寄付金の勘定科目は?法人に必要な分類と具体的な仕訳例・注意点

寄付金の勘定科目は?法人に必要な分類と具体的な仕訳例・注意点

企業や個人事業主が行う寄付は、社会貢献の一環として重要な役割を果たします。しかし、寄付金の会計処理や税務上の取り扱いは複雑であり、適切な勘定科目の選定や仕訳が求められます。寄付金とは、法人や個人が組織・団体などに無償で譲渡する金銭・資産のことを言います。具体的には、拠出金、見舞金、協賛金などが寄付金に該当します。しかし、条件によっては、寄付金として見なされない場合もあるので注意が必要です。この記事では、寄付金に関する勘定科目の分類と具体的な仕訳例、さらには税務上の注意点について詳しく解説します。この記事を通じて、寄付金の処理に関する基本的な知識と具体的な処理方法を身につけましょう。

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寄付金の主な分類

寄付金は、企業や個人が社会貢献の一環として行うものであり、その支出はさまざまな形で行われます。しかし、法人が寄付を行う際には、寄付金の分類が重要です。これは、寄付金の種類によって損金算入の限度額が定められているためです。損金算入とは、法人税法上の経費として認められる支出を指し、これにより企業は税負担を軽減することが可能です。寄付金の分類とその特性を理解し、適切に処理することは、企業の財務管理において重要なポイントとなります。

企業版ふるさと納税

企業版ふるさと納税は、2016年度の税制改正により創設されました。国が認めた地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄付を行う税制優遇制度です。企業版ふるさと納税制度の大きな特徴は、法人税等から最大で約9割の税額が軽減することにあります。寄付額の全額が損金として算入され、その税額軽減効果が約3割、さらに6割の税額控除も受けられるため、企業の実質的な負担は寄付額の約1割に抑えられることになります。

6割分となる税額控除の上限は以下の通りです。

  • 法人住民税:寄附額の4割が税額控除となりますが、法人住民税法人税割額の20%が上限です。
  • 法人税:法人住民税で4割に達しない場合、その残額が税額控除されます。ただし、寄附額の1割が限度かつ法人税額の5%が上限です。
  • 法人事業税:寄附額の2割を税額控除となります。ただし、法人事業税の20%が上限です。

寄付金の見返りとしての経済的な利益は禁止されていますが、企業にとってふるさと納税制度は社会貢献活動として大きな意義を持つ制度です。

指定寄付金等

指定寄付金とは、財務大臣が指定した組織や団体への寄付を指します。これには、公益性と緊急性が高い寄付金が含まれます。具体的な例としては、学校法人の教育研究、オリンピック開催、国宝修復などが挙げられます。指定寄付金の大きな利点は、支出した全額が損金として算入できる点です。そのため、企業がこれらの活動に対して寄付を行う場合、その全額を経費として計上することができ、法人税の負担を軽減することが可能です。指定寄付金は、社会的意義が高く、企業のブランドイメージ向上にも寄与するため、多くの企業が積極的に利用しています。

特定公益増進法人に対する寄付金

特定公益増進法人とは、公共法人、公益法人など(一般社団法人及び一般財団法人を除く)特別の法律により設立された法人のうち、教育や科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など公益の増進に著しく寄与する法人を指します。特定公益増進法人への寄付金は、無条件で全額損金算入とはならないものの、公益性が高いため、一定の限度額内で損金算入が認められます。具体的には、各寄付先への合計額または(資本金など×当期の月数÷12×0.375%+所得金額×6.25%)×1/2の少ない方の額が損金として算入されます。超過した金額については、別枠の一般寄付金額に含めて損金算入が可能です。

一般寄付金

上記で紹介したいずれにも該当しない寄付金は、一般寄付金として分類されます。一般寄付金には、一般法人や自治会などへの寄付金が含まれます。これらの寄付金については、損金算入できる上限額が定められており、具体的には、(資本金など×当期の月数÷12×0.25%+所得金額2.5%)×1/4の範囲内で損金算入が認められます。この上限を超える部分については、損金算入ができません。一般寄付金は、損金性や国への貢献性が他の分類に比べて低いため、損金算入できる額も低く抑えられています。計算式が複雑なため、実際に計算する際は国税庁の公式HPを参照することが推奨されます。

寄付金の仕訳に用いる主な勘定科目

企業や個人事業主が寄付金を支出する際には、その性質に応じて適切な勘定科目を選定し、仕訳を行うことが重要です。寄付金は見返りを求めない無償の供与であるため、仕訳の際には特に注意が必要です。ここからは、寄付金の仕訳に用いる主な勘定科目について詳しく解説します。

寄付金

寄付金は、一般的に用いられる勘定科目です。寄付金という勘定科目を使用するのは、企業や個人事業主が見返りを求めずに金銭や物品を無償で提供する場合です。原則として、寄付金として計上できるのは、「見返りがない」支出のみとなります。将来的に売上につながる可能性がある支出、例えば取引先との関係を強化するための贈答品などは「交際費」という勘定科目が使われます。

寄付金の勘定科目を使用する典型的な例としては、公益社団法人による公共性の高い事業などに対する寄付が挙げられます。例えば、地域社会の福祉向上や災害復興支援のための義援金などが該当します。これらの寄付は、社会的な意義が高く、企業の社会貢献活動として重要な役割を果たします。

交際費(接待交際費)

交際費(接待交際費)は、取引先や事業活動に関係する対象に対して、接待・贈答・慰安などを行うための支出に用いる勘定科目です。この勘定科目は、事業の維持や発展において重要な役割を果たします。具体的には、香典や祝金など、取引先との関係を強化するための支出が含まれます。

例えば、取引先が主催するイベントに協賛金を支出する場合、その支出は交際費として計上されます。これは、協賛金が取引先との関係を強化し、将来的な取引の増加につながる可能性があるためです。ただし、自然災害などで事業継続が難しくなった取引先に見舞金を渡す場合で、被災前の取引関係の維持・回復を目的として災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間において支出するものは交際費等に該当せず、損金の額に算入されます。

広告宣伝費

広告宣伝費は、不特定多数の人へ向けた宣伝となるような支出に用いる勘定科目です。この勘定科目は、企業の商品やサービスの認知度を高めるために重要な役割を果たします。広告宣伝費として計上される支出には、イベントの協賛金などが含まれます。

例えば、協賛金を支払うことで協賛会社として企業名がイベントのパンフレットやポスターに掲載される場合、その支出は広告宣伝費として処理されます。これは、協賛により企業の知名度が向上し、将来的な売上増加が期待できるためです。広告宣伝費は、企業のマーケティング戦略の一環として重要な位置を占めています。

法人の寄付金に関する仕訳例と注意点

寄付金は企業や個人事業主にとって、社会貢献活動の一環として重要な役割を果たします。しかし、寄付金の仕訳や税務処理においては特別な注意が必要です。寄付金の種類や寄付先によって仕訳の方法や税務上の取り扱いが異なるため、正確な理解と適切な処理が求められます。ここでは、法人が寄付金を処理する際の仕訳例と注意点について解説します。

法人が寄付した場合の仕訳例

寄付金の仕訳は、寄付の内容や目的に応じて異なります。以下では、一般的な寄付、宣伝性のある寄付、交際費に該当する寄付の各ケースについて具体的な仕訳例を示し、それぞれの解説を行います。

一般的な寄付を行った場合

法人が社会福祉法人に対して現金で100,000円を寄付した場合の仕訳は以下の通りです。このような寄付は見返りを求めない純粋な寄付であり、寄付金として処理されます。

借方金額貸方金額
寄付金100,000円現金100,000円

この仕訳では、寄付金として計上された金額は法人税法上の損金として認められ、税務上の経費として扱われます。ただし、寄付金が損金として認められる範囲には限度があるため、注意が必要です。

宣伝性のある寄付を行った場合

企業が協賛金を支払い、その対価として自社の宣伝を行える場合、この支出は広告宣伝費として処理されます。例えば、イベントの協賛金として100,000円を支払い、イベントのパンフレットやポスターに自社の名前が掲載される場合の仕訳は以下の通りです。

借方金額貸方金額
広告宣伝費100,000円現金100,000円

この仕訳では、広告宣伝費として計上されることで、宣伝活動の一環として税務上の経費となります。これは企業の売上増加に寄与する可能性があるため、純粋な寄付とは異なります。

交際費にあたる寄付を行った場合

企業が事業に関係のある取引先のイベントなどに協賛金を寄付した場合、この支出は交際費(接待交際費)として処理されます。例えば、取引先が主催するイベントに100,000円の協賛金を支出した場合の仕訳は以下の通りです。

借方金額貸方金額
交際費(接待交際費)100,000円現金100,000円

この仕訳では、交際費として計上されることで、取引先との関係強化を目的とした支出となります。交際費は将来的な利益を見込んだ支出とされるため、寄付金とは区別されます。ただし、自然災害などで事業が難しくなった取引先に見舞金を渡す場合で、一定のものについては交際費以外の支出として損金の額に算入されます。

法人が寄付する際の注意点

法人が寄付金を処理する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらのポイントを理解し、適切に処理することが必要です。

寄付金についての消費税

寄付金は対価を求めない資産の譲渡であるため、消費税は課税対象外となります。しかし、購入した物品を寄付した場合、その購入代金については課税仕入れとなるため、注意が必要です。例えば、購入した備品を寄付した場合、その備品の購入費用に対しては消費税が課されます。

低廉譲渡の処理

低廉譲渡とは、資産を相場よりも著しく低い価額で譲渡することを指します。具体的には、所得税法では時価の2分の1未満と規定されています。低廉譲渡が行われると、税制上の制約が適用されるため、適切な処理が求められます。

低廉譲渡と判断された場合、売り手と買い手それぞれに税務上の影響が生じます。例えば、法人が個人に低廉譲渡を行った場合、法人側には法人税が課され、個人側には所得税(一時所得)が課されます。このとき、以下のように、法人は譲渡益と寄付金として同時に計上し、寄付金の一部または全額が損金不算入となる場合、譲渡益の一部または全部に対して法人税が課税されることになります。

借方金額貸方金額
現金預金40,000,000円土地30,000,000円
寄付金50,000,000円土地売却益60,000,000円

個人事業主の寄付金に関する仕訳例と注意点

寄付金の処理は法人に限らず、個人事業主にとっても重要な財務管理の一部です。特に個人事業主は、寄付金に関する仕訳方法や税務上の取り扱いに注意する必要があります。ここでは、個人事業主が寄付を行った場合と受け取った場合の仕訳例及び注意点について解説します。

個人事業主が寄付した場合の仕訳例

個人事業主が寄付を行う場合、その支出は「事業主貸」という勘定科目を使用して処理します。事業主貸は、事業用の資金を使って事業以外の支払いを記録するための勘定科目です。これは、寄付金が必要経費として計上できないためです。個人事業主は、寄付金を必要経費にはできませんが、確定申告の際に寄付金控除を受けることができます。

例えば、個人事業主が社会福祉法人に対して現金で10万円を寄付した場合の仕訳は以下の通りです。

借方金額貸方金額
事業主貸100,000円現金100,000円

この仕訳において、借方に「事業主貸」を入れることで、事業用資金が事業外の支払いに使われたことが記録されます。寄付金控除を受けるためには、確定申告で適切に寄付金の額を申告する必要があります。

個人事業主が寄付金を受け取った場合の注意点

個人事業主が寄付金を受け取る場合、税法上はこれを「贈与」として扱います。寄付金という名目であっても、贈与税の適用対象となります。贈与税の申告が必要になるのは、年間を通じて基礎控除額である110万円を超える財産寄付を受けた場合です。この場合、贈与税の申告を行わなければなりません。

具体的には、個人事業主が他の個人から無償で金銭や物品を受け取った場合、その価額が110万円を超えると贈与税の課税対象となります。このため、受け取った寄付金の総額を確認し、必要に応じて贈与税の申告を行うことが求められます。

また、贈与税の申告が必要な場合、寄付を受けた年度の翌年3月15日までに申告書を提出し、贈与税を納付する必要があります。基礎控除額を超えない場合でも、記録を正確に残し、税務上のトラブルを避けることが重要です。

まとめ

寄付金は、性質や目的に応じて適切な勘定科目を選定し、正確に仕訳を行うことが求められます。一般的な寄付金、広告宣伝費としての寄付金、交際費としての寄付金の違いを理解し、具体的な仕訳例を参考にすることで、適切な会計処理が可能となります。また、寄付金が損金として認められる理由や、寄付金控除を受けるために必要な書類についても把握しておくことが重要です。特に、税務上の取り扱いについては、専門家の指導を受けることで、適切な処理を行い、税務リスクを軽減することができるでしょう。

寄付金に関するQ&A

企業や個人事業主が寄付を行う際には、その意義や税務上の取り扱いについて正確に理解することが重要です。ここでは、寄付金に関するよくある質問とその回答を通じて、寄付金に関する知識を深めていきましょう。

Q1. 寄付金が損金として認められるのはなぜ?

寄付金が損金として認められる理由は、法人も社会の一員であるという考え方に基づいています。企業は地域社会の一員として、その発展や支援に貢献することが期待されています。実際に、自然災害時の義援金や地域イベントへの協賛金など、多くの企業が地域社会への支援活動を行っています。

法人はその存在自体が地域社会に密接に関わっているため、社会貢献活動としての寄付が認められているのです。このような寄付は、企業が事業活動を円滑に進め、地域との良好な関係を維持するための必要経費と見なされる場合があります。したがって、税務上も一定の条件下で損金として認められ、企業の税負担を軽減することができます。

Q2. 祈祷代は寄付金になる?

祈祷代は寄付金とすることができます。宗教法人が行う公益性の高い活動に対する支援として支払われる場合に、寄付金として認められることがあります。

Q3. 国への寄付金は損金算入できる?

国への寄付金は、損金として全額算入することが可能です。具体的には、国や地方公共団体に対する寄付金は、公益性が高く社会的意義のある支出と見なされるため、全額が損金として認められます。例えば、国公立学校や図書館への寄付、震災時の義援金などが該当します。

また、「認定地方公共団体のまち・ひと・しごと創生寄附活用事業」(企業版ふるさと納税)に対する寄付も全額損金算入が可能です。さらに、一定額の税額控除も受けられるため、企業の税負担を大幅に軽減することができます。

Q4. 寄付金控除申請を行うときに領収書以外に必要なものはある?

寄付金控除申請を行う際には、領収書の他にいくつかの書類が必要です。基本的には、以下の書類が求められます。

  • 寄附金受領証
    寄付先から発行される寄附金の受領証明書です。寄付金の額や寄付先の詳細が記載されています。
  • 確定申告書
    寄付金控除を申請するために必要な書類です。寄付金控除の項目に記入し、他の必要事項と共に提出します。
  • 税額控除を受けるための証明書
    特定の公益法人や認定NPO法人への寄付の場合、これらの団体が適格であることを示す証明書が必要です。

これらの書類を揃えて確定申告を行うことで、寄付金控除を受けることができます。

Q5. 寄付は節税につながる?

寄付は節税の手段として有効です。法人や個人事業主が寄付を行うことで、一定の条件下で寄付金を損金または所得控除として認められ、結果的に税負担を軽減することができます。以下の点に注意することで、効果的に節税を図ることが可能です。

  • 損金算入限度額
    法人税法上の損金算入限度額を超えない範囲で寄付を行うことで、全額を損金として計上することができます。
  • 所得控除
    個人事業主の場合、特定の寄付金については所得控除が認められます。特定寄付金には、国や地方公共団体への寄付、特定公益増進法人への寄付などが含まれます。
  • 税額控除
    認定NPO法人や公益社団法人への寄付は、税額控除が適用される場合があります。これは、寄付金額の一定割合が直接税額から控除されるため、より大きな節税効果が期待できます。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 公認会計士 梶本 卓哉

Kajimototakuya

税務署法人課税部門(税務大学校首席卒業)、大手監査法人や大手投資銀行勤務等を経て公認会計士・税理士事務所開設。税務のみならず会計監査やIPO(新規株式公開)実務に強みを有する。