【インタビュー】元国税局職員のお笑い芸人、さんきゅう倉田さんに聞く「税金」「お金」の面白さ
さんきゅう倉田様プロフィール
芸人、ファイナンシャルプランナー。大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し、東京国税局に入局。中小法人、同族法人の税務調査などを行い2年1ヶ月後、同退職。NSC東京校に入学。
著書に『やさしいお金の貯め方 増やし方 』(東洋経済新報社)『読めば得する税金の話』 (総合法令出版)などがある。
大学卒業後、東京国税局に入局
はじめに、さんきゅう倉田様が国税局に入られた経緯を教えてください。ぼくの場合、どうしても国税局に入りたいと思っていたわけではありませんでした。いくつかの公務員試験を併願していたので、内定を頂戴してから、業務内容を聞き、その専門性に強く心を惹かれて国税局を選びました。
大学時代から税務や会計の勉強に携わっていたのですか?大学では建築を専攻しており、税務や会計については国税局に入ってから勉強しました。勉強は基本楽しいものだと思っているので、勉強量が多くても苦にはなりませんでした。ただ、研修中の2か月で簿記2級を取らなければいけなかったため、必死になったのを覚えています。
その後、現場に配属されてからは、過去の税務判例と裁判例、国税不服審判所の公表裁決事例をよく読みました。学んだからといって、担当している業務に役立つわけではありませんでしたが、楽しかったです。勉強は楽しいことが重要だと思います。
税務調査にあたってのポイント
国税局でどのような業務にあたっていたのか、差し支えない範囲で教えていただけますでしょうか。はじめは内部事務をやっていました。法人課税部門だったので、窓口対応や納税者から提出された届出書などの処理を行っていました。上席から依頼されて外国人の方の対応をしたときは、各税務署に英語が話せる人間が一定数必要だと感じました。
当時は少なかったけれど、今は英語が話せる職員が増えているのではないでしょうか。窓口対応だけでなく、税務調査でも英語を使う機会は増加していると思います。
内部事務のあとは、法人の税務調査を行っていました。
勉強した分、誤りや不正を見つけられる可能性が上がっていくことにやりがいを感じていました。
税法や通達を知らなければ、帳簿を見ても何もできないので、税務調査に出たばかりの頃は、自分の無力さを痛感します。
その気持をばねに、たくさんの本や手引書を読みました。
税務調査のポイントとして、経営者や税理士さんとのコミュニケーションを密にすることも大事だと感じていました。「調査を始めるときは、世間話を1時間はしたほうがいいよ」と上司から助言を受けたこともあります。
また、帳簿を見ていると、経営者の私的な支払いが混ざっていることがあります。
税理士さんは、会社から経費の領収書を渡されて記帳することがありますが、都度、どのような支払いなのか確認することは困難です。家族とご飯を食べた際の支払いや愛人にプレゼントを購入した代金が入っていることもありました。
もちろん、そのような支払いは税務調査では否認されてしまいます。税理士さんに何もかも頼るのではなく、社内の経理担当者や社長にも税務や会計の知識が必要だと思います。
国税局職員から芸人へキャリアチェンジ
芸人という大きなキャリアチェンジをされた理由を教えてください。仕事は楽しい方がいいと思っています。仕事を楽しんでいれば、勉強や自己研鑽も苦でなくなり、技術が伸びる。そうすれば、出世もできるし、所得も上昇する。だから、自分にあった楽しい仕事を見つけることが大切です。国税局の仕事はやりがいがありました。しかし、もっと面白い仕事はなにかと考えたときに、思いついたのが芸人でした。芸歴13年、予想していたより毎日が楽しいです。
目線を変えたことで分かったお金の管理の大切さ
芸人になってお金について考えが変わったことはありますか。公務員から個人事業主になって、お金について考えることが多くなったと思います。
個人事業主は自分で報酬の額を決定し、決済日を確認しなければいけません。報酬の決定にあたっては、その仕事にかかる時間や支出、専門性を考慮する必要があります。
また、入金が遅れる会社もあります。本当に遅れているのか、何度も銀行口座を確認してから、先方に連絡を取ります。本来不要な作業ですが、個人事業主であれば、そのようなリスクについても考えなければいけません。
収入や支出など、お金の動きを把握することです。借金がたくさんある人に話を聞くと、必ず、収入も支出も借金の額も分からないと言います。お金がない人はお金をちゃんと見ていないようです。もっと見てあげないと、お金に逃げられてしまいます。
お金の管理をするために、税務の知識も必要です。書籍を購入しても良いですが、国税庁のHPを見るだけでも十分だと思います。
世の中の金融リテラシーを上げる
さんきゅう倉田様のこれからの夢があれば教えてください。若い人の金融リテラシーを上げられる仕事をしたいと思っています。2022年にあった給付金詐欺では、知識の少ない若者が狙われていました。
悪い人はいなくなりません。詐欺やマルチ商法の被害に遭わないように、みなさん自身がお金の勉強をして、身を守れるようにする必要があります。
ぼくの書いた本もきっとお役に立つと思います。目次だけでも読んでいただけたら、嬉しいです。
経理プラスの読者へ一言
会計や税務に関わる仕事をしていると、数字ばかりと向き合っていて嫌になることがあるかもれません。そのような方は、仕事を楽しめる環境を作るといいと思います。たとえば、社外の経理仲間と勉強会をするのはどうでしょうか。ぼくも、税金サークルを作って、知識を共有するようにしています。
また、経理プラスさん主催で、一般の人が経理や会計に興味をもつようなイベントがあると良いなと思っています。チーム対抗で領収証の整理をするとか、電卓を叩きながらマラソンをするとか、経理の人に見られないようにこっそり経費精算をする大会とか。
実現したら、たくさんの読者の方に参加していただきたいです。
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