接待費用になる、ならない?グループ会社との交際費など実例3選

接待費用になる、ならない?グループ会社との交際費など実例3選

企業経営を行う上で、販路拡大や営業実績の上昇を狙う為に欠かせない支出が「接待交際費」ですね。自社の商品やサービスがどれ程素晴らしくて、どれだけ貢献できるものなのか、一般に店頭で紹介するだけではどうしても限界があります。そこで、様々なシーンで自社のアピールを行う必要が出てきます。
法人が得意先、仕入先その他事業に関係のある人に対する接待や、供応、慰安、贈答等を行った場合、それに係る費用は「接待交際費」となります。これまでは、かかった全額を経費計上することができませんでしたが、平成26年度から28年度は中小企業活動の支援の為に、定額控除限度800万円以下の交際費はすべて、損金に算入することができるという特例が施行されました(資本金1億円以下に限る)。その後、平成28年から令和9年(2027年)3月31日まで延長されています。

従来は600万円を上限として10%損金不算入であったことと比較すると、交際費をより活用できるようになっているといえます。
とはいえ経理担当の方は、接待交際費とすべきか、その他科目で処理すべきなのか、悩むポイントは多いのではないでしょうか。では実際に、どのような場面での渉外活動を、接待交際費として処理すればよいのかを実例に沿ってご紹介します。

ケース1 取引業者の社員が同席する商談。社外の人へふるまう昼食は?

『ある日社内で、商談を取り行いました。取引先の担当者含め、商談に参加した全員分の出前昼食代を「接待交際費」として処理しました。』
という経理担当者は少なくありません。この場合、ポイントとなるのは【業務を行う上で必要な相手で必要な会議だった】という事実です。社内の会議の他に、事業取引先との打ち合わせや会議を行った場合は、接待交際費ではなく、すべて会議費として計上できます。全額損金として算入できるようになったものの、やはり上限がある事を考えるとここは会議費として処理しましょう。しかし、常識的に考えて昼食とみなされる程度の金額で、という点に注意してください。

 ケース1と類似していますが、平成18年の法改正以後、定着してきた感のある会議費の目安金額5,000円という金額にとらわれてしまい、処理を行っていた例もあります。
 『会議費にしたいけど一人当たり5,000円を超えてしまったから接待交際費にしていました』

なお、令和6年(2024年)4月以降の支出分からは、交際費等から除かれる飲食費等の金額が一人当たり10,000円以下と増額改正されています。現在の物価上昇が続く社会情勢下においては、従来の5,000円以下では交際費等として難しくなっていることが背景として考えられます。


この10,000円は従来、接待費ではなく会議費として良いとする一人当たりの目安に過ぎません。実際には10,000円を超えていても、通常要する費用として認められるものである限り、交際費には該当せず、会議費として処理できます。
資本金1億円以下の中小企業に対しては、定額控除限度額の引き上げは重宝な法改正ですが、接待交際に係る一切の費用が損金不算入だった大企業に対しても特例はあります。それが「接待飲食費」です。

ケース2 接待交際費を損金に算入!大企業は接待飲食費で計上しましょう

『取引業者と社員が、接待と称して夜の繁華街に出かけて楽しい時間を過ごし、取引業者との関係を良好にすべく交流をはかりました。その際の領収書には飲食代・テーブルチャージ料・サービス料を含んでおり、接待交際費として計上処理しました。』
これまでならば、ある種当然に接待交際費として処理されていたケースでしょう。中小企業であれば飲食であっても贈答品であっても、措置法で順次上限緩和がなされていました。しかし大企業にとっては、全額不算入の「接待交際費」は敷居が高く、節税にならない部分でした。そこで26年度の特別措置では、【法的に認められる所定の処理を行った「接待飲食費」についてはその50%を損金算入することができる】となりました。
この接待飲食費については、法人税法上で義務付けられている帳簿書類に一定の事項を記入し、飲食費であるという事を明らかにしておかねばなりません。

  1. 飲食等のあった年月日
  2. 参加した得意先他事業に関係のある者等の名前または名称及びその関係
  3. 費用額と飲食店名
  4. その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項

以上が接待飲食費として処理する為の記入事項です。
注意すべき点は、接待飲食費以外の部分については、大企業では変わらず損金算入ができないという所ですが、それまであらゆる接待交際費が全額損金不算入だったのが、飲食に限り半分は損金算入できるというのは大きなメリットとなります。

中には、接待交際費としてこんな費用も認められるのか?という支出もあります。企業間の関係性から、接待と認められるのかどうか不明なもの、それが親子関係企業の場合です。特に建設業など、子・孫会社と言われる関係のある企業にとっては、有益な情報となるかもしれません。

ケース3 親会社の重役を接待した際の自己飲食費は接待交際費になる?

『親会社の取締役ほか重役が集う会食費は、自社の関連企業なので、社外の人への接待としていいのか分からず、社内飲食費として処理をしました。』

接待交際費は、一般に取引業者との関係を求められるもの、得意先との接待の場面にのみ適用されると考えがちですが、基本は【同一会社内のものだけでする飲食費は除外する】です。ですから、親子関係がある企業の取締役や重役と会を催したのであれば、それは社外の人への接待となります。グループ会社の役員や社員と行う飲食も同様です。また100%子会社の役員等も、基本に沿って考えるとすべて接待交際費に含まれます。よって、参加した社員の飲食代を含めて、すべては接待飲食費として摘要処理することが可能です。
ただ、「グループや親会社のだれか一人でも参加していれば接待飲食費になる」という事を意味するのではありません。形式的に社外の人を参加させたと認められる場合は、社内飲食費の扱いとなります。
また、社外の人だからという意味で、会社の従業員や役員の親族を募った会の費用を接待飲食費にすることはできません。これは事業関係者とみなすことはできませんので、もっぱら社内飲食費として処理することとなります。

まとめ

中小企業のみならず、大企業もこれまでの接待交際費の枠から大きく拡充して損金算入することが期待できる法改正を元に、これまでの経理処理を見直すと、さらなる節税につながる事になるでしょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。