経理業務効率化のための情報管理(処理済情報編)

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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

前回の記事で情報の管理方法について紹介し、情報の状態によって2種類に分類すると説明しました。
経理プラス:経理業務効率化のための情報管理

何かしらの処理が必要な情報を「未処理情報」、処理済みで後は管理・保管が必要な情報を「処理済情報」と説明しました。

今回は「処理済情報」をどのように管理・保管するかについて書きます。前置きとして、今回の内容は電子保存を前提としない方法での説明になります。

保存の義務づけられている情報かどうかで分類する

「会社共有の情報」と「私的作成の情報」の2種類に分類します。

会社共有の情報は「帳簿」「書類」「意思決定」の3つに分類することができます。

  • 帳簿:総勘定元帳、仕訳帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など
  • 書類:請求書、注文書、契約書、領収書など
  • 意思決定:稟議書や発注承認書、見積決裁書など承認決裁を必要とするものなど

これらは社内で共有する情報(立場や部門によるアクセス制限はある)であり、法律上もしくは社内規程で保存年限が決められているため、勝手に破棄することができない情報です。

続いて、私的作成の情報は「会社共有の情報の作成過程」「個別依頼」「自己目的」の3つに分類することができます。

  • 会社共有の情報の作成過程:会社共有の情報を作成するにあたり、その過程で作成するラフな文章や集計資料やメモ書きなど
  • 個別依頼:ある部門もしくはある人からイレギュラー的に作成を依頼される資料など
  • 自己目的:自発的に何かを調べるために作成した資料や、分析するために作成した資料など

「会社共有の情報の作成過程」は私的作成の情報として分類していますが、書類を会社共有の情報の裏付けとなりますので、重要性は高いです。中には毎年作成するものや、似たものを作成しますので、どのように作成したのかを結果としての情報だけでなく、過程の情報も残しておくのが望ましいです。

情報は目的によっていくつもの形式で存在する

処理済情報は「紙」「データファイル」「データ化ファイル」の3種類に分類する事ができます。
「データファイル」とは、パソコンなどのコンピューター上のアプリで作成されたものを指します。主にWordやExcel、会計ソフトなどが「データファイル」となります。「データ化ファイル」とは、主に「紙」をスキャンによってPDF化したものを指します。

情報はいずれか1つのみの形式で保持されるわけではなく、業務を効率的に運用するために複数の形式で保持される場合が多いです。たとえば、全社共有の情報の多くは「紙」で保存します。しかし、活用や管理は「データファイル」で行う場合が多いです。総勘定元帳は「紙」で保存しなければなりませんが、特定の勘定科目の取引内容を確認する場合には、紙で出力した総勘定元帳からではなく、会計ソフトから出力したもので利用する方が多いです。

請求書についても受領した請求書は「紙」で保存しますが、支払いのためにデータベースに登録するなどをして支払いデータを作成します。万が一、支払い金額の相違などが生じた場合などは、「データファイル」で確認しつつも「紙」の情報で確認をします。

ただし方法として「紙」を「データ化ファイル」にして確認する方法もあります。
電子保存を行うにはファイルにタイムスタンプを行うなど適正な事務処理を満たす必要があり、運用がきちんとできていなければなりません。しかし、電子保存を目的とするのではなく、保存はあくまで「紙」で行い、業務効率のために「データ化ファイル」で保持する方法です。

私的作成の情報は「データファイル」のみで保持する場合も多いです。最初からデータになっているので、管理や検索がしやすい状態ではあります。しかし、その都度検索するのは手間ですので、一定の管理ルールを設定しておくとよいです。

ちなみに私の会社の場合は、このようにまとめることができます。

情報の種類情報の分類データファイルデータ化ファイル
会社共有の情報帳簿
書類
意思決定
私的作成の情報会社共有の情報の作成過程
個別依頼
自己作成

情報に適した管理ルールを設定する

情報にはそれぞれに適した管理方法があります。ポイントは「探しやすさ」と「廃棄しやすさ」です。

情報を探している時間は、仕事において無駄な時間でしかありません。無駄なことに時間を使わないようにするには、情報にすぐにたどり着けるようにしておく必要があります。特に共有する情報については、誰が探しても見つけることができるような管理方法が望ましいです。もちろん私的作成の情報も、自分が探しやすいようにしなければなりませんし、将来的に引き継ぎする書類もありますので、同じように探しやすい状態にしておくことで、引き継ぎを円滑に進めることができます。

情報は一定期間保存したのちに廃棄します。保存する期間は情報により異なりますが、不要になった情報をずっと残しておいては紙書類であれば保管場所を取られます。また廃棄がしやすいということは、管理がきちんとできているということでもありますので、探しやすい状態になっているとも言えます。

そこで作成したいのが「文書管理リスト」です。文書管理リストを作成しておくことで、情報を探し出すのに便利です。また廃棄もスムーズに行うことができます。

私の会社の文書管理リストの項目例(紙の場合)

項目名説明
管理番号段ボールで詰めて管理するための通し番号
年度情報計上年度情報
文書綴り名管理されている文書が分かる名前
通し番号文書綴りが複数になり総数を把握する番号
対象期間綴られている文書の処理日や計上月日
保管期間満了日廃棄が可能になる日付
廃棄の方法シュレッダーする、外部委託して廃棄するなど
リンク段ボールの中身が分かる写真へのリンク

どのような項目を設けるかは会社によって異なります。会社によってはキャビネット名などが必要になる場合もあるでしょうが、私の会社の経理では、1つのキャビネットに保管できる量を超えたら段ボール詰めして保管する運用にしているため、キャビネットについて設けていません。

「紙」の管理方法例

管理ルールを設ける場合、何をインデックスにするか、何階層目で管理するかが重要です。

毎年に作成する書類であれば、一階層目に書類の種類や年度もしくは西暦が適しています。廃棄を考えても複数年度の書類が1つのバインダーの中にあると管理しにくいのです。ただし契約書など毎年発生する書類ではなく、また廃棄しない書類の場合は、五十音順を一階層目に設定し企業名ごとで並べ、新しい契約書を交わした場合には、企業に重ねていくのが適しています。

「紙」で保存する際に利用する用具としては「フォルダー」か「バインダー」の2つが一般的です。それぞれのメリット・デメリットがありますが、どのような使い分けを行うとよいのか考えてみましょう。

  • フォルダーが向いている:利用頻度や参照頻度が高い、追加する書類があるものなど
  • バインダーが向いているもの:利用頻度が低く、書類がこれ以上増えないもの、長期保管が必要なものなど

作成した直後の書類や、支払い直後の請求書などは参照する頻度が高いので、一定期間フォルダーで管理をしたのちにバインダーで保管する方法が良いです。ただしバインダーは文書量に関わらずバインダーの厚さ分の幅を取るので、厚紙で挟んで紐を通して保管するという方法もあります。

私の会社の請求書の場合で説明すると、最初はフォルダーで管理し、空いた時間でスキャンしてPDFにして、キャビネットに入りきらなくなったら、厚紙で挟んで紐で束ねて1箱分になるように段ボールに詰めて保管します。段ボールには管理番号を振って、中に入っている書類を写真で撮影し、指定のフォルダーに置いて、文書管理リスト上でリンクを貼って中を確認できるようにしています。

「データファイル」「データ化ファイル」の管理方法例

決算資料のように定期的に作成するデータと、突発的な依頼や自己目的のために不定期で作成するデータでは、異なる管理が適しています。

定期的に作成する「データ」はフォルダーの階層管理が向いています。

フォルダーの階層管理

しかし、不定期で作成する資料は、フォルダー階層管理するのには向いていません。
作成するファイルなので法則性が明確にあるわけではないので、極端に言えば、ファイルを作成する都度フォルダーを作成すると、ファイルの数だけフォルダーができてしまい、非常に管理が煩雑になります。

不定期で作成する「データ」はプロパティ管理が向いています。

プロパティとはファイルが持つ様々な情報を指します。
プロパティを利用することで、一つのフォルダー内でファイルをグループ管理することができます。

まずプロパティの設定を行いますが、方法については以前「経理なら利用したい4つのExcel機能 」という記事の中で「プロパティの設定」を紹介しましたので参照ください。

ここでの説明はプロパティの「分類」に部門名を設定したという状態からの説明をします。

フォルダーのメニュー「表示」→「グループで表示」→「分類項目」を選択します。

プロパティ管理

「分類項目」で設定している部門ごとで区分けされました。

分類項目

グループ表示は「分類項目」だけでなく、他のプロパティでも可能です。

まとめ

近年、法律の改正等によりスキャナ保存等の電子保存がやりやすくなりました。私も電子保存へ対応しようと考えましたが、費用対効果から現状見送っている状態です。ただ将来的には電子保存への運用にできるように、準備は進めています。
電子保存へ移行するしないにかかわらず、今一度社内の情報がどのように管理されているのか確認してみるといいのではないでしょうか?

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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

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