連結納税制度導入のメリットとデメリット
連結納税制度導入のメリットとデメリットは、制度に加入する連結親法人と連結子法人がそれぞれ個別に法人税の申告を行う場合と比べて検討すると判り易いでしょう。次に示すように、明らかなメリット、明らかなデメリット、そしてメリットにもデメリットにもなり得るグレーなものが存在します。
連結納税制度の明らかなメリット
連結納税制度の主なメリットは2つです。
連結納税制度では、連結親法人と連結子法人の課税所得を合算するところから始まります。この際、連結親法人の欠損金は、連結子法人の課税所得と合算されますので、合算後の連結課税所得は個別申告を行うに比べ減少し、法人税額も減少します。但し、連結子法人の欠損金は、連結納税開始時又は加入時のものは、例外を除き合算できません。これは次の明らかなデメリットのところを見てください。
もう一つのメリットは、税効果会計にて計上される繰延税金資産の回収可能性を高める効果が有り得るということです。この回収可能性の検討を連結で検討することを可能にするため、個別では回収可能性に疑念が生じても、他の連結法人の所得を取り込むことができることによりその疑念を払拭し得るということになります。
連結納税制度の明らかなデメリット
これには主に3つあります。
第1に、連結子法人にある連結納税制度開始前または加入前の欠損金は、原則切り捨てられるので、連結親法人や他の連結子法人の課税所得を減額することはできません。但し、租税回避の可能性の低い時価評価課税の対象から除かれる連結子法人については、その連結子法人の個別所得を限度として、繰越欠損金の持ち込みが認められています。しかし、この条件から連結親会社や他の連結子法人の課税所得を減額することはできません。
第2は、連結納税制度開始前または加入前に連結子法人は、開始直前または加入直前事業年度にその有する固定資産、有価証券、金銭債権、繰延資産を時価で評価し、その差額を益金または損金に算入することです。なお、いくつかの条件にあてはまる連結子法人はこの時価評価を行わないこととされています。
第3は、連結納税制度導入ならびに継続に要する費用増加です。連結納税制度は継続適用が原則で、一度導入すると、連結親法人の連結納税の承認が国税庁長官の職権により取り消されるか、取り消されたとみなされるか、または、やむを得ない事情から取止めの承認を国税庁長官から受けない限り、止めることはできません。このため、連結納税制度継続費用を削減することは出来ても、消滅させることは難しいと言われています。
メリットにもデメリットにもなり得るグレーなもの
これは連結納税法人の状況により、メリットにもデメリットにもなるものです。連結親法人と連結子法人の課税所得を合算したのち、連結納税制度特有の調整を行います。この調整によりメリットまたはデメリットが生じることになります。この調整には、貸倒引当金の限度額計算、受取配当金の益金不算入計算、交際費の損金不算入計算、寄付金の損金不算入計算、所得税額控除計算、外国税額控除計算、試験研究費の税額控除計算などがあります。個別申告と異なり、連結納税制度は連結納税法人を一つの納税主体とするので、これらを再計算する必要があるためです。貸倒引当金を例にすると、個別申告では他の連結法人に対する債権を貸倒引当金繰入限度額計算対象債権額に含めることが出来ますが、連結納税制度ではその債権は第三者に対する債権でないため貸倒引当金繰入限度額計算対象債権に含められません。更に、法定繰入率の適用においても、個別申告と連結納税では異なる率となっています。
さらに、連結納税法人(連結親法人と連結子法人からなる連結納税制度加入法人)間の取引に係る所得は繰り延べられる、換言すれば連結課税所得から除外されるということです。この対象となるのは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます)、有価証券、金銭債権と繰延資産です。このため土地以外の棚卸資産は対象外です。たとえば連結親法人から連結子法人へ固定資産の譲渡が行われ、連結親法人が譲渡益を計上しても、その譲渡益は繰り延べられ譲渡時の所得とはされません。譲渡損が計上された場合にも、同様となります。
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