見積書とは?役割や作成ルールを解説 【テンプレート付】

見積書とは?役割や作成ルールを解説 【テンプレート付】

企業間のビジネスでは、さまざまな書類がやり取りされます。その中でも、取引の早い段階で提出されるのが「見積書」です。見積書とは正式な契約や発注の前に、商品やサービスの金額、納期について概算を提示する書類のこと。ここでは見積書について、作成理由や作成時のルール、2023年10月から開始されるインボイス制度との関連についてご説明します。

見積書とは

見積書は買い手の希望に応じて、売り手が金額や納期の概算を提示する書類です。事前に口頭やメールベースでやり取りを行い、商取引を更に進めたい場合に依頼することが多いでしょう。汎用的な商品の見積書であれば、単価、数量、金額、納期といった基本的な情報を記載します。

一方、工事や特注品といった見積書には、金額の他に使用する材料の明細や工事範囲といった情報を記載します。さまざまな費用を積み上げて計算することを「積算」と言いますが、大規模な工事案件では見積書が数十ページにもなる場合も少なくありません。そのため、建設業や電気工事、設備工事などでは、専用の見積作成ソフトが販売されています。

保存義務あり

見積書は契約書や納品書と同様に、取引の実在性を証明する書類の一つです。このような書類のことを「証憑書類」と呼びますが、法律で一定期間の保存が義務付けられています。

  • 法人の場合は原則7年間、赤字決算の場合は10年間
  • 個人事業主の場合、消費税の課税対象事業者であれば7年、対象でなければ5年

保管は自社で発行した見積書の控えや、相手先から発行してもらった見積書の両方が対象となります。最終的な取引に結び付かなかった見積書については、保存する必要はありません。

見積書の保管は、紙またはPDFなどの電子データで保存する2つの方法があります。紙の見積書を保存する場合は取引先別にまとめたり、一連の契約書類と一緒にファイリグしたりすると良いでしょう。

しかし、紙での保存は保管するスペースやキャビネが必要であり、手作業なので紛失やミスが起きやすいといった点がデメリットです。そのため、電子的に作成した見積書をデータのまま保存したり、紙で受領した請求書をスキャナ保存したりすることが増えています。以前は税務署長の事前承認が必要でしたが、2022年1月の電子帳簿保存法改正を受け不要となっています。

なお、電子帳簿保存法改正の注意点として、取引先から電子データで見積書を受領した場合はそのままデータで保存し、紙での保存は禁止されていますので注意しましょう。

商取引の流れのなかでの見積書の位置づけ

一般的な商取引は、見積、契約、発注、出荷、受領(検収)、請求、支払いの流れで進みます。見積書の段階では何の契約も締結しておらず、債権債務は発生していません。そのため、簿記の取引の対象外ですし、当然ながら税務上の処理も不要です。

しかし、見積書は会社として提出する正式な書類であり、買い手が発注するかどうかを判断する重要な書類と言えまるでしょう。見積書の金額や納期はあくまで概算ではありますが、多くのケースで見積書の条件を前提に契約まで話が進みます。見積書の作成は、納期や採算が取れることを確認し、必ず社内の正式なルートを経て提出することが重要です。

作成理由

法律上、見積書を作成する義務はありませんが、見積書には発注側、受注側双方にとってさまざまなメリットがあります。まず、発注者側の視点では発注を検討する上で、見積書はとても重要な情報です。予算や相場と比較したり、同業他社へ相見積もりを取ったりして、より条件の良い取引を選択することができます。発注するかどうかの稟議を掛ける際に、参考書類として添付することで社内の意思決定につなげられるのです。

見積書を作成する受注者側の視点としては、見積書は新たな取引を獲得するチャンスと言えるでしょう。当初の見積もりに対して価格交渉が入ることもありますが、金額や納期を調整することで交渉を進められます。

口頭やメールだけで話を進めてしまうと、正式な発注時に金額や仕様などで認識の相違があり、トラブルになる懸念があります。せっかく進めてきた案件の契約が成立しないといった事態は、双方にとってマイナスとなるでしょう。こうした際、見積書を発行することで、交渉がスムーズに進むといったメリットがあります。

見積書作成時のルール

見積書には、特に決まったフォーマットがありませんので。そのため、ネット上からダウンロードしたワードやエクセルで作成することも多いでしょう。

基本的な記載項目は、日付、相手方の名前、自社の名前や住所・連絡先、商品名や単価、数量、金額など。その他の書類との混同を避けるため、文書のタイトルは「御見積書」と明記しましょう。仕様やサイズなどの情報は、できるだけ詳しく記載します。

消費税を記載する場合は、小計の下に項目を追加してください。消費税込みだと支払総額が確認しやすいですが、法的には記載しなくても問題ありません。記載しない場合は、「消費税は別途申し受けます」の文言を記入しましょう。

見積書の有効期限は必ず記載します。2週間から半年の間に設定するのが一般的ですが、材料の値動きなどを勘案して設定すると良いでしょう。有効期限、納期、その他の条件があれば備考欄に記入します。見積書のテンプレ―トについては、下記リンクを参照ください。

経理プラス: 見積書のテンプレート(エクセル)

インボイス制度導入後の変更点

2023年10月からインボイス制度が施行されますが、これによって、見積書のフォーマットや記載項目を変更する必要はありません。2019年の消費税増税に伴い軽減税率が導入されたことで、現在は8%と10%の消費税率が使用されています。売り手が正確な消費税率や消費税額を買い手側に伝えることがインボイス制度の趣旨ですが、インボイス(適格請求書)に該当する書類は請求書、領収書、レシートなどです。

見積書に消費税を記載する場合、税率を区分する必要がありません。ただし、適用税率に気を付けて正しく記載しましょう。

まとめ

見積書の役割や作成時のルールなどについて解説しました。見積書の発行を義務付ける法律はありませんが、認識の相違があった場合には金額や条件を確認する有効な書類となります。記載が必要な項目をしっかりと理解し、正確な見積書が作成できるようにしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。