住民票の発行手数料の勘定科目は?仕訳例と記帳する際の注意点

住民票の発行手数料の勘定科目は?仕訳例と記帳する際の注意点

企業経理において、さまざまな支払いを適切に処理することは重要な業務の1つです。その中でも、住民票の発行手数料の会計処理は注意が必要です。この手数料は地方自治体への支払いであり、通常は「租税公課」の勘定科目で計上されますが、状況に応じて「支払手数料」や「雑費」などの勘定科目で処理されることもあります。本記事では、住民票の発行手数料の勘定科目や具体的な仕訳例、記帳時の注意点について解説します。

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住民票の発行手数料の勘定科目は?

住民票の発行手数料の勘定科目について詳しく見ていきましょう。ここでは、一般的な処理方法や、状況に応じて使い分けられる勘定科目について説明します。

一般的に租税公課が使われる

住民票の発行手数料の勘定科目は「租税公課」が一般的に使われます。住民票の発行手数料は地方自治体に支払うものであり、租税公課の範囲に含まれるためです。租税公課とは、国や地方自治体に納める税金(租税)と、国、地方自治体や公共団体に納める会費・組合費・賦課金や交通反則金などの「公課」を合わせたものを指します。

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租税公課以外で計上するケース

住民票の発行手数料は、一般的には「租税公課」の勘定科目を使って処理を行います。しかし、必ずこの勘定科目を使うという訳ではありません。企業は、自社の実情に合わせて、一般に認められている会計の原則から、最適な勘定科目を自由に選んで使うことができます。これを「経理自由の原則」と呼びます。租税公課以外で、住民票の発行手数料を処理する際によく使われる勘定科目には、「支払手数料」や「雑費」が挙げられます。

どの勘定科目を使って住民票の発行手数料を処理する場合でも、消費税の非課税取引として扱う必要があります。消費税は、事業者が消費者に提供するサービスに対して課される税金です。つまり、事業者が消費者から徴収した税金を国に納める仕組みになっています。一方、行政機関が行う住民票の発行などの手続きは、消費者への商品・サービスの提供ではあるものの、政策的配慮から消費税の非課税取引として課税対象にはなりません。

したがって、企業が住民票の発行手数料を経理処理する際は、必ず非課税取引として区分する必要があります。

住民票の発行手数料の具体的な仕訳例

住民票の発行手数料は、地方自治体の窓口で発行を依頼し、現金で支払います。自治体によっては、一部のコンビニエンスストアでも住民票の発行と支払いが可能です。

ここでは、住民票の発行時の仕訳について具体例を用いて説明します。

住民票を会社の現金で取得する場合

地方自治体の窓口で住民票の発行を依頼し、会社の小口現金から手数料を支払った場合の仕訳は以下の通りです。

例:300円で住民票の写しを1通取得した場合の仕訳

借方金額貸方金額
租税公課300円現金300円

複数の住民票を取得する場合は、手数料の合計金額で1つの仕訳にまとめることができます。

例:300円の住民票をまとめて5通取得した場合の仕訳例

借方金額貸方金額
租税公課1,500円現金1,500円

従業員が住民票の発行手数料を立て替えた場合

一般的に、従業員が地方自治体の窓口で住民票の発行手数料を立て替えて支払い、後日経費精算を行うケースがあります。この場合、住民票の取得時と、会社が立替払いを精算する時の2つの仕訳が必要になります。

住民票取得時の仕訳
例:従業員Aが地方自治体の窓口で住民票の写し(1通300円)を立て替えて取得した場合

借方金額貸方金額
租税公課300円未払金300円

立替払い精算時の仕訳
例:後日、会社が従業員Aの住民票の写し(1通300円)の立替払いを精算した場合

借方金額貸方金額
未払金300円現金300円

従業員がオンライン申請で住民票の発行手数料を立て替えた場合

住民票の発行は、自治体の窓口での申請以外にオンラインでも可能です。オンラインで申請すると、後日住民票が郵送で送られてきます。この場合、発行手数料に加えて郵送料が別途発生することが一般的です。

住民票の発行手数料と郵送料の切手代等は、消費税の取り扱いが異なります。そのため、住民票の発行手数料は「租税公課」の勘定科目を使用し、郵送料の切手代等は別途「通信費」などの勘定科目を使って仕訳します。

住民票オンライン申請時の仕訳
例:従業員Aがオンラインで住民票の写し(1通300円)を立替払いした場合

借方金額貸方金額
租税公課300円未払金384円
通信費77円
仮払消費税7円

立替払い精算時の仕訳
例:後日、会社が従業員Aの住民票の写し(1通300円)の立替払いを精算した場合

借方金額貸方金額
未払金384円現金384円

住民票の発行にかかる費用は、取得方法に応じて適切な勘定科目で処理しましょう。

住民票の発行手数料を記帳する際の注意点

住民票の発行手数料を記帳する際の主な注意点は以下の通りです。

支払手数料の場合は非課税にする

住民票の発行手数料を「支払手数料」の勘定科目で計上する場合は、必ず消費税を非課税として区分する必要があります。「雑費」で処理する場合も同様です。会計ソフトの初期設定では、これらの勘定科目が課税取引となっているため、住民票の発行手数料については非課税に修正する必要があります。非課税取引として扱うべき経費については、記帳時に必ず非課税取引に修正しましょう。

仕入税額控除の対象にならない

住民票の発行手数料は非課税取引のため、仕入税額控除の対象にはなりません。仕入税額控除とは、事業者が課税取引に伴って支払った消費税額を、自社の納付すべき消費税額から控除できる制度です。具体的には、事業者が仕入(購入)の際に支払った消費税を、自社が顧客から受け取った消費税から差し引くことができます。これにより、消費税の二重課税を防ぐことができます。住民票の発行手数料は非課税取引のため、この仕入税額控除の対象外となります。

勘定科目を一度決定したら変更しない

一度決めた勘定科目は、原則として継続して使用し、安易に変更しないことが望ましいです。これは会計における「継続性の原則」に基づくものです。継続性の原則とは、一度採用した会計処理の方法を、特別の理由がない限り変更しないことを求める基本原則です。勘定科目を変更したい場合は、監査を受けている会計士に相談するのが良いでしょう。

まとめ

住民票の発行手数料の会計処理では、一般的に「租税公課」の勘定科目が使用されますが、企業の判断により「支払手数料」や「雑費」などの科目で処理することもできます。本文では、自治体窓口での支払いや従業員の立替払いなど、さまざまな支払パターンの仕訳例を紹介しました。また、記帳時の注意点として、住民票の発行手数料は非課税取引であり、継続性の原則への配慮が重要であることを解説しました。

企業経理担当者の皆様は、これらの点に留意し、住民票の発行手数料を適切に会計処理することで、正確な財務諸表の作成に役立ててください。

住民票の発行手数料の勘定科目と会計処理に関するQ&A

住民票の発行手数料の会計処理について、よくある質問をいくつか取り上げて解説します。企業の経理担当者の参考になれば幸いです。

Q1.住民票の発行手数料は経費計上できない?

事業に必要な場合は経費計上できます。ただし、個人的な用途での住民票の発行手数料は、経費として処理することはできません。

Q2. 住民票の発行手数料以外に租税公課で経費計上できる主な経費・公共料金は?

租税公課として経費計上できる主な経費には、以下のようなものがあります。

  • 事業税、固定資産税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金

一方、水道・電気・ガスなどの公共料金は、租税公課ではなく水道光熱費の勘定科目で処理します。租税は国・地方公共団体に納付する税金、公課は賦課金や罰金であり、公共料金は性質が異なるためです。

Q3. 個人事業主が住民票の発行手数料を仕訳する場合の注意点は?

個人事業主の場合も、事業に関連した住民票の発行手数料は経費計上できます。ただし、家族の分など個人的な用途での手数料は、経費対象外となります。事業目的と個人目的を適切に区分しましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 公認会計士 梶本 卓哉

Kajimototakuya

税務署法人課税部門(税務大学校首席卒業)、大手監査法人や大手投資銀行勤務等を経て公認会計士・税理士事務所開設。税務のみならず会計監査やIPO(新規株式公開)実務に強みを有する。