工事台帳の無料エクセルテンプレート|書き方や記載項目を解説

各工事の原価管理を適切に行い、収支や利益率を正しく把握するために欠かせないのが「工事台帳」です。建設業やリフォーム業では原価が変動しやすく、原価計算が複雑になる傾向があります。そのため、原価を適切に把握することが重要です。

本記事では、すぐに使える「工事台帳無料エクセルテンプレート」をご紹介しつつ、工事台帳の使用法や使用目的、記載項目についても詳しく解説します。工事の原価管理の精度向上や業務効率化を実現したい方は、ぜひ本記事の内容とテンプレートを参考にしてください。

工事台帳の無料エクセルテンプレート

工事台帳は、建設業法によって作成が義務付けられている書類の1つです。工事台帳を作成することで、各工事の収支と利益率を把握できます。

今回は、ビジネスシーンですぐに活用できる「工事台帳の無料エクセルテンプレート」をご用意しました。工事ごとの収支管理や原価の見える化に活用でき、これから工事台帳の運用を始めたい方におすすめです。

Excel形式のファイルであるため、入力や印刷が簡単に行えます。テンプレートの活用によって、工事台帳をゼロから作成する必要がなくなり、作業時間の短縮にもつながるでしょう。どなたでも無料でご利用いただけますので、ぜひ、日々の業務効率化にお役立てください。

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工事台帳エクセルテンプレートの使用法

工事の進捗やコストを一元管理するためにも、テンプレートの活用が有効です。エクセルテンプレートを活用した工事台帳は、以下の手順で使用しましょう。使い方を把握することで、誰でも簡単に工事台帳の運用を始められるでしょう。

  1. 基本情報の入力
  2. 売上情報の入力
  3. 粗利と予算の自動計算
  4. 原価情報の入力

ここでは、工事台帳の使用方法について解説します。

1.基本情報の入力

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まず、工事に関する基本的な情報を入力します。あとで台帳を確認した際、どの工事の記録なのかをすぐに識別できるようにするためです。入力項目は以下のとおりです。

  • 工事番号
  • 工事名称
  • 現場住所
  • 発注者名
  • 工期
  • 契約年月日
  • 引渡年月日
  • 担当者
  • 責任者
  • 備考

これらの情報をあらかじめ記載しておくことで、工事の概要をすばやく把握できるようになります。

2.売上情報の入力

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次に、売上情報の入力を行います。以下の内容を入力しましょう。

  • 売上の計上日
  • 売上金額
  • 入金日

上記の項目を入力すると、消費税と税込金額が自動計算されます。売上情報の入力では、売上の計上日や金額など、収支に関わる基本情報を正確に記録することが大切です。

3.粗利と予算の自動計算

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売上情報を入力すると、以下の項目が自動計算されます

  • 売上金額
  • 売上原価
  • 粗利益
  • 粗利率
  • 実行予算額
  • 実行予算率

売上データの反映により、工事ごとの収支状況や利益率が把握できるようになります。

4.原価情報の入力

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最後に、テンプレートの下部にある原価に関する情報を入力しましょう。原価の科目名とその実行予算額を記入します。

入力する科目は、以下のとおりです。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

これにより、各費用項目の進捗管理やコストの使い過ぎを事前に把握できるようになります。原価科目については、この後のセクションで詳しく解説します。

工事台帳の記載項目

工事台帳の原価情報として、「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の4つの項目を記載しましょう。現場でかかるコストを正確に把握するためにも、それぞれの内容をしっかりと管理することが欠かせません。それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。

材料費

工事台帳における「材料費」とは、工事現場で使用する資材を調達する際に発生する費用全般を指します。材料そのものの価格だけでなく、保護費や消耗品費のほか、配送や運搬、保管などにかかるコストも含まれます

具体的にはコンクリートや鉄筋、木材などの建築資材に加えて、ヘルメットや手袋といった消耗品の費用も対象です。

材料費は、購入した時点では工事台帳に記載せず、実際に工事に使用した際に原価として工事台帳に記載するのが原則です。しかし、高額なもの以外は購入した材料をそのまま材料費として計上することが一般的でしょう。

ただし、前期に余った材料を使用した場合は、材料費として計上できない点に注意しましょう。

労務費

「労務費」とは、建設作業員に支払う給与や手当など、現場で働く人材に対して支払う賃金全般のことです。基本給に加えて残業代・交通費・出張手当・法定福利費なども含まれるほか、作業現場への通勤にかかる費用や、安全手当といった名目で支給される各種手当も該当します。

あくまでも現場で工事に関わる者に対する費用であり、工事に直接あたらない現場監督者や事務員などは、対象にはならないことに注意しましょう。後者の人員に対して支払う費用は労務費ではなく、「人件費」として計上します。

工事台帳で把握する必要があるのは、あくまでも工事にかかった費用のみであるため、労務費という項目を設けています。

外注費

「外注費」とは、自社で雇用していない協力会社や外注業者に対して支払う工事関連費用のことです。たとえば、専門工事を請け負う協力会社や一人親方などに対する支払いが該当します。

外注費は工事の規模が大きくなるほど比率が高くなる傾向があるため、正確な管理が不可欠です。

経費

材料費・労務費・外注費のいずれにも当てはまらない工事関連の費用が、経費です。たとえば、重機のリース料や現場の電気・水道代、事務所運営にかかる人件費や備品購入費などが含まれるでしょう。

経費は一見細かい費用に思えますが、積み重なると工事原価に大きく影響します。工事台帳に正しく記載することで、コスト管理の精度向上につながるため、無駄な支出の見直しや利益率の改善に寄与します。

なお、経費として計上するのは、工事現場で使用した費用のみです。現場費用でかかった費用は、「一般管理費」として区別しましょう。

工事台帳とは

工事台帳とは、建設業やリフォーム業などにおいて、原価を適切に把握することを目的に作成する管理表のことです。

これらの施工業務では、資材価格が変動したり追加工事が発生したりすることがあるため、原価計算が一般の会計よりも複雑になる傾向があります。そのため、工事ごとの費用を正しく記録しておくことが重要です。

工事台帳を作成すれば、材料費・人件費・外注費などの内訳を整理でき、進行中の工事でも収支のバランスを把握しやすくなります。その結果、予期せぬコスト増を防ぎ、利益を確保するための判断材料として活用できます。

工事台帳を使用する目的

工事台帳を使用する目的は、主に以下の3点です。

  • 各工事の収支と利益率を把握するため
  • 経営事項審査で提出するため
  • 完成工事原価や未成工事支出金を計算するため

工事台帳は、日々の業務管理に役立つだけでなく、公共工事の受注の際に提出する重要な資料です。正確な情報を蓄積しておくことで、工事ごとの改善点の把握や案件受注の際の信頼性の獲得にもつながるでしょう。

それぞれの内容を解説します。

各工事の収支と利益率を把握するため

工事台帳を活用する大きな目的の1つとして、各工事の収支と利益率を把握することが挙げられるでしょう。工事ごとの費用や売上を台帳に記録していくことで、実際にどれだけの利益が出ているのかを数値で把握できます。

たとえば、材料費や外注費などが当初の見積もりを超過していることを早期に把握できれば、すぐに対策を講じられるでしょう。このように、工事台帳を通じて原価管理を正確に行うことで、感覚頼りの見積もり作成を避け、安定した利益確保につなげられる可能性が高まります

一方、工事台帳を作成していないと、不適切な人員管理や工程管理を招いたり、原価を下回る受注額で工事を請け負ったりしてしまうといったリスクにつながりかねません。

経営事項審査で提出するため

工事台帳は、公共工事に参加するために必要な「経営事項審査」の書類として活用されます。経営事項審査とは、国や自治体が工事を発注する際、業者の経営状況を客観的に評価し、発注資格の有無を判定する審査のことです。その際、各工事の原価や利益が記録された工事台帳は、経営の健全性を裏付ける重要な資料となります

事前に整った台帳を用意しておけば、審査に向けた書類準備がスムーズに進み、公共工事の受注チャンスを逃さずに済むでしょう。

完成工事原価や未成工事支出金を計算するため

「完成工事原価」や「未成工事支出金」を正確に算出することも、工事台帳を作成する大きな目的の1つです。

完成工事原価とは、完了した工事に実際にかかった費用の合計を指し、材料費・労務費・外注費・経費の4つで構成されます。また、未成工事支出金は、まだ完了していない工事に関する費用です。完成工事原価と同じく、4項目から構成されています。

完成工事原価の正確な記録は完成工事原価や純利益の予測に、未成工事支出金の記録は、決算時に貸借対照表へ計上する資産額の予測に役立ちます

まとめ

工事台帳は、建設現場ごとの費用や進捗を「見える化」し、原価管理を支える重要な管理表です。材料費・労務費・外注費・経費といった各種原価の情報を正確に記録しておくことで、各工事の収支バランスや利益率を把握しやすくなります。

さらに、経営事項審査において、経営の健全性を裏付ける重要な資料となるほか、完成工事原価や未成工事支出金を正確に算出するためにも欠かせません。工事台帳に蓄積された日々の記録が信頼できる根拠として機能するため、日常的に台帳を記録・管理する習慣を持つことが重要です。

記事内で紹介しているエクセルテンプレートを活用すれば、手間のかかる原価管理もスムーズに行えます。どなたでも無料でご利用いただけるので、ぜひこのテンプレートを活用し、原価管理の精度向上や業務効率化に役立ててください。

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監修 安田亮

Author Yasuda

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。 大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。 連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。