【公認会計士インタビュー】企業経理とYouTuberを兼任!財務のスペシャリストに聞く経理業務の魅力とは
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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より
白井敬祐先生プロフィール
公認会計士。
2011 年公認会計士試験合格後、清和監査法人で監査業務に従事した後、 新日本有限責任監査法人及び有限責任監査法人トーマツでIFRSアドバイザリー業務や研修講師業務に従事。
その後、株式会社リクルートホールディングスで経理部に所属し、 主に連結決算業務、開示資料作成業務や初年度のIFRS有価証券報告書作成リーダーを担当。
そして、2021 年 7 月に独立開業し、現在は CPA 会計学院にて会計士講座(財務会計理論)や CPA ラーニングの講師を務め、 近畿大学経営学部の非常勤講師として学生向けに会計士講座を開講。
会計を楽しく学べる『公認会計士 YouTuber くろいちゃんねる』を運営。
著書:「経理になった君たちへ」
会計の道を志すきっかけは恩師の言葉
先生が会計士を志すきっかけは何だったのでしょうか。就活に悩んでいた大学三回生の時にゼミの先生にいただいた「勉強が仕事に直結する仕事っていうのは世の中に3つだけ。それが医者と弁護士と会計士なんだ。」という言葉がきっかけでした。勉強さえしていれば社会で活躍できる。当時コミュニケーション能力に自信のない少年だった自分が、社会でコミュニケーションが得意な人間に勝つには、これしかないと思いました。
コミュニケーションが苦手というお話は意外ですね。コミュニケーション能力が磨かれたのは社会に出てからでしたね。高校生までさかのぼると、進学校に入学したものの、頭ではなく肉体で勝負しようと思い防衛大学校を志すようになりました。勉強は得意だったので一次の筆記試験は通るものの二次試験の面接で落とされてしまうくらいコミュニケーションについては苦手でした。
大学生活は勉強一色だったのでしょうか。実は大学もあまり勉強をしていなくて、アイスホッケー部に所属して部活ばかりやっていました。大学に入ったら部活で熱い体験をしたいと思っていました。サッカーやバスケといった多くの人が経験しているスポーツと違い、アイスホッケーであれば大学からでも活躍できるかなと考えて実際レギュラーをとることができました。今思えばみんなと少し違うことをして勝っていこうという性格は昔からあったのかもしれません。
公認会計士資格取得の一番のつらさは精神面
公認会計士の勉強を進めるにあたって、最もつらかったことを教えてください。なにより精神的につらいと感じていました。大学を卒業してから資格取得に向けて勉強をしていたので、周囲は卒業してバリバリ働いている人も多く、出世したとか、ボーナスがでたという話を聞きながら、自分は親のスネをかじりながら勉強だけしている肩身のせまさを感じていました。ただ、その悔しい思いを乗り越えてやるというモチベーションにもつながっていましたね。負けて地元に帰れないと思うくらい負けず嫌いだったので、会計士の資格を持ってない未来の自分が恐ろしく感じてしまったんです。そうして自分を奮い立たせ、最後までやりきることができました。
公認会計士試験は範囲も広く大変なイメージがありますが勉強面でも苦労されたことはありますか。とにかく量が多かったです。人生で一番勉強したと思います。勉強を始める前は正直なめていましたが、公認会計士が扱う範囲は膨大です。専門学校に入り勉強を始めたのですが、3か月もすると受講生は半分になるくらい過酷な試験でした。
当時は覚えやすいテキストもなく、どう効率よくインプットをするかということに注力をしていました。例えば、この現行の制度はこういうメリットとデメリットがあるというのを文章で書かれるとなかなか頭にはいってこないですよね。それを自分なりに分解して、箇条書きにばらして、それを表に当てはめてパズルみたいにここだけ覚えればいいという風に整理を重ねていきました。
その当時のまとめ方が業務や今の講師業にも生きていますね。
監査法人でコミュニケーション能力の重要さを学ぶ
合格後は監査法人でお勤めと伺いましたが、そこでも苦労されたことはありますか。コミュニケーションには苦労しました。苦労して会計士試験に合格しても、それは試験に受かっただけで、監査という業務にもコミュニケーション能力が必要でした。決算書が合っているかどうかを確かめるためにも、経理担当者の方へのヒアリングが必要になりますし、伝わるような質問の仕方や、先方の話を理解するのにも苦労しました。上司にも何度も怒られましたし、何度も聞きに行くので経営者や経理の方にも嫌な顔をされることも多くありました。結局2年間監査業務を行っていましたが、やりがいを見失ってしまい、監査法人の中でもコンサルのような仕事をする仕事に転職しました。
現在の勉強会講師の基礎になるのがコンサルのお仕事ということでしょうか。そうなりますね。主にIFRSのアドバイザリー業務を行っていたのですが、公認会計士の勉強をしている際の資料作成も役に立ちました。勉強したことを表にまとめる作業が得意だったんです。それをお客さんに説明すると「ああなるほど」と驚いた表情をしたり、喜んでいただけるのが嬉しくて、やりがいを感じていました。しかしその後、経理の立場になってみるとまた違う景色が見えるようになりました。
企業経理に所属し両面から対応を考えられるように
その後企業経理に転向されたのはどのような経緯だったのでしょうか。4年ほどアドバイザリー業務を行う中で、ずっと同じことをやっていると成長していないんじゃないかと思い、ちょっと違うことをしたくなってきたんです。そこで会社に相談したところ、リクルートホールディングスへの出向のお話をいただきました。これが企業経理としてのデビューになるのですが、監査法人と事業会社の立場の違いは大きな衝撃がありました。
どのような気づきがあったのでしょうか。実務的でない情報が役に立たなかったことですね。今まで自身がコンサルや監査をする側として提案してきたことは喜んでくれていると思っていたのですが、実際業務に落としこんでみると現実的でないので心に刺さらないということが多くありました。こういったスタンスの違いははじめすごく苦労しましたし、情報提供に終始してしまっていたそれまでの業務を反省しました。
経理にとって重要なこととは
経理、会計に携わる人にとって最も重要なことは何だと思いますか。経理にとって最低限必要なスキルは3つだと思っています。
- 簿記知識
- Excel活用
- コミュニケーション能力
この中でもやはり一番はコミュニケーション能力は必須だと思います。経理の業務は何か請求書の処理だけしていればそれでいいでしょみたいな誤解があると思うんですけど、実際に経理をやってみて思うことは、やはりコミュニケーションを取っていかないとすごく業務が非効率になるケースが多くあります。経理は仕事を依頼することもされることも多く、経費精算を早くしてくださいとか、プロジェクトのためにこの情報が欲しいんですとか、こういった依頼はその目的を知らないと無駄な作業も増えてしまうことがあります。また、社内の方へも、早く請求書を上げてくださいだとか、フォームに入力してくださいだとか依頼する場面もとても多いんです。これをただ単に依頼を投げ続けていると、先方も不快に感じてなかなかやってくれないんです。やはり普段からコミュニケーションをとって良好な関係を作っていると、少し大変なものでも引き受けていただけたり、問題が発生する前に相談をしてくれたりするようになって、最終的には円滑に業務がまわるようになります。
先生の著書でも、その重要性に触れられていましたね。そうですね。経理向けの堅い本は世の中にたくさんあると思うのですが、経理の初任者向けの本ってなかなかないなと思ってこの内容をまとめさせていただいたんです。監査法人目線と企業経理目線と両方を体験して、経理の面白さを見失っている人が多いなと残念に感じていました。決められたルールに沿って毎年、毎日同じことをしているだけで面白くないと考えてしまうんですね。でもそれはすごくもったいないことだと思っています。そのためにも活字が苦手な人にも分かりやすいように図解や漫画などを交えながら解説させていただきました。みんなが知らないだろうなという小ネタを混ぜたりもしているので、是非楽しんでいただきたいです。
公認会計士 白井 敬祐氏
著書:「経理になった君たちへ」
経理の醍醐味は「ミスを減らしながら業務効率化を図ること」
経理の具体的な業務の中で一番気をつけるべきことは何だと思いますか。1番気をつけるべきはお金を管理する上では出金時だと思います。たとえ社内であっても、給与を誤って振り込んだり、遅れてしまったら大問題ですよね。これが社外であれば、会社の信頼を失墜させることにもなります。1円、1日とこれが個人のやりとりであれば大したことがないものも、会社のお金を預かる以上ミスが許されない業務です。しかし、この計算や手続きは複雑なものも多く、ミスは生じやすい業務でもあります。だからといってそこに多大なチェックの工数などをかけることはかえって業務負荷が増大し、他の業務を圧迫し、他の業務からのミスを誘発させます。よって、この場合はそもそもミスが生じにくい仕組みを作ったり、無駄な業務を減らして、余裕のある状態で業務にあたるのも重要な仕事の一つだと考えています。自身が経理業務を行っていた時も、業務の1/3くらいは何故それを行っているのか説明できないつらい業務があり、その分残業も増えてしまっていました。これを削っていくことで全員が定時に帰ることを目指して業務改革をしました。私にとってはこれがすごくやりがいがあって、無駄な作業を無くして効率的にしたことで経理のメンバーにとっても魅力的な取組になったと思っています。
先生の今後の目標はありますか。会計は面白いということをもっと広めていくことです。私が学生の時もそうでしたが、若者で自分は何をしたいか分からないという人は結構多いと思っています。そういう方々に向けて経理や会計の面白さを伝えることで将来の選択肢を増やしてあげたいです。
そのためにも経理や会計の認知を増やすような活動をしていきたいです。具体的には、メディアに出て会計の面白さについてお話したり、ゲームで面白く会計について学べるものを作っていきたいと思っています。
経理プラス読者へ一言
最後に、経理プラスの読者に向けてメッセージをいただけますでしょうか。いつも経理プラスの記事やセミナーを見ていただいてありがとうございます。みなさまは今経理や会計に携わる仕事をしている方が多いと思いますが、正直仕事というのは90%はつまらないことの積み重ねかもしれません。でも、10%でも会計の面白さや、財務で経営に関わることの面白さだとか、わずかでもいいので自分はこれが面白いと思える業務を発見してほしいと思います。私でいうとあの業務を削減できたとか、効率化できたといったことですね。そのような業務を1つ見つけて、それに対して少しいつもと外れた見方をしてみると、また新たな楽しい発見があると思います。
白井先生の勉強会動画
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。
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※:デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より