ワンランク上の予実管理表作成のコツ-CFOを目指す経理担当者のためのスキルアップ講座

ワンランク上の予実管理表作成のコツ-CFOを目指す経理担当者のためのスキルアップ講座

予実管理表とは、毎月の経営会議や取締役会等にて利用される月次予算と実績を対比分析し報告資料です。
一般的な予算管理の書籍等では、前月の「予算数値」「実績数値」「予実差異」「予実比(達成率)」「予実差異コメント」の5 行を並べたキレイなフォーマットが紹介されています。もちろん、このフォーマットを使用して毎月の予実管理表を作成しても十分ではありますが、一工夫くわえることで、驚くほど効率的に見やすい予実管理表へ大変身させることができます。
本稿では、ワンランク上の予実管理表作成のコツを一部ご紹介いたします。

相手に考えさせない予実管理表を作成する方法

予実管理表の提出先である経営会議等では、経営陣が数字を細かく分析しながら「売上が未達なのは、どの事業が原因か?」「事業別の粗利率は?」「売上は増加しているのに営業利益が減少しているのはなぜか?」など、限られた時間の中でさまざまなことを議論しています。
そこで、予実管理表作成に当たっては、経営会議等の議題を事前に予測した上で、できる限り相手に考えさせない資料を作成することが重要です。たとえば、次のような工夫が考えられます。

各勘定科目を売上高で割った百分率(売上比)を表示する

売上高粗利率、物流費売上高比率など、各勘定科目を売上高で割ったパーセンテージは、各分析をするにあたり最も重要な指標の一つです。

売上高~粗利益は、内訳項目として事業別数字を表示する

事業が複数ある会社の場合、売上高・売上原価・粗利益の3 つは事業別に表示しましょう。

販売管理費は属性により分類する

販売管理費は費目により、売上に連動するもの、従業員数に連動するもの、広告投資に連動するもの、毎月一定額発生するものなど性質が異なります。そこで、販売管理費は「販売直接費」「人材関連費」「販売促進費」「その他固定費等」に分類し、小計欄を表示しておくと見やすくなります。

主要KPIの予実情報を表示する

どこまで細かい数値を表示するかは各企業によりますが、会社全体の予実分析をするにあたり必ず議論にあがる主要KPIは表示しておくと良いでしょう。

月次累計数値を表示する

年次予算、四半期予算等に対する進捗度合を確認するために、期初からの月次累計予算実績比較も表記しておくと良いでしょう。

予実差異コメントは濃淡をつける

一般的に、予実差異コメントは予実差異が大きいものに絞り、一定のルール(例:差異10%以上)に基づき機械的に入力します。しかしながら、予実差異コメントの内容は当月の経営会議等で議論すべき本質的な内容から、参加者全員にとって既知のものまでさまざまです。入力にあたっては経営会議等で議論すべき本質的なコメントを赤字にするなど、濃淡をつけて作成すると良いでしょう。

 

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驚くほど効率的に予実管理表を作成する方法

予実管理表は、毎月必ず1回は作成する必要がある資料です。また、ほとんどの会社では月初から経営会議等までの日程はタイトであり、短時間で作成しなければなりません。毎月、お忙しい経理スタッフの方は、ぜひ次の効率化策を試してみてください。

入力用シートと印刷用シートを分けたフォーマット作り

予実管理表フォーマットは、毎月カスタマイズしながら作成するより、既存の決算資料を貼り付ければ一発で作成できる方が良いでしょう。
そこで、Excelフォーマットのシート1 は月次予算数値を貼り付けておき、シート2 は試算表(月次実績数値)をそのまま貼り付けられるようなフォーマットにしておきます。そして、シート3では予算欄はシート1から計算式により引用し、実績欄はシート2から計算式により引用し、会議に相応しい見た目に整えておきます。(シート1とシート2は入力専用であるため、見た目を整える必要はありません。)
以上により、毎月、試算表をシート2に貼り付けるだけで、会議に提出できる予実管理表を完成させることができます。

着地見込管理表との一体化したフォーマット作り

多くの会社では、毎月、前月の予算と実績の比較の他、当月の予算と着地見込の比較をします。この2 つの分析フォーマットは同じExcelシート上で一緒に管理すると効率的です。
具体的に、シート1は予算、シート2は実績(前月まで)+着地見込(当月)、シート3は前月の予算と実績の比較表、シート4は当月の予算と着地見込の比較表としておきます。そうすると、シート2に前月実績と当月着地見込を貼り付けるだけで、会議に提出できる予実管理表と着地見込管理表を一気に完成させることができるようになります。

最後に

予実管理表は、経営意思決定のための重要な資料である一方で、タイトなスケジュールの中で作成しなければならない資料です。資料の品質を高めると同時に、作成時間の効率化を図っていきましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 堀 直之

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2007年4月、大和証券SMBC株式会社(現 大和証券株式会社)に入社し、IPO・M&A等のアドバイザリーを担当する投資銀行部門にて、主に製造業セクターの事業法人への財務アドバイザリー業務に携わる。 2012年3月、株式会社アイスタイルに入社し、経理業務のほか、海外子会社の設立・管理、M&Aその他投資業務、マザーズから東証一部への市場変更等の幅広い業務に携わる。2013年7月、株式会社もしもに入社し、取締役として主に経営企画・管理部門を統括。