知っておきたい!源泉徴収票の正しい読み方

知っておきたい!源泉徴収票の正しい読み方

会社員であれば、12月末に源泉徴収票を受け取ります。年末調整で申告した内容を反映して所得税を計算していることは理解していても詳しい読み方までご存じの方は少ないでしょう。この記事では、源泉徴収の基本的な考え方と源泉徴収票の読み方について詳しく解説します。

源泉徴収とは

源泉徴収とは、「所得税」を給与や賞与から天引きし国に納付する仕組みのことです。従業員へ給与を支払う事業者は、源泉徴収を行う義務があります。なお、会社が月々源泉徴収する所得税のことを「源泉所得税」と言います。会社に納税義務を負わせることは税金を徴収する国の立場からすると、以下のような点がメリットです。

  • 会社員の所得税を確実に補足できる
  • 納税者それぞれから申告されるより、手続きや事務処理が簡単になる
  • 源泉所得税の支払いは毎月なので安定的な税収入を得られる

月々の源泉所得税の計算は、まず課税支給額の計算から行います。

課税支給額=総支給額-非課税支給額

非課税支給額とは、所得税の課税対象とならない支給額のことで通勤手当や出張旅費などが該当します。

次に、課税対象額を計算します。

課税対象額=課税支給額-社会保険料合計額

社会保険料は、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の本人負担分の合計です。

最後に、計算した課税対象額と扶養親族の数を源泉徴収税額表に当てはめて、給与等から差し引く所得税額を計算します。「源泉徴収税額表」の詳しい説明は下記リンクを参照ください。

経理プラス:源泉徴収額とは?計算方法と令和3年度の変更点を解説(令和4年は変更なし)

このように、会社は毎月源泉徴収を行います。しかし、これはあくまで概算であり、従業員が1年間に納めるべき税額とは必ずしも一致していません。一致しない理由としては、扶養親族の数が変わった、住宅ローン控除がある、生命保険や地震保険のような控除対象があるといったことが挙げられるでしょう。そこで、源泉所得税と本来納付すべき所得税の差を計算し、精算する必要があります。この作業を「年末調整」と言います。

源泉徴収票とは

源泉徴収票とは、会社が従業員に支払った給与の総額、源泉徴収税額、年末調整による控除などを記した書類のことです。源泉徴収票は、4枚複写または3枚複写のものがあります。1枚目と2枚目は「給与支払報告書」という名称になっており、従業員が住んでいる市区町村に提出します。

3枚目と4枚目は「源泉徴収票」と記載されており、3枚目は税務署に提出し、4枚目を従業員本人に交付します。3枚目の源泉徴収票については、給与金額が500万円以下の場合は税務署への提出は不要です。

給与支払報告書は従業員が居住する市区町村に提出しますが、これは住民税の計算に使用されます。市区町村が計算した結果は、決定通知書として5月に会社へ送付されますので、6月支払いの給与から控除していきます。

住民税は、総額を12か月で割って月々の給与から差し引きます。所得税と同様に、住民税についても会社が給与から天引きして市区町村へ納付することが法令によって定められています。

源泉徴収票の作成方法

源泉徴収票は、年末調整が終わったタイミングで従業員に交付されます。年末調整は、11月頃から各種控除を受けるための資料を従業員へ配布・回収し、12月中旬頃に完了しますので、通常は12月末の交付になるでしょう。

源泉徴収票を作成するために必要な情報は、支払金額、社会保険料等の金額、控除対象扶養家族の数、生命保険料等の控除額です。支払総額など会社が把握している情報に加え、年末調整で従業員が提出する「扶養控除等申告書」「配偶者控除等申告書」「保険料控除等申告書」に基づいて作成します。

また、従業員が退職する場合も源泉徴収票を発行することが必要です。退職した会社では、年の途中で辞めた従業員の年末調整は行いません。しかし、個人としては所得税を納付する必要がありますので、自身で確定申告をするか転職先で年末調整を行うことになります。会社は1月1日から退職する日までの給与や賞与、源泉所得課税、社会保険料などを計算し、源泉徴収票を退職する従業員に交付しなくてはなりません。

源泉徴収票の読み方

源泉徴収票にはさまざまな金額が記載されており、分かりにくい部分があるかもしれません。しかし、正しく読めると税金への理解が深まります。それぞれの項目について見てきましょう。

支払金額

1年間に支払った給与、残業代、賞与、各種手当の合計です。一般に「年収」と言った場合はここに記載された金額になります。非課税扱いとなる通勤費や出張旅費などについては含まれていませんので注意しましょう。

給与所得控除後の金額(調整控除後)

給与所得控除とは、会社員にもスーツやカバンといった必要経費があると考え、その分は課税対象額から差し引かれる控除のことです。収入に応じて差し引かれる控除額は決まっており、例えば年収500万円であれば144万円が控除金額となりますので、給与所得控除後の金額は356万円と記載されます。

所得控除の額の合計

社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)や配偶者控除、基礎控除、各種保険料など年末調整を行った事項の合計額が記載されています。主な所得控除は下記の通りです。

控除の種類内容
社会保険料健康保険、厚生年金保険などの従業員負担分
生命保険料個人が加入する生命保険や介護医療保険
地震保険料個人が加入する地震保険
配偶者控除配偶者の所得が48万円以下(パート収入は103万円以下)の場合に適用
※48万円~133万円未満(パート収入は103~201.6万円未満)の場合は配偶者特別控除が適用される。
基礎控除所得が2400万円未満であれば一律48万円が適用

この他にも、災害などで損失を受けた時に適用される雑損控除や一定額以上の医療費を支払った場合の医療費控除などがあります。源泉徴収票の下部に内訳が記載されていますので、確認してみましょう。

住宅ローンの控除は「住宅借入金等特別控除の額」に記載されます。この金額は上記のような課税所得の控除ではなく、最終の所得税額から差し引かれていますので注意してください。

源泉徴収税額

すべての控除を差し引いた課税所得の金額に、税率をかけて計算した所得税額が記載されています。

所得税=課税所得×税率

税率は課税所得金額によって5%から45%の7段階に区分されます。所得税は一定の金額を超えた部分の税率が高くなる「超過累進税率」が採用されており、例えば課税所得が300万円の場合、195万円までは5%、それ以上は10%と計算されます。

所得税=195万円×5%+(300万円-195万円)×10%

まとめ

源泉徴収票について、年末調整や項目別の記載事項について詳しく解説しました。所得税は超過累進税率によって所得に応じた税負担とし、また、納税者個人の事情を加味するため様々な控除が設けられています。源泉徴収票を読み込むことで、税負担の公平性を保つ仕組みも理解できるでしょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。