領収書の収入印紙がない場合はどっちが負担する?収入印紙で困ったときの対処法

領収書の収入印紙がない場合はどっちが負担する?収入印紙で困ったときの対処法

契約書や領収書といった経済取引に関連する文書を作成したときに、収入印紙を貼り付けることがあります。ここでは、収入印紙の基本的な知識、印紙税を貼り付けなかった場合のペナルティ、収入印紙の貼り付けがない領収書の有効性、一部が欠けた収入印紙の使用可否判断といった実務上の疑問点について詳しく解説します。

収入印紙とは

収入印紙とは、主に国に対して税金や手数料を支払う目的で使用する、政府が発行する証票です。形は切手と同じであり、郵便局やコンビニ、役所などで購入することができます。額面は1円から10万円まで31種類あり、必要な額面を選んで購入します。何枚かの収入印紙を組み合わせることも可能です。郵便局では全種類の収入印紙を購入できますが、コンビニでは基本的に200円のものしか販売されていません。

収入印紙がよく使われるケースとしては、金銭的な契約取引に伴って作成される契約書や領収書などの文書に、印紙税を納付する目的で貼り付けるケースでしょう。収入印紙を文書に貼り付ける際は再利用できないよう、収入印紙と文書の両方に印影がかかるように「消印」を行います。

印紙税とは

印紙税とは、取引のために契約書などの文書を作成した場合に、印紙税法に基づいて課税される税金のことです。印紙税は経済取引そのものに課税する訳ではなく、取引に関連して作成する文書に課税することから「文書税」ともいわれています。印紙税の課税対象となる文書のことを「課税文書」と言い、印紙税法では20種類の項目が挙げられています。代表的な課税文書としては、以下などがあります。

  • 企業間の契約書
  • 不動産売買契約書
  • 土地賃貸借契約書
  • 金銭借用証書
  • 工事請負契約書
  • 売買委託契約書
  • 保険証券
  • 売上代金に係る金銭受取書(領収書やレシート)

一方、収入印紙が不要な文書としては、5万円未満の領収書やレシート、請求書、注文書、契約金額が1万円未満の契約書、リース契約書、建物賃貸借契約書などがあります。また、領収書をPDFやFAXで送付する場合は、5万円以上の取引であっても収入印紙は不要です。

作成した文書が課税文書にあたるか否かは、最終的には書いてある内容から判断します。文書の名称やタイトル、形式だけで判断しないよう注意しましょう。

印紙を貼り付けなかった場合はどうなる?

印紙税がかかる文書に印紙を貼り忘れた場合は、過怠金が発生します。印紙税は文書の作成者が自ら課税文書かどうかを判断し、税額を算出して自主的に納付する(収入印紙を貼り付ける)方式をとっています。そのため、正しく納税が行われなかった場合は、そのペナルティとして過怠税が徴収されるのです。

原則としては、課税文書の交付や合意形成のタイミングまでに印紙を貼り付ける必要があります。ただし実務上、手元に書類があれば、忘れていたことに気づいたタイミングで貼り付けても大きな問題はないでしょう。

作成時までに印紙を貼り付けなかった場合の過怠金は、納付すべき税額の3倍になります。ただし、所轄税務署長に対して自主的に納付していない旨の申し出を行った場合は、1.1倍の過怠金に減額されます。

また、貼り付けた収入印紙に消印をしていなかった場合でも、消印されていない収入印紙と同額の過怠金が徴収されます。税務調査などで貼り忘れを指摘された場合、最大で5年分に遡って過怠金を科せられます。また、過怠金は税務上のペナルティに該当するため、法人税や所得税への損金算入はできません。

領収書に収入印紙の貼り付けが無かった場合はどっちが負担する?

例として、社員が接待費の精算として5万円超の領収書を提出してきたものの、収入印紙の貼り付けがなかったケースを考えてみましょう。

5万円を超える領収書には、収入印紙の貼り付けが必要です。しかし、納付義務は文書の作成者側、つまりお店側にあります。受け取った側には、収入印紙を貼り付ける必要も負担する必要もありません。

また、接待費として経理処理を行う上で、収入印紙がないことは証憑として何も問題はありません。正規の領収書として経費計上を行いましょう。お店側に通知する義務はありませんが、頻繁に使用する馴染みのお店であれば一声かけてあげると親切でしょう。

印紙が一部欠けてしまった場合はどうなる?

消印が押された収入印紙は、当然ながら再利用ができません。印紙の一部が欠けている場合、それが消印済みかどできの判断ができないと考えられますので、基本的には使用できないと理解しましょう。

金額が異なる収入印紙を誤って購入したり、購入した収入印紙が不要になったりした場合は、郵便局で他の印紙に交換することができます。郵便局の窓口で、収入印紙1枚あたり5円の交換手数料で他の印紙と交換してもらえます。ただしこの場合も、棄損や汚染していない未使用の収入印紙に限ります。収入印紙の取り扱いには注意しましょう。

まとめ

収入印紙に関連する基本的な知識と、実務的に発生する事象やトラブルの例について解説しました。1件ごとの契約や領収書の印紙税は少額ですが、税務調査で貼り忘れを指摘されると3倍の過怠金が発生し、最大5年間遡って徴税されます。また、ペナルティの意味合いを持つ過怠金は損金算入できず、法人税も支払うことになります。こうしたことからも、収入印紙について正しい知識を身につけておきましょう。

昨今では、契約書や領収書を紙ではなく電子データでやり取りすることも増えました。印紙税は紙で交付することが課税要件と考えられているので、電磁的な記録は課税の対象外となります。課税文書の判断が不要となり、さらに節税効果もあるので、電子化を進めることも有効でしょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。