株価純資産倍率(PBR)とは?純資産と株価を比較した投資指標を分かりやすく解説!

株価純資産倍率(PBR)とは?純資産と株価を比較した投資指標を分かりやすく解説!

PBR(株価純資産倍率)は投資家向けの株価情報でよく見かけますが、あまりご存じない経理担当者の方も多いでしょう。経理の分析と言えば、原価分析や損益分析といった内部情報の分析や、財務諸表から収益性や財務の安全性、生産性や効率性の分析を行うことがメインで、あまり株価と比較することはありません。

しかし、企業は投資家から資金を預かって事業を行っている以上、投資家が期待する長期的な企業価値の向上、つまり株価の上昇期待に応えていく必要があります。また、株価を意識することは、資金調達などのファイナンス戦略やM&A戦略の一環であり、経営管理の一翼を担う経理部門の仕事と言えるでしょう。ここではPBRの基礎知識や計算方法、業界別の平均値などについて分かりやすく解説します。

PBRとは?

PBR(株価純資産倍率、Price Book-value Ratio)とは、現在の株価と1株あたりの純資産を比較する指標です。PER(株価収益率)と並ぶ重要な投資指標の1つで、PERが利益の面から株価を判断する指標であるのに対して、PBRは純資産の面から「現在の株価のお買い得感」を判断する指標と言えます。

アクティビスト(いわゆるモノ言う株主)や敵対的買収、持ち合い株の解消といった時代の背景から、企業は投資家の期待に応えるため事業の価値を高め、結果として株価を上げていくことが求められています。経理部門としても、投資指標から自社の市場評価を理解しておくことが重要です。

PBRの計算式

PBRは株価を1株あたりの純資産で割って計算し、単位はPERと同じ「倍」になります。

PBR(倍)=株価÷1株あたりの純資産

例えば株価が600円、純資産(株主資本)が800億円、発行済みの株式が2億株の場合、PBRは株価600円÷1株あたりの純資産(800億円÷2億株)なので1.5倍と計算します。この例では1株あたりの純資産が400円となりますが、株価が800円に上がればPBRは2倍、300円に下がれば0.75倍になります。

BPSとは?

PBRの計算の分母にあたる「1株あたりの純資産」のことを、BPS(Book-value Per Share)と言います。

BPS(円)=純資産÷発行済み株式数

株の銘柄を選ぶ際は利益の大きさに注目しがちですが、株主としては十分な資産を持っているかも重要な視点です。株価が同じであれば、BPSが高いほど安心感があると言えます。

PBRから分かること

PBRは、仮に会社を解散する場合の株主の取り分と言えます。会社の資産は現金預金、有価証券、不動産などさまざまですが、資金の出し手側から見ると負債と純資産に分けることができます。

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総資産から借金などの負債を差し引いた残りが純資産、つまり会社に残るお金であり株主にとっての解散価値です。株価と解散価値がイコールであれば、PBRは1倍となります。もしPBRが1倍未満であれば、帳簿上の資産価格より株価の方が低いことになり、株価は割安と言えます。

PBRの目安は?

PBRの目安は1倍です。投資の世界では一般的に、「PBR1倍割れは割安のため買い」と判断されます。これは、PBRの1倍割れが帳簿上の資産価格>株価の時価総額の状態であり、例え倒産したとしても損をしないことになるためです。

PBRが低くなる要因としては、以下のようなことが考えられます。

  • 収益力が低いため市場から評価を得られず、分子の株価が低い
  • 現金を持ちすぎて資産を有効活用できず、分母の純資産が大きすぎる

解散価値>株価であれば、その銘柄を買わない理由はなさそうだと感じるかもしれません。しかし、帳簿価格と時価評価の差や減損の兆候、含み損といった問題を抱えている可能性があるので注意が必要です。また、会社としてはPBRが低いまま放置してしまうと、最悪は企業買収ファンドに狙われる危険性もあると言えるでしょう。

業界別の平均PBR

業界別の平均PBRについてご説明します。2022年11月末時点のプライム市場の平均PBRは1.2倍です。目安であるPBR1倍を超える業種としては、医薬品(1.4倍)、電気機器(1.7倍)、陸運業(1.2倍)、情報通信業(2.3倍)、小売業(1.8倍)などがあります。一方、PBRが1倍を下回る業種としては、建設業(0.8倍)、鉄鋼(0.5倍)、銀行業(0.3倍)などです。

PBRの上位ランキングには、IT関連の企業が多く入っています。大きな設備投資が不要なため資産が少なく、一方で収益率は高い企業が多いと言えるでしょう。そのため、成長への期待値が高く株価が上昇することから、PBRが2倍を超えていると考えられます。

一方、銀行業のPBRは0.3倍とかなり低くなっています。銀行のビジネスモデルは、お金を貸し出して利子を得るか、国債などを購入し運用益を得るかです。日本の金利はずっと低い状況が続いていますので、銀行の収益性も低迷しています。そのため、市場は銀行業の成長性が低いと判断し、株価が低迷しているため突出して低いPBRになっていると考えられます。

PERとPBRとの違い

PERとPBRは、株価情報を見ると必ず記載のある投資指標です。どちらも投資家が注目する重要な指標ですが、PERは株価と収益性を比較するのに対して、PBRは株価と純資産を比較する点が異なります。

一般的には、景気が良くどの会社も利益を出しやすい状況ではPERが重視され、不景気で経済が低迷するとPBRが重視されます。景気が悪いとあまり利益が出ないのでPERが参考になりにくく、さらに倒産のリスクも高まるため解散価値と投資金額(株価)を比較するPBRが注目されます。また、PERは赤字の企業では算出できず、資産売却など一過性の利益によって大きく変動するケースも考えられるでしょう。こういった場合は、PBRを併用して投資の判断を行います。

まとめ

PBRから分かることや、PERとの違いについて解説しました。投資家が株を購入するときに使う投資指標ですが、会社の立場から見た場合の考え方についてもご理解いただけたのではないでしょうか。

PBRが1倍以下の場合、極端な話をすれば、その企業は解散して資産を売却したほうが投資家は儲かると言えます。所属する業界平均や同業他社と比較し、PBRが低いようであれば、資産の活用方法や外部へのPRが不足しているかもしれません。経理担当者であればPERやPBRといった投資指標を理解し、経営戦略を考えるも大切なことです。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。