法人住民税の概要!知っておきたい制限税率・法人税割・均等割・分割基準など

法人住民税の概要!知っておきたい制限税率・法人税割・均等割・分割基準など

事業を開始し決算を迎えた後は、税金の支払額を計算をして税金を支払います。法人が支払う税金には、主に国に支払う法人税と地方公共団体に支払う法人住民税と法人事業税の3種類があります。ここでは、その中の法人住民税にスポットをあてて解説していきます。

法人住民税とは

法人住民税は法人が地方公共団体に支払う税金です。事業者は本店や支店等のある各都道府県及び市町村の公共サービスを享受しているという観点から、法人の事業所のある地方自治体に課税され納付義務を負っているのです。法人住民税は法人所在地の都道府県と市町村に納税されます。

法人住民税の計算方法

法人住民税は法人税割と均等割から構成され、その合計額で算出されます。
法人税割は法人税額を課税標準として、それに税率を乗じて計算します。つまり、法人税額×住民税率=法人税割となります。税率は基本、国によって定められていますが、制限税率の範囲内では課税主体の裁量で税率を変えられますので、課税主体の地方公共団体の税率を確認してください。また、2つ以上の都道府県に事務所又は事業所を有する法人は、課税標準の総額を一定の基準で分割して関係地方団体ごとの分割課税標準額、税額を算定します。これを分割基準といいます(地方税法第57条、第321条の13、第72条の48)。分割課税標準額は法人税額(連結申告法人の場合は個別帰属法人税額)を用い、これを従業員数により分割して各都道府県又は各市町村に納付します。

法人税割について、2つの事業所を抱える法人の簡単な計算例を見てみましょう。

  • 条件:総従業員数5人、本店3人、支店2人
  • 資本金等の金額1,000万円
  • 法人税額50万円
  • 本店は東京都23区内で標準税率12.9%(都道府県民税相当分3.2%、市町村民税相当分9.7%)(注)令和元年10月1日以後に開始する事業年度は、標準税率7.0%(都道府県民税相当分1.0%、市町村民税相当分6.0%に改正されています。
  • 支店は神奈川県鎌倉市で神奈川県民税税率3.2% (注)令和元年10月1日以後に開始する事業年度は、神奈川県民税税率が1.8%に改正されています。
  • 鎌倉市市民税率9.7%(注)令和元年10月1日以後に開始する事業年度は、鎌倉市面税率が6.0%に改正されています。

(注)以下の計算は令和元年10月1日以降の税率を基に試算します。

  1. 東京都支払分  500,000×7.0%×3/5=21,000円
  2. 神奈川県支払分 500,000×1.8%×2/5=3,600円
  3. 鎌倉市支払分  500,000×6.0%×2/5=12,000円

均等割額とは事務所等を有していることをベースに課されます。ですから、事業者が赤字で法人税や住民税の法人税割の税額はゼロだとしても、均等割は支払うことになります。均等割額は事業者の規模(資本金等の金額及び従業員数)で法人税割同様、基本税率が定められていますが、市町村民税均等割については制限税率(1.2倍)が定められており、課税主体の裁量で決定できますので、ご注意ください。

均等割額は資本金等の金額により、税額がかなり異なります。東京都で従業員数が50人の主たる事業所を保有している場合、資本金等の金額が1,000万円以下の場合は、70,000円ですが、1,000万円超~1億円以下の場合は200,000円と資本金等の金額が増額するにつれて税額も高くなります。減資を行い、資本金等の金額を減少させれば、節税になりますので、資本金等の金額にこだわりがなければ、検討してみるのもいいかもしれません。ただし、減資にあたっては、株主総会の決議が必要(3分の2以上の賛成)で、有償減資の場合はみなし配当となる等、法令上、税務上の論点がありますので、実際に検討する場合は専門家に相談するといいですね。

その他、法人住民税で注意すべき点

法人住民税については、税制改正が行われていますのでご留意ください。

利子割の廃止

事務負担の軽減を目的として、平成28年1月1日以後に支払を受ける利子について利子割が廃止されます。

法人住民税率の改正

平成26年10月1日以後に開始する事業年度より、税率が改正されましたが、その後、令和元年10月1日以後に開始する事業年度においても、税率が改正されています。決算期により経過措置等もありますので、関係法令をよく確認してください。
また、法人住民税は事業所等を有するすべての地方公共団体に申告しますので、申告もれがないように、また、税率、均等割額も課税する地方公共団体により異なりますので、ご確認ください。

最後に

いかがでしたか?
法人住民税の概要がご理解いただけましたか?事業所等をたくさん有する会社は申告もれがないように特に注意してください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。