会社員が加入する3つの社会保険料について計算方法を詳しく解説!

会社員が加入する3つの社会保険料について計算方法を詳しく解説!

社会保険の目的は不慮の事故や病気、失業や老齢による収入面での不安、自身の介護などに対して一定の給付を行い、被保険者の生活の安定を図ることです。健康保険や厚生年金保険など12種類あり、どれに加入するかはどんな職業に就くかで決められています。ここでは会社員が加入する3つの社会保険について、保険料の計算や算定の基礎となる標準報酬月額などを詳しく解説します。

社会保険とは

「保険」と聞くと、健康保険や雇用保険といった国が運営するものと、火災保険や自動車保険、生命保険のような民間の会社が運営するものが思い浮かぶでしょう。このうち、国が運営する公的な保険を「社会保険」と言います。民間の私的保険は任意加入ですが、公的保険である社会保険は必ず入らなければならない強制加入が原則です。

広い意味での社会保険は、自営業者などが加入する国民健康保険や国民年金などを含む社会保障制度全般を指します。狭義の意味では、健康保険、介護保険、厚生年金保険を社会保険と言い、労災保険と雇用保険は労働保険と区分します。会社員が加入するこの3つの社会保険について、具体的な計算方法を説明しましょう。

社会保険料の計算方法

社会保険では給与のことを「報酬」、1か月の報酬を「報酬月額」と呼びます。社会保険料は、この報酬月額を一定の金額で区分した等級に当てはめて「標準報酬月額」を設定し、それぞれの保険料率を乗じて計算します。

健康保険料の計算方法

健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率

※従業員負担分は1/2

健康保険の運営主体には、健康保険組合(組合健保)と全国健康保険協会(協会けんぽ)の2つがあります。大まかには、自前で健保組合を設立できる大企業やそのグループ会社が組合健保、一般企業が加入するのが協会けんぽです。

組合健保の保険料率は3%~13%の範囲で、それぞれの組合が自由に設定できます。平均的には9%程度が多いようです。一方、協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに決められています。保険料率は9%後半から10%前半の間で、例えば東京都は9.81%(令和4年度)となっています。

計算例:標準報酬月額20万円、東京都の協会けんぽに加盟している場合

  • 健康保険料率:9.81%
  • 健康保険料 :200,000円×9.81%=19,620円
  • 従業員負担分:19,620円÷2=9,810円

介護保険料の計算方法

介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率

※従業員負担分は1/2

介護保険の運営は全国の市町村によって行われます。組合健保はそれぞれで保険料率を設定しますが、協会けんぽは全国一律で1.64%(令和4年)です。なお、協会けんぽの保険料率は毎年変更されます。

介護保険料は40歳以上の従業員が対象です。介護保険とは、高齢となって介護が必要となった場合に、さまざまな給付が受けられるための仕組み。原則として、65歳以上で介護認定を受けた人が給付の対象となります。

計算例:標準報酬月額 20万円の場合

  • 介護保険料率:1.64%(協会けんぽ)
  • 介護保険料 :200,000円×1.64%=3,280円
  • 従業員負担分:3,280円÷2=1,640円

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料=標準報酬月額×18.3%

※従業員負担分は1/2

厚生年金保険は日本年金機構が業務運営を担い、財政や管理運営責任は厚生労働省が行うことになっています。厚生年金保険料率は、平成16年から段階的に引き上げられてきました。しかし、平成29年に18.3%となって以後は固定されています。

厚生年金保険の加入期間は、会社で働き始めてから退職するまで。ただし、終了の上限は70歳と決まっています。70歳以降、厚生年金保険料は発生しないので注意しましょう。

計算例:標準報酬月額 20万円の場合

  • 保険料率    :18.3%
  • 厚生年金保険料:200,000円×18.3%=36,600円
  • 従業員負担分 :36,600円÷2=18,300円

算定基礎届とは

従業員の実際の報酬と標準報酬月額に大きなズレが生じないよう、毎年7月1日現在で在籍している全対象者の標準報酬月額を定期的に見直します。手続きとしては、4月、5月、6月の報酬の平均を計算し、等級に当てはめて決定。この標準報酬月額を、年金事務所へ届け出るために記入する様式が「算定基礎届」です。届け出の期間は、原則7月1日から10日の間となっています。

算定基礎届の提出後、年金事務所より決定通知書が送付されます。通知された標準報酬月額は9月から翌年8月まで適用。実務的には、9月の保険料は10月給与から控除されるので、10月の給与支払分から新しい保険料が反映されます。なお、9月以降の標準報酬月額を決定する一連の手続きを、定時決定と言います。

経理プラス:算定基礎届とは?算定方法や提出期限、注意点などを解説

標準報酬月額とは

標準報酬月額は従業員の給与を一定のランク(等級)に区分したもので、保険料の基準となります。健康保険料や厚生年金保険料は給与の支払額をベースに計算しますが、毎月計算を行うのは会社や健康保険組合などの事務が大変です。そのため、毎年4月~6月の給与の平均額を等級に当てはめて標準報酬月額を算出し、1年間適用します。

健康保険料と介護保険料は1~50等級、厚生年金保険料は1~32等級に分類されています。標準報酬月額の対象となる給与や手当は以下の通りです。

  • 基本給
  • 残業手当
  • 役職手当、通勤手当、住宅手当 など
  • 賞与(年4回以上のもの)

年3回以下の賞与、見舞金、退職金、出張旅費などの一時的、臨時的な収入は標準報酬月額の対象外です。

なお、年3回以下の賞与は標準報酬月額には含みませんが、社会保険料の対象となります。賞与の報酬額のうち1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額として、それぞれの保険料率を乗じて計算します。

まとめ

社会保険料の概要と計算方法、算定基礎届や標準報酬月額について解説しました。社会保険は思わぬ病気やケガ、老齢による収入の不安に対して、国が直接運営する仕組みです。すべての法人事業所と、5人以上の従業員がいる個人事業所で加入義務があります。法改正などで保険料率や対象が変わることが多いので、常に最新の情報をチェックしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。