資産除去債務
資産除去債務の英語表記
asset retirement obligation
資産除去債務勘定の定義・意味・意義
資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当確有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務およびそれに準ずるものをいう。
この場合の準ずるものには、有形固定資産を除去する際に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別な方法で除去するという義務も含まれている。なお、除去が企業の自発的な計画のみによって行われる場合は、法律上の義務に該当しないため、資産除去は要求されない。
資産除去債務は、発生したときに負債として計上する。このとき、当該負債の計上額と同額を除去費用として、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える。資産計上された資産除去義務に対応する費用は、減価償却を通じて各期に費用配分される。
資産除去債務勘定の決算書における位置づけ等
資産除去債務の財務諸表における表示区分と表示科目(原則)
貸借対照表>負債>固定負債>資産除去債務
資産除去債務の財務諸表における表示区分と表示科目(貸借対照表日後1年以内に資産除去債務の履行が見込まれる場合)
貸借対照表>負債>流動負債>資産除去債務
資産除去債務勘定の範囲・具体例
具体例
建物、構築物、機械装置
車両・船舶・航空機
土地、建設仮勘定、リース、資産など
基本的に「有形固定資産」の勘定科目で資産除去債務の対象にならない科目はない。
事例
土壌汚染・アスベスト・PCBなどの有害物質の除去が法令によって定められているときに該当する。
法的義務を含むので、法令の把握もれがないように注意
資産除去債務の会計・簿記・経理上の取り扱い
取引と仕訳の具体例・事例
-取引 物件の内装工事を資産除去債務に計上する(取得時)
-仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
建物 | 5,850 | 未払金 | 5,000 |
資産除去債務 | 850 |
-取引 物件の内装工事を資産除去債務に計上する(決算時)
-仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
利息費用 | 42 | 資産除去債務 | 42 |
-取引 物件の内装工事を資産除去債務に計上する(除去時)
-仕訳
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
資産除去債務 | 1,000 | 普通預金 | 1,000 |
資産除去債務の税務・税法・税制上の取り扱い
測定方法
発生した時点で、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積もり、割引後の金額(割引価値)で算定する。将来キャッシュ・フローには、処分に至るまでの支出(たとえば、保管や管理のための支出)も含まれる点に留意する。また、現在価値を算出するための割引率には、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率が用いられる。
義務としなければならない代表的な法律
- 土地汚染対策法(2003年2月施行/2010年4月改正)
土地の特定有害物質による汚染の状況の把握と汚染による人の健康に係る被害の防止に関する処置 - PCB特別処置法(2002年7月施行)
PCBの保管状況の報告と処理の義務付け - 石綿障害予防規則(2006年2月施行)
石綿吹きつけの可能性のある建物の調査と適切な除去と封じ込め - フロン回収破壊法(2003年4月施行/2007年6月改正)
業務用大型冷凍空調機器等の廃棄の場合のフロン類の回収・破壊の義務付け等 - ダイオキシン類対策特別処置法(2000年1月施行)
ダイオキシンによる大気及び水質の汚染防止と除去の義務付け - 建設リサイクル法(2003年5月施行)
建築物等の解体の際の分別解体及び再資源化等の義務付け
適用される法人
「資産除去債務に関する会計基準」は平成22年4月1日以降開始する事業年度から適用されているが、これらは大企業向けの会計基準であり、現段階では中小企業には義務付けされていない。そのため、任意適用になっている。
税法上
費用の認識基準として債務確定基準があり、債務として確定した費用について損金算入が認められる。
資産除去債務でよくあるQ&A
年度末までに債務の把握が出来ません。どうすればよいでしょうか?
会社自身で合理的な算出が出来ない場合には、外部機関を利用して算出することも認められています。
また、監査法人や監査役は、有効な内部統制が構築されていることを前提に算出プロセスの合理性を確認するため、実地調査の義務付けまでは行われておりません。なお、債務の把握が出来ない合理的な理由があるときは、その旨を注記することで計上を省略することも可能です。
資産除去債務を適用外の中小企業が行うメリットはありますか?
特殊な産業を担っている場合などであればメリットはありますが、その他においては特段メリットがありません。将来の償却において費用を見積もることができる点においては、メリット(莫大な費用が一気に計上される心配がなくなる)が考えられます。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。