返金したとき・されたときの勘定科目は?具体的な仕訳例と注意点

企業の経理業務において、返金処理は避けて通れない重要な業務の一つです。返金は、商品の返品や取引のキャンセル、税金の過払いなど、さまざまな理由で発生します。そのため、適切な勘定科目を使用し、仕訳を行わなければなりません。

返金処理には細かなルールが存在し、状況に応じて異なる勘定科目を使用する必要があります。この記事では、返金が発生するケースごとに使用する勘定科目と具体的な仕訳例、注意点について解説します。

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目次

返金が必要になる主なケース

返金が必要になる場面は多岐にわたり、その理由や状況によって適切な会計処理を行うことが求められます。事業活動を円滑に進めるためにも、返金が発生する主なケースについて理解を深めておきましょう。

販売や購入した商品の返品に伴う返金

商品販売や購入の際に、何らかの理由で返品が発生した場合、返金が必要となることがあります。顧客や取引先が商品を誤って購入したり、購入した商品に不備が見つかったりする場合などが典型的な例です。

たとえば、顧客が注文した商品と異なる種類の商品が届けてしまった場合、その商品の返品を受け、支払った代金を返金しなければなりません。また、取引先から仕入れた商品に不備があり、品質が基準を満たしていなかった場合も返品を行い、支払った代金を返金してもらうことになります。こうした返品に伴う会計処理では、返品と返金を正確に記録し、適切な勘定科目を使用して仕訳を行うことが重要です。

誤った入金があった場合の返金

取引先から請求書に記載した請求額よりも多く代金が支払われることがあります。このような場合には、差額を返金する必要が生じます。

たとえば、請求書に記載された金額が100,000円であったにもかかわらず、取引先から120,000円が振り込まれた場合、その差額20,000円を返金する処理が必要です。誤入金による返金は、一時的な仮受金や仮払金を使用して処理し、返金が完了した際にはこれらの勘定科目を適切に振り替える仕訳を行います。

取引がなくなった際の返金

取引の予定があり、前払いで入金を受けたものの、その取引が実行されなかった場合も返金が必要となります。同様に、こちらが前払いで支払いを行ったものの、取引が取り消された場合にも返金が発生します。

たとえば、新しい取引先と契約を結び、前払いで500,000円を受け取った後に取引がキャンセルされた場合、その500,000円を返金する必要があります。この場合の仕訳処理は、前受金を取り消す形で行います。また、取引先に対して前払いを行った場合も、取引がなくなれば前渡金を取り消す形で返金処理を行います。

年末調整時の返金

企業が従業員に対して行う年末調整においても、返金が発生することがあります。これは、従業員から源泉徴収した所得税が実際に支払うべき金額を超えていた場合に発生します。

たとえば、年間の所得税計算を行った結果、過剰に徴収していたことが判明した場合、超過分を従業員に返金する必要があります。この返金は、年末調整の一環として行われ、適切な勘定科目を使用して仕訳を行います。具体的な仕訳は、従業員に返金する金額を預り金から取り消す形で処理します。

返金に使う勘定科目と仕訳例

事業活動において返金が発生するケースは少なくありません。返金が発生した場合、適切な勘定科目を選定し、正確に仕訳することが重要です。ここでは、返金に使用する勘定科目と具体的な仕訳例について解説します。

返金で使用する勘定科目

返金をする側とされる側では、使用する勘定科目が異なります。自社が顧客や取引先に返金をした場合と、顧客や取引先から返金を受けた場合の勘定科目の使い分けを理解することが重要です。

自社が顧客や取引先に返金をした場合、誤って受け取った金額を「前受金」「売掛金」「預り金」などの勘定科目で処理し、返金する金額を「現金預金」をはじめとする「普通預金」「当座預金」などを使って仕訳します。 一方、顧客や取引先から返金を受けた場合、誤って支払った金額を「前渡金」「買掛金」「未収入金」などの勘定科目で処理し、返金された金額を「現金預金」をはじめとする「普通預金」「当座預金」などを使って仕訳します。

返金の仕訳例【自社が返金をした場合】

ここからは、上記で説明した自社が返金をした場合の具体的な仕訳例を解説します。

誤った入金があった場合の返金

取引先からの入金額が請求額を超えていた場合、その差額を返金します。この場合、以下のような仕訳を行います。

販売時

借方金額貸方金額
売掛金10,000円売上10,000円

まず、商品やサービスを提供した際に請求額を売上として計上します。この仕訳は取引先に対する債権を記録するものです。「売掛金」は取引先からの未収入金額を示します。「売上」は商品やサービスを提供したことで得た収益を記録します。この仕訳により、取引先から10,000円の支払いを受け取る権利があることを記録しています。

入金時

借方金額貸方金額
普通預金20,000円売掛金10,000円
仮受金10,000円

次に、取引先から実際の支払いが行われます。この時、請求額より多くの金額が入金された場合、その差額を仮受金として処理します。「普通預金」は入金額全額を記録します。「売掛金」は10,000円分の請求額に対する支払いを記録し、残りの10,000円は「仮受金」として処理します。仮受金は一時的に預かっている金額を示し、後で返金や別の処理を行うために使います。

返金時

借方金額貸方金額
仮受金10,000円普通預金10,000円

過剰入金分を取引先に返金する際の仕訳です。「仮受金」は返金しなければならない過剰入金分の金額で、「普通預金」は実際の返金額です。この仕訳により、仮受金の残高がゼロになり、過剰入金分が返金されたことを示します。

取引がなくなった場合の返金

取引予定があり、代金の前払いを受けたが、取引がキャンセルされた場合の返金は次のような仕訳を行います。

取引時

取引の前払い金を受け取った際の仕訳です。

借方金額貸方金額
普通預金20,000円前受金20,000円

前受金は、取引先からの前払い金を示します。「普通預金」は、取引先から受け取った前払い金を記録します。この場合、20,000円が銀行口座に入金されます。「前受金」は、取引先からの前払い金を示し、将来的に提供する商品やサービスの代金を先に受け取ったことを記録します。これにより、20,000円の前受金が計上され、同額が普通預金に入金されます。

返金時

取引がキャンセルされ、前受金を取引先に返金する際の仕訳です。

借方金額貸方金額
前受金20,000円普通預金20,000円

「前受金」は、取引先からの前払い金を減少させるために使用します。これにより、前受金として計上された20,000円が取り消されます。「普通預金」は、実際の返金額です。この仕訳により、前受金の残高がゼロになり、20,000円が銀行口座から支払われたことが記録されます。

商品の返品を受けた場合に伴う返金

商品販売後に顧客から返品があった場合、その返品に伴い代金を返金する際の仕訳について解説します。返品の処理は、商品販売時の仕訳を逆仕訳する形で行います。

商品販売時

まず、商品を販売した際に仕訳を行います。

借方金額貸方金額
現金30,000円売上30,000円

この仕訳は商品の販売とその代金の収受を記録するものです。「現金」は、取引先からの受取代金の金額を示します。他方で、「売上」は、商品やサービスを提供したことで得た収益を記録します。この仕訳により、30,000円分の売上が計上され、同額の売掛金が発生します。

返品時

次に、商品が返品され、代金を返金する際の仕訳です。

借方金額貸方金額
売上30,000円現金30,000円

この場合、商品販売時の仕訳を逆仕訳する形で行います。「売上」は、返品された商品の売上を取り消すために使用します。これにより、当初計上した売上を減少させます。「現金」は、取引先からの収受金ために使用します。この仕訳により、返品された商品の売上が取り消され、売掛金の残高がゼロになります。

年末調整時の返金の仕訳例

返金には、事業活動以外でも発生することがあります。たとえば、年末調整時の返金です。 ここでは、年末調整により従業員に所得税の超過分を返金する場合を確認していきましょう。

給与支払時

まず、通常の給与支払い時の仕訳を行います。

借方金額貸方金額
給与100,000円普通預金80,000円
預り金20,000円

この仕訳は、従業員の給与とその支払い、ならびに源泉徴収税額の計上を記録します。「給与」は従業員に支払うべき給与総額を記録します。「普通預金」は実際に従業員に支払われた金額を示し、「預り金」は源泉徴収された所得税などの金額を記録します。この仕訳により、従業員に支払うべき給与と実際の支払い額、および預かっている税金が正確に記録されます。

年末調整時の返金

次に、年末調整により、従業員に対して源泉徴収しすぎた所得税の返金が発生した場合の仕訳です。

借方金額貸方金額
預り金5,000円普通預金5,000円

「預り金」は、従業員から源泉徴収していた金額を減少させます。これは、過剰に徴収していた所得税を返金するためです。「普通預金」は、実際に従業員に返金された金額を記録します。この仕訳により、源泉徴収しすぎた所得税の返金が正確に記録されます。

返金の仕訳例【自社が返金を受けた場合】

次に自社が返金を受けた場合のケースを確認していきましょう。

商品の返品を受けた場合に伴う返金

自社が購入した商品に不備があり、それを返品し、代金を返金してもらう場合の仕訳について解説します。返品に伴う仕訳は、商品購入時の仕訳を逆仕訳する形で行います。

仕入時

まず、商品を購入した際に仕訳を行います。

借方金額貸方金額
仕入15,000円現金15,000円

この仕訳は商品の仕入とその代金の支払い義務を記録するものです。「仕入」は、購入した商品のコストを記録します。「現金」は、取引先に対する支払いを示します。この仕訳により、15,000円分の商品の購入が記録され、同額の支払いを行ったことを記録します。

返金時

次に、購入した商品を返品し、代金を返金してもらう際の仕訳です。

借方金額貸方金額
現金15,000円仕入15,000円

この場合、商品購入時の仕訳を逆仕訳する形で行います。「現金」を借方に記録することで、取引先に対する支払い取り消します。これによって、購入時の取引が解消され、返金された金額が記録されます。

取引がなくなった際の返金

さらに、自社が代金を前払いした取引がキャンセルされた場合の仕訳を確認します。

取引時

この仕訳は、取引の前払いを行った際の仕訳です。

借方金額貸方金額
前渡金20,000円普通預金20,000円

前払い金は「前渡金」として処理します。「前渡金」は取引先に対して前払いした金額を示します。これは将来の取引に使用される前払い金を記録するための勘定科目です。一方、「普通預金」は実際に銀行口座から支払った金額を減少させます。この仕訳により、前払いした20,000円が記録され、同額が普通預金から支払われたことが示されます。

返金時

次に、取引がキャンセルされ、前払金が返金された際の仕訳です。

借方金額貸方金額
普通預金20,000円前渡金20,000円

「普通預金」は返金された金額を受け取ったことを示します。一方、「前渡金」は前払い時に記録された金額を取り消します。この仕訳により、前渡金の残高がゼロになり、返金された金額が普通預金に反映されます。

返金の仕訳時の注意点

返金が発生した場合、適切な仕訳を行うことが重要です。しかし、返金に関する仕訳には注意すべき点がいくつかあります。これらの注意点をしっかり把握することで、適切に仕訳処理ができるようになります。

消費税の処理に注意する

返金が発生する場合でも、通常の会計処理と同じように消費税の処理を行う必要があります。消費税の処理は、売上や仕入にかかる消費税額の調整を行うものであり、返金に伴う仕訳でも適切に処理しなければなりません。

たとえば、顧客に対して返金する際の仕訳を考えてみましょう。売上時に10%の消費税を含む金額で販売し、その後返品が発生する場合です。

売上時

借方金額貸方金額
現金11,000円売上10,000円
仮受消費税1,000円

返品時

借方金額貸方金額
売上10,000円現金11,000円
仮受消費税1,000円

次に、商品を仕入れる際の消費税の処理について説明します。

仕入時

商品を仕入れた際の仕訳です。この仕訳は商品の仕入とその代金、そして消費税を記録するものです。

借方金額貸方金額
仕入10,000円現金11,000円
仮払消費税1,000円

「仕入」は、購入した商品のコストを記録します。この場合、商品代金は10,000円です。「仮払消費税」は、仕入にかかる消費税額を記録します。この例では、消費税額は1,000円です。「現金」は、取引先に対する支払いを示します。商品の代金10,000円と消費税1,000円を合わせた11,000円を現金として計上します。この仕訳により、商品の仕入とそれに伴う消費税、および支払い額が正確に記録されます。

返品時

次に、仕入れた商品を返品する際の仕訳です。この場合、仕入時の仕訳を逆仕訳する形で行います。

借方金額貸方金額
現金11,000円仕入10,000円
仮払消費税1,000円

「現金」は、取引先に対する支払いを取り消すものです。これにより、仕入時に計上した現金11,000円が取り消されます。「仕入」は、返品された商品のコストを減少させます。これにより、仕入時に計上した商品代金10,000円が取り消されます。「仮払消費税」は、仕入にかかる消費税額を減少させます。これにより、仕入時に計上した消費税1,000円が取り消されます。この仕訳により、商品の返品とそれに伴う消費税が正確に記録されます。

勘定科目は適切に使い分ける

上記で説明したように、同じように自社が返金を受ける場合、あるいは、自社が返金を行う場合でも、返金の理由や状況によって、適切な勘定科目を選定することが必要です。 たとえば、 販売時の過剰入金の場合は「仮受金」を使用し、 前払い金の返金の場合は「前渡金」を使用します。 年末調整による所得税の返金(還付)では「預り金」を使用します。

このように、返金が発生した理由に応じて勘定科目を適切に使い分けることで、適切な会計処理を実現できます。

まとめ

返金が発生するケースは多岐にわたり、その処理には正確な勘定科目の選定と仕訳が求められます。取引がキャンセルされた場合や商品の返品、税金の過払いなど、それぞれの状況に応じた適切な処理が必要です。

返金処理の際には、期をまたぐ場合や還付金の処理など、特に注意すべきポイントを押さえ、適切な対応を行いましょう。正確な仕訳と適切な勘定科目の使用は、特に、適切な損益計算を行ううえで重要です。経理担当者として、返金処理の重要性を理解し、日々の業務に活かしていきましょう。

返金の勘定項目に関するQ&A

返金に関する会計処理は複雑で、多くの経理担当者が疑問を持つことがあります。ここでは、返金の勘定項目に関するよくある質問とその回答をまとめました。適切な会計処理を行うために、ぜひ参考にしてください。

Q1. 過払い金が返金される場合の勘定科目は?

返金処理には大きく分けて2種類あります。過払い金額を返金してもらう方法と、次回の取引で過払い分を相殺する方法です。それぞれの処理方法と具体的な仕訳について解説します。

過払い金額を返金してもらう場合

過払い金が発生した場合、その金額を返金してもらう方法です。以下の具体例に基づいて仕訳を解説します。

取引先に対して誤って多く支払った場合、最初に仮払金として過払い金額を記録し、返金時にその仮払金を取り消す形で処理します。

・仕入時
借方金額貸方金額
仕入10,000円買掛金10,000円
・代金支払時
借方金額貸方金額
買掛金10,000円普通預金11,000円
仮払金1,000円
・返金時
借方金額貸方金額
普通預金1,000円仮払金1,000円

以下のケースでも、基本となる会計処理は同様ですが、調整の際に利用する勘定科目が異なるので注意が必要です。

    • 仕入のキャンセルや返品のケース
「仕入」で処理します。仕入れた商品をキャンセルや返品した場合、その金額を仕入勘定で調整します。仕入時の仕訳を逆仕訳することで、キャンセルや返品による返金を処理します。
    • 借入金の利息の過払いのケース
「支払利息」で処理します。銀行などに対して利息を過剰に支払った場合、その過払い分を支払利息勘定で調整します。
    • 家賃の過払いのケース
「地代家賃」で処理します。賃貸物件の家賃を過剰に支払った場合、その過払い分を地代家賃勘定で調整します。
    • 社会保険料の過払いのケース
「未収金」で処理します。社会保険料を過剰に支払った場合、その過払い分を未収金として記録します。
    • 給与の過払いのケース
「仮払金」で処理します。従業員に対して給与を過剰に支払った場合、その過払い分を仮払金として記録します。
    • 税金の過払いのケース
「仮払金」で処理します。税務署に対して税金を過剰に支払った場合、その過払い分を事業主借勘定で調整します。

次回の取引で過払い分を相殺する場合

次に、次回の取引で過払い分を相殺する方法について、具体的な仕訳を示します。

仕入時

仕入時は、通常時と同様に仕訳を行います。

借方金額貸方金額
仕入10,000円買掛金10,000円
・代金支払時

過払い分を「前払金」や「前渡金」として処理し、次回の仕入時にその金額を相殺します。

借方金額貸方金額
買掛金10,000円普通預金11,000円
前払金1,000円
・次回仕入時(相殺時)

次回の取引で前払金を相殺します。

借方金額貸方金額
仕入12,000円買掛金11,000円
前払金1,000円

次回の商品仕入時に、仕入金額が12,000円の場合です。過去に支払った前払金1,000円を相殺するため、「前払金」を貸方に計上し、残りの11,000円を「買掛金」として計上します。これにより、12,000円の仕入に対する支払い義務が適切に記録されます。

Q2. 会費などの返金の勘定科目は?

会費などの返金が発生する場合、その返金に適した勘定科目を使用します。返金のタイミングや返金対象によって、適切な勘定科目を選定することが重要です。

当期に支払った会費の返金

当期に支払った会費に対する返金が発生した場合、その返金は同じ会計期間内で処理されるため、元の会費勘定に戻します。

・会費支払時
借方金額貸方金額
諸会費100,000円普通預金100,000円
・当期中の会費返金時
借方金額貸方金額
普通預金100,000円諸会費100,000円

会費を支払った年度内に返金が発生した場合、その返金分を「会費」勘定で調整します。これにより、支出した会費が減少し、返金が適切に処理されます。

過年度に支払った会費の返金

過去の会計期間に支払った会費に対する返金が発生した場合、その返金分は「雑収入」勘定で処理します。

・会費支払時
借方金額貸方金額
諸会費100,000円普通預金100,000円
・過年度分の会費を当期に回収時
借方金額貸方金額
普通預金100,000円雑収入100,000円

過年度の会費に関しては、通常、決算を終え、帳簿の締め切りが完了しているため、直接会費支払時の仕訳を修正することができません。そのため、逆仕訳によって、取引を修正することができない状態です。この場合、返金分は「雑収入」勘定で処理します。これによって、過去の支出に対する返金が適切に会計処理され、当期の収入として記録されます。

前払金として処理されていた会費の返金

複数年度にわたる会費を前払金として処理していた場合、その返金分は「前払金」勘定で処理します。以下では、2年分の会費を前期中に納めたものの、当期に1年分の返金を受けた場合を説明します。

・会費支払時(2年分前払い)

まず、前期中に2年分の会費を納めた場合、その費用はその期中の費用ではないので、費用とはせず、「前払金」勘定で処理します。

借方金額貸方金額
前払金100,000円普通預金100,000円
・会費支払時(1年分への振替え)

実際に会費が必要な期間となった時点で、前払金を諸会費勘定に振り替えます。

借方金額貸方金額
諸会費50,000円前払金50,000円
・会費支払時(振替え時に1年分が返金された場合)

会費支払時に、2年分支払った会費のうち、1年分の返金を受けた場合は、以下のような仕訳を行います。

借方金額貸方金額
普通預金50,000円前払金50,000円

Q3. 還付金の勘定科目は?

還付金の勘定科目は、還付が発生する状況や性質によって適切に選択する必要があります。以下にそれぞれの勘定科目について解説します。

【未収入金(未収法人税等・未収消費税等など)】

還付金が発生するケースの一つに、中間納付額や見込納付額が確定納付額より多かった場合があります。また、仮受消費税より仮払消費税が多い場合も含まれます。こうした場合は「未収入金」の勘定科目を使用します。「未収入金」は、本業の営業活動以外で回収すべき債権に対して用いる勘定科目です。具体的には「未収法人税等」や「未収消費税等」として細かく設定することも可能です。

【雑収入】

還付金を「未収入金」として計上していない場合や、還付加算金を受け取った際には「雑収入」の勘定科目を使用します。「雑収入」は、営業活動以外で生じたその他の特定の勘定科目に当てはまらない収入を処理する際に用いられます。これには、たとえば、予期しない収入や非本業からの収入が含まれます。

【仮払金】

簿記における仮払金(かりばらいきん)とは、企業や個人が将来の特定の支出に充てるために一時的に支払った金額を記録するための勘定科目です。仮払金は、具体的な使用目的が決定するまでの間、一時的に資産として処理されます。

【租税公課】【仮払金】など

税金を誤って二重に納付してしまった場合など、納付と還付のタイミングが同一期中内であれば、支払時に使用した勘定科目で反対仕訳を行うことが可能です。たとえば、納付時に「租税公課」を用いた場合、還付金の仕訳も貸方に「租税公課」を用いて処理します。納付時点で過払いが判明しており「仮払金」で処理した場合は、還付金も貸方に「仮払金」を用いて仕訳します。

なお、「租税公課」などで経費計上した後、期をまたいで還付された場合は「雑収入」を用いて処理します。

Q4. 期をまたぐ返金の仕訳処理はどうする?

前期の商品を販売したものの、その商品が翌期に返品されてきた場合は、以下のような仕訳を行います。

・販売時の仕訳
借方金額貸方金額
普通預金100,000円売上100,000円
・返品時の仕訳
借方金額貸方金額
売上戻り or 売上100,000円普通預金100,000円

Q5.「一部返金」のように返金分を分ける場合の仕訳処理は?

一部返金の仕訳処理は、全額返金とは異なり、返金対象の一部のみが返金される場合に適用されます。これには、商品の一部が不良品だった場合や、一部サービスのキャンセルが発生した場合などが含まれます。一部返金の処理では、返金額に応じた適切な勘定科目を使用し、正確な仕訳を行うことが求められます。ここでは、具体的なケースとその仕訳例について解説します。

ケース1: 商品の一部が不良品だった場合

商品の一部が不良品であり、その部分について返金が行われる場合、返金額に応じて「売上値引」または「仕入値引」の勘定科目を使用します。

たとえば、100,000円の商品を販売し、そのうち10,000円分が不良品だったため返金する場合の仕訳は以下のようになります。

・販売時
借方金額貸方金額
普通預金100,000円売上100,000円
・一部返金時
借方金額貸方金額
売上値引10,000円普通預金10,000円

このように、売上高から値引きを行い、返金額を適切に処理します。

ケース2: 返品による一部返金

商品の一部が返品され、その部分について返金が行われる場合も同様の処理を行います。たとえば、200,000円の商品を販売し、そのうち50,000円分が返品された場合の仕訳は以下の通りです。

・サービス提供時
借方金額貸方金額
普通預金200,000円売上200,000円
・一部返金時
借方金額貸方金額
売上値引50,000円普通預金50,000円

この場合も、キャンセルされた部分の売上を値引きとして処理し、返金額を反映させます。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 宮川 真一

税理士 宮川 真一さま

税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表 岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。 現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。 また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事。 【保有資格】 税理士、CFP®

税理士法人みらいサクセスパートナーズ