【税理士監修】出金伝票の書き方のポイントは6つ!経理処理方法も紹介

【税理士監修】出金伝票の書き方のポイントは6つ!経理処理方法も紹介

伝票とは、日付や金額などの取引内容を一定の様式に記録し保存する用紙のことで、主に経理部門や個人事業主、フリーランスが取り扱う書類の一つです。その中でも良く使われるものに、「出金伝票」「入金伝票」「振替伝票」があります。

出金伝票は、電車賃やバス代のように領収書が発行されない場合でも、費用計上することができる便利な伝票です。ここでは出金伝票について、書き方など覚えておきたい基礎知識をまとめて解説します。

出金伝票とは

出金伝票とは、会社が保有する現金が直接出ていく場合に起票する伝票のこと。具体的には以下のようなケースが想定されます。

  • 電車やバスなどの交通費
  • 祝儀や香典、見舞金などの冠婚葬祭費
  • 文房具などの備品等を現金で購入した場合
  • 自動販売機で飲み物を購入した場合 など

仕訳でいうと借方は旅費交通費や消耗品費などさまざまですが、貸方は常に「現金」です。現金を直接支払ったときのみ使用しますので、取引先の銀行口座へ振り込んだ場合、あるいはクレジットカードの決済などは、出金伝票を使用せず振替伝票を起票します。

出金伝票と入金伝票、振替伝票の違い

出金伝票の他に入金伝票と振替伝票があり、この3種類の伝票を使うことを「3伝票制」といいます。実際に多くの企業では仕訳帳のかわりに伝票を使って取引を記録しており、実務知識として重要です。なお、伝票制の論点は簿記3級の出題範囲にもなっています。

出金伝票と入金伝票、振替伝票の違いについて見ていきましょう。

入金伝票との違い

入金伝票は、実際に現金が入ってくるときに使用する伝票です。出金伝票の反対とイメージすれば良いでしょう。想定されるケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 商品、サービスなどを販売し、その対価を現金で受けった
  • 売掛金の回収を現金で行った

仕訳でいうと借方が「現金」、貸方は売上や売掛金などです。応用として、「商品5万円を売り上げ、代金1万円を現金で受け取り、残りは掛とした」といった取引の一部が現金といったケースがあります。実際に現金を受け取ったのは1万円なので、入金伝票には1万円のみ記録し、残り4万円は売掛金なので振替伝票に分けて記録します。

振替伝票との違い

振替伝票は、現金の入出金を伴わないその他すべての取引を記録する伝票です。具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 売掛金の回収や買掛金の支払いを銀行経由で行った
  • 売上の請求書を発行した
  • 税金などが銀行口座から引き落とされた

振替伝票は取引によって勘定科目がさまざまです。そのため、借方と貸方の両方に勘定科目と金額を記載します。

出金伝票の書き方、ポイント

出金伝票は100円ショップやホームセンターなどの量販店で販売されています。形式は多様ですが、記載に必要な項目は下記の通りです。

  • 日付:取引が発生した日付を記入します。
  • 支払先:現金を支払ったお店など相手先を記入します。
  • 科目:勘定科目を記入。旅費交通費、接待交際費、図書印刷費、諸会費、消耗品費、慶弔費などが該当します。
  • 摘要:取引の内容を簡単に記載します。「〇〇社打ち合わせ」「缶ジュース2本」程度の記載で構いません。
  • 金額:支払った金額を記入します。
  • 証憑:取引を証明できる書類の有無を記入します。領収書が基本ですが、領収書が発行されない場合や紛失した場合は、出張上申や会議案内、招待状などでも代替可能です。証憑は原本を出金伝票に添付します。

市販されている紙の出金伝票は、取引1件ごとに作成する形式です。しかし現金取引が多いと、申請者と経理とも処理の負荷が高くなります。そのため、1週間や1か月単位でまとめた様式にすると便利です。下記に基本的なテンプレートを作成しましたのでご参考ください。作成者とその上司が確認し、経理へ提出する様式です。

テンプレート(Excel)のダウンロードは下記リンクから行えます。

経理プラス:出金伝票テンプレート

紙やExcelで管理するよりも、会計ソフトなどのシステムを活用すると業務効率が大幅に改善します。様式が紙やExcelだと、申請者は事務所など決まった場所で作業する必要があり、申請をため込んでしまいがちです。また、出金伝票を受け取る経理側も紙の管理や集計作業があり手間がかかるでしょう。

オンラインで申請・処理できるクラウド型の会計システムであれば、申請者はちょっとした空き時間を使って入力できます。経理担当者もとりまとめる手間が無く、総勘定元帳や決算書類へデータが自動で反映されるので、会社全体での業務の効率化が期待できるでしょう。

出金伝票を使うタイミング

出金伝票は事業で支出したタイミングで起票しますが、領収書やレシートが無い場合、たとえば、冠婚葬祭の慶弔費や割り勘で支払った接待交際費などに費用発生を裏付ける証明書としての機能もあります。会社の業務に関することで支出した場合、少額であっても漏れなく帳簿に費用計上することは、正しい会計処理や節税の観点から重要です。領収書やレシートがもらえれば支出を裏付ける証憑として有効ですが、もらい忘れたり紛失したりするケースもあるでしょう。また、電車などの交通費やご祝儀、香典など一般的に領収書が交付されないこともあります。

こうした場合、支払証明書や出金伝票を作成することで、支出の事実を説明することができます。なお、経費処理における支払証明書と出金伝票の活用方法については、下記リンクをご参照ください。

経理プラス:支払証明書と出金伝票の活用方法 領収書がなくても経費にできる!?

出金伝票の保存期間

出金伝票の保存期間は法人税法上で7年間、会社法上で10年間と定められています。領収書やレシートが無い場合に、費用処理の証憑としてのみ出金伝票を起票しているのであれば保管期間は7年間。仕訳帳の代わりとして出金伝票や入金伝票、振替伝票などを使って会計処理をしている場合、保管期間は10年間です。なお、電子データとして保管する場合も同様となります。いずれにせよ長期間の保管が必要ですので、システム化による電子データ化が望ましいでしょう。

まとめ

出金伝票は社内で作成する資料ですが、領収書やレシートが無くても支出を裏付ける証憑として有効です。日付や支払先、内容など必要な項目を漏れなく転記しましょう。また、税務署からの調査などで疑われないよう、会議案内やパンフレット、案内状など事実を補強する証拠を一緒に残しておいてください。現金の取り扱いが多く処理が大変であれば、会計システムの導入を検討することをおすすめします。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 谷澤 佳彦

谷澤佳彦様(トリミング&圧縮)

1993年に税理士資格を取得し、「谷澤佳彦税理士事務所」を開設。近年は相続・事業承継に対する税務相談を数多く対応する。司法書士や不動産鑑定士など他の専門家とタッグを組み、組織として企業の繁栄・事業承継をサポートすることも得意とする。AFP(Affiliated Financial Planner) 資格を 2002 年に取得、 2 級 FP 技能士資格を2003 年に取得。

谷澤佳彦税理士事務所