課税売上割合とは?計算方法を分かりやすく解説

課税売上割合とは?計算方法を分かりやすく解説

消費税は商品や製品の販売、サービスなどに幅広く課税されるものです。ただし、一部には社会政策的な配慮などから、課税しない取引(非課税取引)があります。事業者は受け取った消費税から仕入れなどにかかった消費税を差し引いて納付しますが、原則として非課税売上に関する課税仕入れなどの消費税は差し引くことができません。

課税売上割合は95%以上であれば全額控除を認めるなど、消費税額の計算に大きな影響を与える論点です。ここでは課税売上割合の基本的な仕組みや計算方法、課税売上が著しく増減したイレギュラー時の対応について解説します。

課税売上割合とは

課税売上割合とは、売上高全体のうち課税売上が占める割合のことです。仕入税額控除の判定や金額を算定するときに使用します。

消費税の基本的な仕組み

まず、課税売上割合の説明に入る前に前提となる事業者から見た消費税の基本的な仕組みについて確認しておきましょう。消費税が課税される商品やサービスを販売した場合、当然販売企業には消費税の納付義務が発生します。このとき、売上にかかる消費税を全額納付すると、流通段階で消費税が累積してしまいます。そのため、事業者は「売上に対する消費税」から「仕入に対する消費税」を差し引いた差額を納付するルールです。この仕入にかかる消費税を差し引くことを、仕入税額控除といいます。

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仕入税額控除について、詳しい解説は下記記事をご参照ください。

経理プラス:仕入税額控除の要件と計算方法とは?押さえたいポイントを解説

仕入税額控除ができない取引もある

消費税は、対価性のある国内取引についてはすべて課税対象とすることを原則としています。しかし、利子や郵便切手、土地の譲渡や貸付け、住宅の貸付け、有価証券の購入や売却など、例外的に非課税取引を認めています。消費税法のルールでは、以下のようになっているのです。

・課税売上に対する仕入れ等の消費税→仕入税額控除が可能

・非課税売上に対する仕入れ等の消費税→仕入税額控除が不可

非課税売上に対する仕入れ等の消費税は、仕入税額控除ができません。なお、輸出取引は非課税ではなく免税扱いです。輸出売上の消費税率はゼロですが、輸出に関連する仕入れなどの消費税は控除することができます。

参考:国税庁 インボイス制度 Ⅰ 適格請求書等保存方式の概要等

インボイス制度による影響

仕入税額控除に関連する大きな改定として、2023年10月より導入されるインボイス制度があります。23年10月以降、仕入税額控除には取引先からの適格請求書等(インボイス)が必要です。経過措置として6年間は部分的な控除が認められますが、こちらもしっかりとチェックしておきましょう。

経理プラス:インボイス制度とは?2023年導入までに企業が対応すべきこととは?

課税売上割合

非課税売上は項目が限定されているので、通常あまり多くは発生しません。それでも、預金利息や社宅の家賃、有価証券の売却益などがあります。これら非課税売上に対する課税仕入れを特定し、税額控除から外すことは相当に手間がかかりますし、課税売上と共通的な費用もあります。そのため、課税売上割合が95%以上で、かつその期間の課税売上が5億円以下の場合は、課税仕入れの全額控除が認められています。なお、課税売上割合が95%未満、またはその期間の課税売上が5億円以上の場合は、個別対応方式か一括比例配分方式での計算が必要です。

課税売上割合の計算方法

課税売上割合の計算式は下記の通りです。

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課税売上高と免税売上高は以下の点に注意して計算します。

・課税売上高は、商品や製品の売上、請負収入、手数料、雑収入などの合計(税抜)

・免税売上高は、商品やサービスなどの輸出売上の合計

・売上値引き、返品、売上割戻しは控除

・貸倒れ金額は控除しない

一方、非課税売上高は土地の売却、受取利息、社宅の家賃、有価証券売却額の5%相当などの非課税売上を集計します。

個別対応方式と一括比例配分方式

課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円以上の場合は、個別対応方式か一括比例配分方式により仕入税額控除を計算します。個別対応方式は、課税仕入れなどにかかる消費税を以下3つに分けます。

・課税売上に対応する仕入れ等の消費税

・非課税売上に対応する仕入れ等の消費税

・両方に共通する仕入れ等の消費税

課税売上と非課税売上に共通する消費税は課税売上割合で按分し、計算式は以下の通りです。

【個別対応方式の計算式】

共通部分の仕入税額控除=共通する消費税額×課税売上割合

実務的には、仕入れなどの消費税を3つに区分できるかがポイントです。明確な根拠で区分できない場合は、次の一括比例配分方式を選択することになります。一括比例配分方式はそれほど難しくなく、仕入れ等に係る消費税額すべてに課税売上割合を掛けて控除額を計算します。

【一括比例配分方式の計算式】

仕入税額控除=仕入等の消費税額×課税売上割合

一括比例配分方式は、事務負荷が低いことがメリットです。一方、デメリットとしては個別対応方式と比べて仕入税額控除が小さくなりやすく、納税額が増えるケースが多いことが挙げられるでしょう。また、一括比例配分方式を適用すると、2年間は継続しなければならないので注意してください。

課税売上割合に準ずる割合

個別対応方式を選択する場合、課税売上に準ずる割合を用いて共通部分の消費税を按分することが認められています。課税売上割合に準ずる割合とは、例えば従事する従業員の数や勤務日数、消費する資産の価額、使用数量、使用面積などです。事前に税務署長の承認が必要ですが、各企業が合理的な基準と判断するものを選ぶことができます。

課税売上割合に準ずる割合は個別対応方式にのみ認められており、一括比例配分方式は課税売上割合しか適用できません。

課税売上割合の計算例

たとえば従事する従業員の数を割合にしたい場合、計算式は下記のようになります。

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課税・非課税の両方に従事する従業員は、分母と分子のいずれにも含めません。また、アルバイトなどについても、従業員と同等の勤務状況にある場合は含めます。国税庁の資料に具体例が記載されていますので、参考にすると良いでしょう。

参考:国税庁 『ー平成23年6月の消費税法の一部改正関係-「95%ルール」の適用要件の見直しを踏まえた仕入控除税額の計算方法等に関するQ&A[Ⅰ]【基本的な考え方編】』

課税売上割合が著しく変動したとき

固定資産の取得によって課税売上割合が著しく変動したときは、3年間の通算課税売上割合で事後的に仕入税額控除を調整する規定が設けられています。仕入税額控除は年度単位で計算するのがルールですが、固定資産のように長期にわたって使用するものは翌期以降に課税売上割合が大きく変動すると、適切な処理が行われたと言えません。仕入時の課税売上割合と通算課税売上割合を比較して、変動差で5%以上、変動率で50%以上の場合に著しい変動と認識し、3年目に税額調整を行います。

まとめ

消費税の仕入税額控除で使用する、課税売上割合について解説しました。消費税の実務に携わっていない方には、聞きなれない言葉や考え方が多かったかかもしれません。まずは消費税の基本的な仕組みを理解し、個別論点の考察を深めると良いでしょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。