファイナンス部門の責任者や中小企業における管理部門の責任者であると認識される場合が多いように思います。
しかし、本来的にはCFOは、単なるファイナンスの専門家ではありません。CFOは資本効率を上げ、企業価値を最大化することを使命としており、ファイナンス業務のみならず経営戦略・事業戦略といった経営企画部門も管掌し、全社の活動に価値判断を行う経営参謀です。
そのため、CFOは企業が行う活動が経営戦略・事業戦略に沿ったものになっているか、PDCAサイクルに滞りはないかといった企業価値評価やリスクマネジメントを常に行い、CEOのパートナーとして企業活動のすべてに関与することとなります。

よって、CFOにとって、与えられた又は入手した情報やデータから、背後の要因や構造を読み解き、解釈し、適切な意思決定を行うことは非常に重要です。その点、統計学はデータ解釈における有効な手段であり、CFOにとって役立つスキルと言えます。
また、ビジネス理論という面でみると、近年のコーポレートファイナンス理論を理解する上で、統計学は必須となっています。この点においても、CFOへのキャリアパスを考えた際に、統計学の必要性は高いと考えられます。

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基本的な統計学

では、統計学のイメージをつかむために、基本的な例を見てみましょう。
統計学は大きく記述統計学と推測統計学とに分類することができます。記述統計学とは、データの収集、整理、表示、分析に関する手法であり、推測統計学とは小規模な集団について集めたデータを用いて、大規模な集団についての結論を導き出すための手法です。

今回は「平均」、「分散」、「標準偏差」について簡単にご紹介します。
これらはデータの集まりの特徴を調べる際に、基本となるものですので、覚えておいて損はありません。

まず、「平均」はデータを合計して、データの数で割ったものであり、日常のあらゆるところで使用されています。次に、「分散」と「標準偏差」ですが、こちらはそこまで一般的な単語ではありません。「分散」とは、データの平均値とデータの各数値との差を二乗したものの合計を、データの数から1を引いた値で割ったものをいいます(1を引かないケースもありますが、今回は割愛いたします)。

また、「標準偏差」とは、「分散」の平方根をとったものです。「分散」と違い、平方根をとることで元のデータと同じ単位で考える事がでます。イメージとしてはどちらも、データが平均値からどれだけ散らばっているかを表す数値です。

では、単純な事例を出して見てみましょう。
たとえば、何らかの試験を行ったとして、ランダムにサンプルとして6人の試験結果を抽出したとします。

<試験結果サンプル>

名前ABCDEF
得点767045655060

このデータの場合それぞれの値は以下のとおりです。
平均値:61.0 分散:140.0 標準偏差:11.8

標準偏差は平均値からどの程度ばらついているかを表すため、今回の試験結果で言うと

  • 61+11.8=72.8
  • 61-11.8=49.2

となり、おおむね49点から73点の範囲で分布していると予想できます。もちろん、どの程度の確率でその範囲をとるのか、母集団に対するサンプル数は適切か等考えるべきことはありますが、直感的に平均値と標準偏差から、データの大体の範囲が予想できるという理解でまずは十分だと思います。

なお、計算方法はそれぞれエクセルの関数を使用するのが便利ですが、参考として算出手順も併記します。

「平均」:=AVERAGE()
・データを合計して、データの数で割る。

「分散」:=VAR()
・データの平均値とデータの各数値との差を算出。
・算出した差をそれぞれ二乗し、結果を合計する。
・合計値をデータの数から1を引いた値で割る。

「標準偏差」:=STDEV()
・分散の平方根をとる。

まとめ

いかがでしたか。IT、英語に続くビジネスパーソンの必須スキルに、統計学が加わる日が来るかもしれません。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。