棚卸資産回転率で経営分析をする方法とは
棚卸資産回転率や回転期間は、企業の製品がどのくらい効率的に回っているかを知るものです。これらをなんとなくはイメージできる人は多いかと思いますが、どの程度が望ましいのか、またどのように分析できるものなのか、具体的に理解している人は少ないかもしれません。
そこで今回は、棚卸資産回転率、回転期間の計算方法や、分析方法、着目するポイントなどについて紹介します。
棚卸資産回転率にて押さえておきたいポイント
棚卸資産回転率とは、商品や製造された製品がどのくらいの回転で販売されているかを表すものです。
たとえば、スーパーで野菜が並んでいると仮定します。人参と玉ねぎがあるとして、玉ねぎは1時間に2個売れているのに対し、人参は半日に1個しか売れていないとすると、玉ねぎは人参よりも回転率が良いことになります。
そのため、回転率が良い(高い)ほど棚卸商品が効率的に動いていることになり、売上へと反映されていると考えられるわけです。また、1回転ごとに要する期間は短ければ短いほど良いということです。
一方で、回転率が悪い(低い)と、棚卸資産が多くなり資金が動かず、財政状況としても良い傾向とはいえません。回転期間が長いということは、売れない在庫をそれだけ長く抱えているということになるからです。
棚卸資産回転率と計算方法
棚卸資産の回転率が高いほど、経営成績としてはプラスであると考えられますが、回転率、回転期間はどのように計算されるものなのでしょうか。確認していきましょう。
棚卸資産回転率
棚卸資産回転率=売上額/棚卸資産(当期・前期末の平均)
棚卸資産の平均は、2期分の平均を求めます。売上額を棚卸平均で割り、回転率を出します。
たとえば、A社は、売上額が5,000万円で、棚卸資産平均が500万円である場合、5,000万円÷500万円=10回転となります。
B社は、売上額が5,000万円で、棚卸資産平均が300万円である場合、5,000万円÷300万円=16.6回転となります。
回転率は高いほど良いとされていますので、「B社の方が売り上げに結びついている」とみることができるでしょう。
棚卸回転期間
棚卸回転期間=365/棚卸資産回転率
棚卸回転期間は、1年間を回転率で割り算出します。
上記で算出したA社とB社の回転率で、それぞれの回転期間を算出してみましょう。
A社は、回転率が10回転でしたので、365÷10=36.5日となり、回転期間は月で例えると1.2カ月となります。
また、B社は、回転期間が16.6回転でしたので、365÷16.6=約21.9日となり、回転期間は月で例えると約0.7カ月となります。
棚卸回転期間は、棚卸期間が1回転するのにかかる日数を表していますので、「短い期間で1回転しているB社の方が良い傾向にある」とみることができるでしょう。
棚卸資産回転率で経営分析をする方法
棚卸資産回転率や棚卸資産回転期間を読み解くことで、経営分析をすることができます。分析する上での目安や方法、着目ポイントなどを確認しましょう。
棚卸資産回転率、回転期間の目安と分析
回転率や回転期間は、取り扱う業種によって目安となる期間などが違います。たとえば、製造業では一般的に在庫を保有しておく期間が長い傾向にあり、流通業では、期間が短い傾向にあります。業種によって傾向に違いがありますが、一般的な回転率の目安は次のとおりです。
- 回転期間が5回以下:棚卸資産の回転率は低いといえます。売れない在庫を抱えている傾向があるかもしれません。
- 回転率が6回~10回程度:回転率が高いとはいえませんが、棚卸資産の在庫を見直すなど対策をしてほしいところです。
- 回転率が11回~22回程度:回転率は平均的といえるでしょう。おおよそ1カ月に1度以上、棚卸資産が回転できていることになり、在庫管理をしっかりと行いながら、さらなる効率化を図りたいですね。
- 回転率23回超え:おおよそ1カ月に2回ほど棚卸資産が回転していることになり、非常に効率が良いといえます。
棚卸資産回転率分析で着目するポイント
基本的に棚卸資産回転率は高い方が良いと捉えられます。動かない商品を抱えているよりも、商品がどんどん回転してくれた方が売り上げにもつながるからです。しかし、回転率が在庫の補充を上回ると、在庫不足に陥り、信用に影響を及ぼす可能性もありますので、適度な回転率が理想的といえるでしょう。
また、棚卸資産回転率を分析し、棚卸資産の管理を定期的にしっかりと行っている企業は、棚卸資産回転率が上向きに改善できる可能性が高まります。反対に、棚卸資産管理を長く怠っていると、無駄な在庫品のチェックや売れ筋の商品のスムーズな補充に手が廻らず、販売の機会を逃しかねないでしょう。
まとめ
今回は、企業の棚卸資産回転率や回転期間とはどのようなものか、また、回転率などの計算方法や目安、分析方法、着目点などについてお伝えしました。
今現在の回転率に問題がある場合は、棚卸資産の在庫管理や回転の傾向などを自社で分析し、不良在庫の削減や回転率の効率化に向けての対策ができれば改善できるでしょう。この機会に、棚卸資産回転率や回転期間を見直してみてはいかがでしょうか。
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