修繕費と資本的支出の判断基準は?具体事例に基づき解説

修繕費と資本的支出の判断基準は?具体事例に基づき解説

建物や車など、所有している固定資産を修繕した場合、基本的には「修繕費」として費用を計上します。しかし、その修繕内容によっては、「固定資産の資本的支出」とみなされ、経費計上ができない場合もあります。今回は、経理担当者が混同しやすい「修繕費」と「資本的支出」について、具体例を交えて解説します。

修繕費・資本的支出とは

固定資産について行った作業にかかる費用を会計処理する際は、「修繕費」「資本的支出」のいずれかに該当します。

修繕費とは

修繕費とは、破損・故障した固定資産を、通常の維持管理の範囲内で、原状回復させるために要した費用のことです。オフィス壁の修繕や、壊れたパソコンの修理などが該当します。

また、20万円未満の修理や、3年以内の周期で行われる場合も、「修繕費」として費用計上できます。

資本的支出とは

資本的支出とは、固定資産を元の機能まで回復させるだけではなく、付加的な機能を加えるために支払った費用のことです。「補修工事」という名目であっても、耐震補強や防水加工など、元の建物価値を高めると考えられる場合は、固定資産として処理します。

建物に限らず、機械部品を高度なものに変更したり、改造したりする場合も同様です。

ただ、先述の通り、20万円より少額であれば、付加価値を与える修繕であっても、修繕費として計上できます。

それぞれの会計処理について

固定資産の修繕にかかった費用は、経費として計上できることに違いはありませんが、修繕費・資本的支出のどちらとみなされるかによって、経費計上の期間が異なります。

「修繕費」の場合は、その年にまとめて費用計上します。しかし、「資本的支出」の場合は耐用年数に応じて減価償却することになります。つまり、「資本的支出」として10年分の耐用年数があるとすれば、実際に修理をした年から10年間費用計上を続ける必要があります。
(期中であれば、月割計算が必要な場合もあります)

資本的支出・修繕費の判断基準

発生した費用が修繕費とみなされるか、資本的支出とみなされるかで、会計処理が大きく変わってきます。修繕費の場合はその年の費用となるので、節税という観点から見ても嬉しいもの。

では、それぞれの判断基準はどうなっているのでしょうか。

資本的支出・修繕費の違い

修繕費・資本的支出の考え方は前の項で述べました。判断基準を簡潔にまとめると、「機能を回復するだけか、当初より良くなるか」ということ。「マイナスをゼロにするか、プラスにするか」とイメージすると分かりやすいかもしれません。

固定資産か修繕費かわからない時

とは言え、中には判断が難しい事例もあります。その場合、定められた判断基準に従って考えることが必要です。これを「形式基準」といいます。以下に、判断基準をまとめましたので、参考にしてください。

1. 修繕費となる場合

・かかった費用が20万円未満
・3年以内の周期で支出している(頻繁な修繕が必要)
・通常の維持管理のためのもの
・かかった費用が60万円未満、または修理した資産の前期末の取得価格の10%未満

2. 資本的支出となる場合

・資産の価値を高めるもの、または耐久性を増すもの

3. 7:3基準(割合区分)

法人の場合、継続して「割合区分」という方法を採用することで、資本的支出と修繕費を7:3の割合で継続することができます。

また、それ以外の場合でも、割合区分においては「支出金額の30%」と「前期未取得金額の10%(※)」のいずれか少ない金額を修繕費、残りを資本的支出として処理します。
※前期未取得価格とは、前期末の時点での取得時の価格と、その後の資本的支出を合算したものです。

前期未取得価格500万円のものを100万円で修理した場合、
・前記未取得価格の10%=50万円
 (支出金額より低いので、全額修繕費計上は不可です)
・支出金額の30%=30万円
ですから、小さい方の「支出金額の30%=30万円」を修繕費として計上し、残りの「70万円」を固定資産とします。

4. 災害の特例

災害にともなって支出した場合、70%相当額が資本的支出、30%相当額が修繕費となります。

資本的支出・修繕費事例集

形式上の判断基準をいろいろ紹介してきました。最後に、資本的支出と修繕費の事例をまとめてご紹介します。ソフトウェアをアップデートした時は?LEDランプへの取り換えは?
「こんな時はどっちになる?」と考えながら読んでみてください。

資本的支出となる場合

  • 非常階段の取り付け(物理的に機能を付加)
  • 壁をモルタルからタイルに張替え(耐久性を増す)
  • 事務所用を居住用に変更(用途変更)
  • ソフトウェアへの新たな機能の追加(機能の向上)

修繕費となる場合

  • 壊れたガラスの取替え
  • 雨漏りの修理
  • 水はけ良くするために砂利を補充
  • 蛍光灯をLEDランプに取り替える(ランプだけでは建物の価値を高めたとは考えられない)
  • 法改正に対応するためのソフトウェアアップデート

例外

減価償却資産の中でも、「少額減価償却資産」に該当する場合は、資本的支出の内容でも、消耗品として処理できます。10万円未満の資産や、1年未満しか使えない資産については、このことを思い出してください。

まとめ

いかがでしたか。修繕費となるか、資本的支出となるかで会計処理は異なります。費用計上のタイミングが変わるため、税金額にも関わってくる部分です。考え方を身につけ、実務に活かしてください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。