【経理部門と人材育成】新人~中堅社員の育成方法
経営環境が厳しさを増し、経営管理の在り方の見直しが必須となっている昨今、経理部門に寄せられる期待は非常に高まっています。一方で、バブル崩壊後の新規採用制限やアウトソーシング等により経理系人材は減少しています。多種多様な経営課題に対応するため、もはや人材育成は先送りにできる課題ではなく、目下に迫った急務です。
今回は、経理部門における人材育成について、やるべきことをご紹介いたします。
経理部門に求められる能力
人材育成のためには、あるべき姿と現実のギャップを明確にすることが必要です。スタートとゴールが曖昧ではどこにもたどり着くことができません。
では、一人前の経理社員の要件とはどのようなものでしょうか。最終的には、複雑な企業活動について会計を通じて抽象化し、かつ、それをわかりやすく経営幹部に伝えることができるようにすることが求められます。
それでは、そこに至るまでの途中経過として、新人から中堅ぐらいまでの経理人材にはどのような能力が必要でしょうか。この点については、会社によってそれぞれの考え方があるかと思いますが、経理という分野である以上、会計の専門知識(テクニカルスキル)が必須となります。つまり、経理部門の人材育成には、専門知識を効率よく習得させるということが絶対条件となります。
会計の専門知識の4つの領域
では、会計の専門知識について、より詳しく見てみましょう。会社によって多少の違いはありますが、一般に会計の専門知識については、次の4つに分類ができます。
- 財務会計:財務諸表を核とする会計情報を、企業外部の利害関係者(株主、債権者等)に対して提供することを目的とする会計
- 管理会計:経営者や企業内部の管理者に対する情報提供を目的とする会計
- 資金会計:企業活動による資金の変動に関する情報を扱う会計領域
- 税務会計:企業などの組織が国や地方自治体に納付する税額を算出するために法人税法などの規定に従って行う会計
会計基準の国際化やディスクロージャーの強化、SO法への対応、経済活動のグローバル化のさらなる進展やシェアードサービス化による経理社員の減少等、経理を取り巻く環境は日々変化しています。その結果として、近年は一つの領域の知識だけでは適切に問題解決できないケースが頻繁に発生しています。
もちろん、上記4つの領域を完全に制覇するのは非常に難しいことであり、専門とする分野が出てくるのは当然のことです。しかし、人材育成の上では、長期的な視点で見て、全く理解していない分野がないようにすることが必要です。
具体的な人材育成の進め方
それでは、具体的にどのようにして人材育成を進めていけばいいのでしょうか。
基本的にはジョブローテーションと研修等のOFF-JT、そして資格取得等に代表される自己啓発により育成していくのが一般的です。以下、簡単に紹介していきます。
ジョブローテーション
だいたい1~3年くらいの周期で、メンバーの担当業務を入れ替えるのが一般的です。その際には会計領域だけでなく、たとえば製造業であれば工場経理を経験し、次に本社の財務会計部門を経験するといったように、ビジネスの現場に対する理解を深めていくことが非常に重要です。
会計はあくまでも企業活動の一連のプロセスを貨幣価値という形で数値化、抽象化し、整理伝達するツールです。ビジネススキルのベースとなる自社のビジネスプロセスへの理解がなければ、会計というツールは使いこなせません。
また、新規会計基準導入プロジェクトといった、日常のルーチンではなく、変化を求められる業務に主体的に関わることができれば、個人の成長に大きく寄与します。
研修
研修は、ローテーションで経験できなかった部分へのフォローや経験分野の深堀に有効です。研修の形式としては、外部の専門家による講義や、社内の担当者同士で講師をしあう内部研修があります。特に内部研修は、教えることにより講師自身も理解を深めることができるため、積極的に機会を作っていきましょう。
資格取得
経理部門の人員である以上、簿記2級くらいまでは基本的な用語やルールの理解という意味で習得が必要です。上位資格として、簿記一級や税理士資格、公認会計士資格等がありますが、これらは実務上必ずしも必要ではありません。しかしながら、体系的かつ理論的な知識の習得という意味では非常に有効です。
また、グローバル化が進む昨今では、英語簿記や国際会計理論の重要性が高まっています。それら国際会計スキルを測る検定試験としてBATIC受験も有効です。いずれにせよ、会計知識は常に進歩しているため、勉強をし続けるという習慣をつけることが非常に大事です。
まとめ
人材育成は一朝一夕には成りません。経理部門は業務の性質上、専門的なテクニカルスキルが重要となるため、長期的な視野を持って、継続的に取り組んでいくことが必要です。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。