償却債権取立益は?貸倒引当金戻入益との違いや仕訳方法を解説
償却債権取立益は、前期以前に貸倒れとして費用処理した売上債権が、当期に回収された場合に使用する勘定科目です。ここでは、償却債権取立益の基本的な知識、貸倒引当金戻入益との違い、計上した場合の税務上の取り扱いなどについてわかりやすく解説します。
償却債権取立益とは
償却債権取立益とは、前期以前に貸倒損失として処理した売上債権の一部または全部が当期になって回収された場合に、その回収金額を計上する勘定科目のことです。過年度に計上された損益の修正といった性格を持ち、損益計算書の区分は営業外収益に表示されます。
過年度の決算はすでに確定していますので、過去の収益や費用を当年度に含めてしまうと、正しい経常損益が計算できません。そのため、このような修正項目は通常なら特別損益に区分されますが、償却債権取立益は営業外収益になりますので注意しましょう。なお、当期の貸倒損失が当期内に回収できた場合は、貸倒損失を取り消す仕訳を行い償却債権取立益は使用しません。
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貸倒損失とは
ここで「貸倒損失」についても簡単にご説明しましょう。取引先の財務状況の悪化や倒産などにより、売掛金などの売上債権が回収できなくなることを貸倒れと言います。貸倒れ、つまり債権が焦げ付いた場合には回収不能額を貸倒損失として費用計上し、売掛金などを減額します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貸倒損失 | *** | 掛金 | *** |
法人税法上は、貸倒れとして損金計上できるケースを下記3つに限定しています。
- 法律上の貸倒れ
法律上債権が消滅し回収不能となった場合です。会社更生法や民事再生法の決定、消滅時効などが該当します。 - 実上の貸倒れ
債務者の資産状況からみて、債権の全額が回収できないことが明らかな場合などです。 - 形式上の貸倒れ
売掛債権について、一定期間取引停止後に弁済がない場合などです。
貸倒引当金とは
貸倒損失に似た勘定科目として「貸倒引当金」があります。貸倒引当金とは、取引先の倒産などによる貸倒れリスクに備えて、期末にあらかじめ金額を見積もって引当金を設定することです。貸倒損失は貸倒れという事実が発生していることに対する損失計上ですが、貸倒引当金はその予備段階での費用計上と言えます。
期末の売掛金や受取手形などの売上債権の中には、翌期以降に貸倒れになるものも含まれています。当期の売上債権に対して生じるリスクなので、当期の費用として計上することが合理的です。そのため、決算にあたっては過去の貸倒実績率などから貸倒れ額を見積もって、当期の費用とする会計処理が認められています。
なお、税法は債務が確定しないと損金として認めない「債務確定主義」が採られているため、一部の例外を除いて貸倒引当金は損金計上できません。具体的な取引について、仕訳例をご紹介します。
貸倒引当金の仕訳例
決算にあたり売掛金残高50万円に対し、5%の貸倒れを見積もった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 25,000 | 貸倒引当金 | 25,000 |
毎期末に貸倒引当金を見積もって金額計上します。前期末の残高がある場合は、設定したい金額になるよう差額を補充します。
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貸倒れが発生した際の仕訳例
取引先に対する売掛金5万円が貸倒れた。貸倒引当金の残高は2.5万円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貸倒引当金 | 25,000 | 売掛金 | 50,000 | |
貸倒損失 | 25,000 |
実際に貸倒れが発生した場合は、引当金を取り崩すとともに売上債権を減少させます。引当金の残高を超える場合は、差額を貸倒損失として計上します。
貸倒引当金戻入益との違い
償却債権取立益と混同してしまう勘定として、「貸倒引当金繰入益」があります。貸倒引当金は毎期末に見積りますので、前期に設定した残高があれば差額を計上。前期から繰り越した貸倒引当金の残高が、今期の設定額より多い場合は「貸倒引当金戻入益」を使用します。
貸倒引当金戻入益の仕訳例
決算につき、当期の貸倒引当金として30万円を設定した。ただし前期の貸倒引当金の残高は50万円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貸倒引当金 | 200,000 | 貸倒引当金戻入益 | 200,000 |
償却債権取立益は、債権が回収できないと判断した過年度の「貸倒損失」に対する回収益ですが、貸倒引当金戻入益は前期の貸倒引当金を戻し入れることです。混同しないよう注意しましょう。
仕訳方法
償却債権取立益に関連する取引について仕訳例を紹介します。
貸倒損失が発生した際の仕訳例
取引先が倒産したため、売掛金10万円が回収不能となった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貸倒損失 | 100,000 | 売掛金 | 100,000 |
貸倒れが発生したので貸倒損失勘定に計上します。売掛金や受取手形などの売上債権であれば「販売費及び一般管理費」、貸付金などは「営業外費用」、多額であれば「特別損失」の区分にそれぞれ表示されます。
当年度分を回収時した際の仕訳例
当期に貸倒れとした売掛金10万円のうち、5万円を現金で回収した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
現金 | 50,000 | 貸倒損失 | 50,000 |
貸倒れとして処理した売上債権を同じ会計期間中に回収することができた場合は、貸倒損失を取り消す反対仕訳を行います。
過年度分を回収した際の仕訳例
前期に貸倒れとして処理していた売掛金10万円のうち、5万円を現金で回収した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
現金 | 50,000 | 償却債権取立益 | 50,000 |
過年度に貸倒損失として計上した売上債権の一部、または全部が当期に回収されたときは、償却債権取立益を計上します。
税務上の取扱い
償却債権取立益を計上した際の税務上の取り扱いについてです。法人税法上は特別な取り扱いはなく益金として計上しますが、消費税法上は処理が必要となります。
まず、貸倒れとなったときには、その金額に含まれる消費税額を控除します。そのため、取立益に含まれる消費税については、回収した日に属する会計年度の消費税額を加算しなくてはいけません。消費税相当額は、控除過大調整税額として記載し申告します。
まとめ
償却債権取立益について、貸倒損失との関係や貸倒引当金繰入益との違いなど具体例を交えながら解説しました。償却債権取立益は前期以前に貸倒損失と判断し、費用計上した売上債権を当期に回収した場合に使う勘定科目です。類似の勘定として、貸倒引当金を戻し入れる際に使用する貸倒引当金戻入がありますので、混同しないよう注意しましょう。
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