法人税で認められている繰延資産の償却期間と損金算入限度額
繰延資産とは?抑えるべきポイント
会社の資産には、大きく分けて固定資産と繰延資産に分けられます。税務上の繰延資産とは、法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものをいい、翌年以降にも負担が及ぶ場合は、来期まで負担を繰り延べることが出来ます。商法の観点から見ると具体的には繰延資産としては下記のものがあげられます。
- 会社の創立費
- 開業費
- 開発費
- 株式発行費
- 社積等発行費
以上のものが基本としてあります。
税務上の繰延資産のポイントとしては、商法上の繰延資産は、計上をできるだけ限定しようとしますが、税務の観点から見ると商法よりも広い領域で定義されます。
- 自社に利益が発生する道路のような公共施設や、駅前のアーケードへの支出のように共同施設を作ったり改善するために支出する費用
- 自社で建物や設備を借りたり、使用するための費用や立退料
- 製品や技術を提供してもらうために頭金として支出する費用
- 看板など自社商品を販促するための宣伝用資産を代理店に贈与したこと費用
- 加入することによって利益を生み出しそうな同業者の協会・団体への加入のための費用
以上の5つが主に上げられます。
繰延資産の償却期間は?注意点は?
商法上の繰延資産は償却期間はありません。理由としては、任意償却であるという点にあります。一方、税務上の繰延資産には一定の期間があります。固定資産の場合は、その固定資産の耐用年数を基準とし、また、一定の契約にあたって算出した費用に関してはその契約期間を基準とします。さらに、上記1~5について、
- 共用施設耐用年数の70%に相当する年数
共同設備の場合5年(耐用年数がそれ未満の場合はその耐用年数) - 建物の場合その建築物の耐用年数の70%に相当する年数
設備等の場合5年(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間) - 5年(契約年数が5年未満の場合、契約更新に際して再度頭気が必要となる場合はその契約期間の年数)
- その資産の耐用年数の70%に相当する年数(耐用年数がそれ未満の場合はその耐用年数)
- 5年
以上となっています。繰延資産は利用方法によっては節税効果を生むこともあります。
損金算入の要件と限度額
法人税法では、繰延資産を償却費として損金経理(決算において費用又は損失として経理すること)した場合に、はじめて損金の額に算入されます。償却の限度額に関しては、均等償却とされ計算方法は、
繰延資産の金額×当期の月数÷償却期間の月数
によって算出されます。
ただし、均等償却をするべき繰延資産であっても、支出額が20万円未満であるものについては、その事業年度に、全額を損金算入することができます。
事例の紹介
先述べの4に関する事例
自社で開発した塗料を流通させるために、各都道府県にパートナーを見つけ代理店契約を結んだ。その際に、販促用のツールとして各代理店の店舗に商品PRのデジタルサイネージ(1機25万円)を作成し贈与した。総支出としては、25万円×47都道府県=1,175万円となった。
この場合、デジタルサイネージの販促効果は1年以上の宣伝効果を見込めます。その為、税務上の繰延資産となります。デジタルサイネージの耐用年数が10年とすると償却期間は7年となります。償却限度額の計算式に当てはめると、
繰延資産額:1,175万円×当期の月数:12ヶ月÷償却期間の月数:7年×12カ月=167万円
が償却限度額となります。
最後に
今回は、税務上の繰延資産についての概要が中心の説明となっており、実際の会計処理はテクニカルなところがあります。節税という面ではメリットもありますので、専属の税理士の方に相談しながら処理を進めていきましょう。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。