工事発注書の無料エクセルテンプレート|書き方や作成のポイントを解説
工事発注書は、工事の発注者(依頼主)が施工業者に対して工事の依頼内容を正式に伝える文書です。工事内容や施工場所、工期、取引金額などを正確に記載し、双方の認識のズレを防ぐために作成します。
本記事では、工事発注書の概要や注文請書との違い、必要項目の書き方などを解説します。また、工事発注書を簡単に作成できる無料のエクセルテンプレートもダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
工事発注書の無料エクセルテンプレート
工事発注書は、工事の名称や工期、場所、発注明細など、基本的な情報に誤りがないよう十分に確認して作成しましょう。依頼する工事内容や使用する資材の仕様、数量、単価などはできる限り具体的に記載します。記載ミスや曖昧な内容はトラブルの原因になるため、注意してください。
テンプレートを活用すれば、必要項目を漏らさず、ビジネスマナーにも沿った工事発注書を作成できます。
ここでは、工事発注書を簡単に作成できるエクセル形式の無料テンプレートをご用意しました。必要項目を一通り揃えているため、作成の手間を大幅に軽減できます。ぜひご活用ください。

今すぐ使える!無料ダウンロード
工事発注書とは?
工事発注書とは、発注者が工事の施工を請け負う業者に対して、正式に工事の実施を依頼する文書です。ここでは、工事発注書について説明するとともに、注文請書との違いもみていきましょう。
工事発注書の概要
工事発注書には工事の内容や金額、期間、支払条件などの基本的な契約事項が明記されており、業者との合意を文書で確認することを目的として作成されます。
口頭での依頼ではトラブルが発生するおそれがあるため、工事発注書を交わすことで責任の所在や業務範囲を明確にし、取引の透明性と信頼性を高めることが可能です。
工事発注書は法的な作成義務はありませんが、後々のトラブルを避けるためにも作成が推奨されます。
ただし、下請法(下請代金支払遅延等防止法)で規定されている取引に該当する場合は工事発注書の作成義務があり、必ず作成しなければなりません。
なお、発注書は契約書の補助的役割を果たす場合もあり、契約書を別途締結しない場合は、発注書そのものが契約書の代わりとして機能します。
注文請書との違い
工事発注書と注文請書はいずれも工事に関連する書類ですが、発行者と役割が異なります。
工事発注書は発注者(工事を依頼する側)が工事の実施を正式に依頼するための書類であるのに対し、注文請書は工事発注書を受け取った受注者が作成する文書です。工事の発注内容を確認し、工事を引き受ける意思を示すために作成します。
工事発注書は契約の「申込み」、注文請書は契約の「承諾」という位置づけになるものです。
文書のやり取りを通じて、発注者と受注者の双方が工事の内容や契約条件を両者が共有することで、認識のズレによるトラブルを未然に防止できます。
工事発注書の書き方
工事発注書の作成では、必要な情報を正確かつ明確に記載することが求められます。記載漏れや曖昧な表現があると、契約上のトラブルや認識の相違につながるおそれがあります。
ここでは、項目ごとに記載のポイントや注意点をみていきましょう。

①発注日
発注日とは、発注者が受注業者に対して工事の実施を正式に依頼した日を指します。見積書の受領やさまざまな交渉を経て契約内容に双方が合意し、発注者が「この内容で工事を依頼する」と意思表示を行った日です。
発注日は、契約の効力が発生する起点となる場合もあるため、事実に基づいて正確に記載するようにしてください。発注書の記載日と実際の発注日が異なると、契約トラブルの原因になるおそれがあります。
特に契約書が別途作成されない場合、発注書がそのまま契約書の役割を果たすことになるため、日付の取り扱いには十分注意が必要です。
②発注者の情報
発注者の情報として、事業者名(法人の場合は登記上の正式名称)、所在地(郵便番号を含む住所)、代表電話番号を記載します。スムーズな連絡対応を可能にするため、部署名や担当者名も記載しておきましょう。
電話番号のほか、FAX番号やメールアドレスなどの連絡手段も併せて記載しておくと、確認事項の連絡や問い合わせが必要な際に役立ちます。
特に工事発注では、仕様変更や納期の調整などで迅速なやり取りが必要になることがあるため、連絡手段の充実はトラブル防止にもつながります。また、担当者が不在の場合に備え、代表窓口や共通メールアドレスも併記しておくと安心です。
③受注者の情報
受注者の情報として、工事を請け負う業者の名称(法人名または屋号)、所在地を明記します。法人名や屋号は略称や通称ではなく、登記簿に記載されている正式名称を使用してください。取引実務を担当する窓口担当者がいる場合は、その氏名も追記しておくとよいでしょう。
業者が複数の拠点を持つ場合には、実際に業務を担当する営業所や支店の情報も併せて明記することで、後々のやり取りを円滑に進めることができます。
④工事内容
発注する工事の内容については、工事名・施工場所・工期(開始日および終了予定日)などの基本情報を正確に記載します。加えて、必要に応じて施工範囲や工種の概要、関連する施設名や敷地条件なども明示すると、受注者との認識のズレを防ぐことができます。
工事名は、契約書や見積書などと表記を統一することが重要です。大規模工事の場合は、工程表や図面の添付も検討しましょう。
特に複数の工種が関わる場合や他工事との調整が必要な場合には、詳細な工程や段取りを示す資料の添付が有効です。
また、施工場所に特有の制約(近隣との距離、時間制限、搬入経路など)がある場合は、事前にその内容を記載しておくと、トラブルの防止につながります。こうした情報は、後の変更や追加工事の判断材料としても役立ちます。
⑤支払条件
支払条件の欄には、支払方法(現金払い・銀行振込・手形など)や支払期限(例:検収完了後◯日以内、請求書受領後◯営業日以内など)を明確に記載します。
また、分割払いや前払い、出来高払いなど特別な支払形態を採用する場合は、その内容や時期についても具体的に記載しておくと、トラブル防止に役立つでしょう。
銀行振込の場合は、支払先の銀行名・支店名・口座番号・名義人など、正確な振込先情報もあわせて記載すると、確認作業がスムーズになります。さらに、支払遅延時の対応や利息に関する取り決めがある場合も、明示しておくとよいでしょう。
⑥発注明細
発注明細として、依頼する工事の詳細、使用する材料の仕様や数量、単価などを記載します。数量や単価の記入ミスがあると支払金額のズレやトラブルに繋がるため、正確に記載しましょう。
なお、発注内容に変更が生じた際は、工事開始前に契約変更手続きが必要です。施工業者が着工してから工事内容を変えると、建設業法違反になるおそれもあるため注意してください。
変更手続きは、発注者・受注者双方の書面による合意を基本とし、追加費用や工期の延長についても明文化しておくとよいでしょう。
⑦取引金額
工事の見積金額は、税抜金額・消費税額・税込(合計)金額をそれぞれ明確に区分して記載します。税額の内訳がわかりやすくなり、発注者・受注者双方で金額に対する認識のズレを防止できます。また、会計処理や契約書類との整合性を確保するうえでも有効です。
工事内容が複数ある場合は、項目ごとに金額を記載した一覧表を添付するのもよいでしょう。
また、金額に変更が生じた場合の対応方法や、追加工事に関する取扱いをあらかじめ記載しておくと、トラブル回避にもつながります。
⑧備考
特記事項や注意点がある場合は、備考欄にまとめて記載します。備考欄に記載することで、工事内容や条件についての重要なポイントを明確に伝えられ、誤解やトラブルの防止に役立ちます。
備考欄には、工事の進行に関する特別な指示や、契約条件に関する追加の注意点、納期の変更、支払条件の詳細、現場での安全対策や環境への配慮など、通常の明細には含まれない重要な情報を記載することが一般的です。
また、連絡先の変更や緊急時の対応方法なども追記すると、スムーズなコミュニケーションにつながります。
工事発注書を作成・保存する際のポイント
工事発注書には、保存義務や収入印紙の貼付、基本契約書がない場合の添付書類など、作成・保存の際に注意すべきポイントがあります。
それぞれ詳しくみていきましょう。
一定期間の保存義務がある
工事発注書は、法人税法上「帳簿書類」に該当するため、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が義務付けられています。
個人事業主も同様に保存義務があり、青色申告・白色申告を問わず5年間の保存が必要です。
なお、青色申告法人で欠損金の繰越控除を適用する場合など、一定の条件下では保存期間が10年間に延びることもあるため、注意が必要です。
保存方法は、紙で保存する場合と電子データで保存する場合とで異なります。
紙で保存する場合は、原本を汚損・紛失しないようにファイリングし、保管期間中は閲覧可能な状態で保管してください。
一方、電子データで保存する場合、「電子帳簿保存法」の定める以下の要件を満たす必要があります。
- 真実性の確保
- 可視性の確保
「真実性の確保」は保存したデータが「削除・改ざんされていないこと」を証明できる状態にしておくことで、主に次のような対策が必要です。
- タイムスタンプを付与する
- 修正履歴が残るシステムで保存する
- 誰が・いつ・どのように保存したかを記録に残す
「可視性の確保」は、 保存したデータを「すぐに見つけて・すぐに表示できる」ようにすることで、次のような対策が求められます。
- 「取引日」「金額」「取引先」などで検索できる仕組みにする
- パソコンの画面上ですぐ表示できるようにしておく
- 必要に応じてプリントアウトできるようにしておく
紙と電子データ、いずれの方法であっても、税務調査などの際に速やかに提示できるよう、適切に管理しておくことが大切です。
参考:e-GOV法令検索「法人税法」
参考:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
参考:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
収入印紙が必要なケースがある
印紙税法では一定の文書に印紙税を課しており、課税文書に該当する場合は収入印紙の貼付が必要です。
課税文書は同法で第1号文書から第20号文書までの20種類に分類されており、これらに該当しない場合は不課税文書になります。
課税文書に該当する場合でも、文書に記載された取引金額が1万円未満の場合は非課税文書として収入印紙の貼付は必要ありません。
工事発注書が一方的な発注書で、相手方の署名・押印がない場合や、契約書を別途作成しており、発注書がその一部にすぎない場合は課税文書にあたらず、原則として収入印紙の貼付は不要です。
ただし、以下のケースでは、例外的に収入印紙が必要になります。
- 工事発注書だけで請負契約が成立する場合
- 見積書に対して承諾の意思表示をする場合
- 担当者双方の署名または押印がされている場合
印紙税額は工事発注書に記載された契約金額により変わるため、金額を確認し、適切な額の収入印紙を貼付しましょう。
参考:e-GOV法令検索「印紙税法」
参考:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
基本契約書がない場合「契約約款」の添付が必要となる
取引先と基本契約書を締結していない場合、工事発注書には「契約約款(取引条件などを定めた書面)」を必ず添付する必要があります。
契約約款には工事発注書に記載のない項目や、以下のような重要項目を記載します。
- 契約の成立条件
- 支払条件(支払期限・方法など)
- 納期遅延や不良品の対応方法
- 損害賠償・免責事項
- 契約解除の条件
これらは発注書だけでは網羅できないため、取引条件を明確にする目的で、別紙の契約約款として添付するのが一般的です。
基本契約書をあらかじめ締結している場合は、発注書に「本発注書に記載のない事項については、基本契約書の内容に従う」といった文言を記載することで、約款の添付は不要になります。
契約約款が複数ページにわたる場合は、各ページに割印(契印)を押すなどして信頼性を確保しましょう。
まとめ
工事発注書は、発注者が工事業者に対して工事内容・金額・工期などを明確に伝えるための書類です。双方の認識を共有し、責任の所在や工事の範囲を明確にするためにも作成が推奨されます。
収入印紙や契約約款が必要になるケースがあり、作成後は一定期間の保存期間があるため注意が必要です。
作成の際は、必要項目を漏れなく、正確に記載することが大切です。無料のエクセルテンプレートを使えば簡単に作成できるため、ぜひご活用ください。














