連結納税制度導入にあたっての手続き

連結納税制度導入にあたっての手続き

連結納税制度導入にあったて必要となる手続きは、連結親法人からすると対税務当局と対グループの2つがあります。

税務当局への手続き

連結納税制度を採用しようとする場合、最初の連結事業年度開始の日から3か月前までに連結親法人と連結子法人の連名で連結納税の承認申請書を、連結親法人の納税地を管轄する所轄税務署長経由にて国税庁長官に提出し、承認を得る必要があります。これと同時期に連結子法人は、連結納税の承認の申請書を提出した旨の届出書をそれぞれの所轄税務署長に提出する必要があります(法人税法4の3)。日本で多い3月決算を例にとると、この承認申請書は前年の12月末までには所轄税務署長に提出する必要があります。

グループ内への手続き

連結納税を行うためには、連結親会社と連結子会社の法人税所得金額計算を終わらせ、連結納税のための必要な調整を経て連結納税法人税を算出する。さらに、連結納税制度は法人税のみで、地方税や事業税には導入されていないので、各連結子法人にその個別帰属法人税額と個別所得金額の通知を行い、各連結子法人がこれらの税を計算し納付し得るようにする必要があります。連結納税法人税申告書提出期限は、連結事業年度終了の日の翌日から原則2か月以内、提出期限延長の特例を受ければ4か月以内です。レビュー並びに修正の期間を考えれば、最大でも連結事業年度終了日の翌日から起算して3か月半では、連結納税法人税申告書を作り上げなければなりません。この期間中、会計監査への対応やいわゆる税効果関連業務など様々な仕事も行う必要があります。従ってこの3か月半をすべて連結納税のために使えるものではないでしょう。

連結納税制度導入に必要な手続きは、端的に言ってグループ内の体制の構築になります。
これは連結納税のための必要な調整を行うための情報収集には留まりません。連結親・子法人の法人税所得金額計算の早期化、質が高く信頼できる必要な情報を必要な時期に収集する仕組み構築、ならびに収集した情報にて短時間で連結納税法人税申告書を作る方法を考えなければなりません。

法人税所得金額計算の早期化は、人材教育と税務計算ソフトの導入や顧問税理士事務所の関与強化といった方法で実現します。連結親法人は人材に恵まれている場合が多いでしょうが、連結子法人には様々な状態があるでしょう。連結子法人の各状況を調査検討し、必要な強化策を決定し実行する必要があります。税務計算ソフトは、有効な手段となりえますが、なぜその結果になるのかを知らずに使うと、間違いに間違いを重ね大きな混乱を引き起こすことになりますので、人材教育を軽んじてはいけません。

連結納税に必要な調整のための情報は、連結親子法人にとって追加情報の作成、収集、分析、計算という業務を求めることになります。先に書いたようにこれを限られた時間で正しく行うには、報告書式を用意し、その作成方法について十分な教育を行い、幾度かリハーサルをする必要があるでしょう。ここでも人材教育が不可欠です。

最後に、収集した情報から連結納税法人税申告書を短時間で作成する方法を編み出さなければなりません。すでにいくつかのソフトが市場に存在します。これを使うことも一つの対応策でしょう。しかし、先に書いたようになぜその結果になるのかを理解しないまま使うことは極めて危険です。

まとめ

このように連結納税制度導入は対税務当局では申請書を出し承認を得れば済むことですが、これを行うに先立ち多くの準備が必要になります。この準備には、時間も費用も掛かり、且つ習熟により導入後の時間と費用は少なくはなるでしょうが無くなることは有り得ません。他方、何か新しいことをしようとすると抵抗があるものです。連結納税制度は、ともすれば煩雑で複雑な業務を伴うので、トップダウンで明確な導入意思を示し、且つ十分な教育、報告書式やソフトなどの必要な道具を揃えることが必要でしょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 富永 和也

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センチュリー監査法人(現、新日本監査法人)に勤務し、一般事業会社(電気関係・投資関係)・地方銀行・学校法人・労働組合(百貨店・商業関係)等の監査業務を担当。その後、個人事務所を開業。 一般事業会社・学校法人・公益財団法人等の監査業務、会社財産評価業務、内部統制の構築・点検、 記帳指導・税務代理申告等の税務業務、経営コンサルティング業務等を行い、現在に至る。