法人税における勘定科目・仕訳|タイミング別・状況別の違いは?
会社の利益に対して発生する法人税、税理士にまかせっきりで、正しく理解していない方も多いのではないでしょうか。法人税は個人事業主の所得税にあたるものであり、事業年度の損益計算の結果、税額が分かるものです。法人税・法人住民税・法人事業税と種類も多いことから、整理して理解することが重要です。
今回は、法人税の勘定科目について説明します。会計上の処理が理解しやすいよう、具体的な仕訳例とともに説明します。
最後までぜひチェックしてください。
法人税と勘定科目での扱い
法人税は、売上から費用を差し引いた利益(税引前当期純利益)に一定の金額を加算減算した金額となり、そこに法人税率を掛けて算出します。
まずは、法人税・法人住民税・法人事業税の3種類の基礎知識を見ていきましょう。
法人税とは?
法人が納める主な税金は、法人税・法人住民税・法人事業税の3種類に分けられます。
法人税は課税所得×法人税率で算出されます。税率は会社の規模により異なり、例えば資本金1億円以下の法人であれば、年800万円以下に対し15%、年800万円超に対し23.20%の税金がかかります。法人税は、所得が赤字の場合や収益事業を行わない公益法人等は納税を免除されます。また、法人税は費用計上しますが損金算入はできません。
法人住民税は、事業所を設けている都道府県や市区町村に対して法人が納める地方税です。法人住民税は「法人税割」と「均等割」という二つの項目の合計額によって税額が決まります。
法人住民税も損金算入できません。また、法人住民税のうち均等割は赤字であっても納付する義務があります。
法人事業税は、法人が事業を行う上で利用する道路や消防などの公共サービス・施設の経費の一部を負担する目的で都道府県から課される地方税です。
法人事業税額は、課税所得×法人事業税率で算出されます。税率は地方自治体により異なります。
法人事業税は、所得が赤字の場合や収益事業を行わない公益法人等は納税を免除されます。ただし、外形標準課税が適用される法人は赤字でも納税があります。また、法人事業税は、損金算入できます。
法人税の勘定科目の扱い
勘定科目の表記は会計基準に従います。一般的には、3つの税金をまとめて「法人税等」または「法人税、住民税及び事業税」と表示します。
表示位置は、損益計算書の税引前当期純利益の次になります。なお、事業税(付加価値割及び資本割)は、販売費及び一般管理費として表示します。
【タイミング別】法人税の勘定科目・仕訳
法人税は、決算時・確定申告時など、そのタイミングによって異なる処理を行います。ここでは、実際の仕訳を取引事例とともに見ていきましょう。
決算時
法人税は決算後2か月以内に納付をする必要があります。決算においては、その年度の損益からその年度に負担すべき法人税額を確定させ、未払法人税等として計上します。
仕訳の例:決算で法人税等を計算したところ、10万円だった
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
法人税等 | 100,000 | 未払法人税等 | 100,000 |
確定申告時
確定申告の際には、実際に納付を行います。
仕訳の例:法人税等10万円を納付した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
未払法人税等 | 100,000 | 現預金 | 100,000 |
中間申告を行う場合
前事業年度の法人税額が20万円超の法人の場合は、法人税の中間申告というものが別途必要になります。中間申告とは、事業年度の途中にその年の税額を概算で計算し、申告と納付を行うものです。中間申告時には決算時に納める税金の額が確定していないため、前事業年度の法人税額の半額の税金を納付するのが一般的です。
<中間申告時>
中間申告では、支払い済みの税金を「仮払法人税等」などの勘定科目で仕訳します。
仕訳の例:中間申告において、法人税等5万円を納付した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
仮払法人税等 | 50,000 | 現預金 | 50,000 |
<決算時>
中間申告を行った場合、年度末の決算においては、確定した法人税額から、中間申告時に既に支払った仮払法人税等を確定申告時の納税額から差し引きます。
仕訳の例:決算で法人税等を計算したところ、10万円だった。残り5万円を納める必要がある
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
法人税等 | 100,000 | 仮払法人税等 | 50,000 | |
未払法人税等 | 50,000 |
<納付時>
仕訳の例:残り法人税5万円を納付した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
未払法人税等 | 50,000 | 現預金 | 50,000 |
経理プラス:法人税の中間申告とは?目的や申告方法を基礎から解説!
特殊な状況における法人税の勘定科目・仕訳
法人税の基本的な仕訳が分かったところで、次はより細かい仕訳を確認していきましょう。追徴課税をされた場合、法人税の還付を受けた場合などの会計処理を紹介します。
追徴課税
追徴課税とは、本来ただしく納付されるべき税金が納められていなかった場合に、その差額分を追って徴収される税金です。この場合、不足税額だけでなく、罰則的な意味合いの利息として延滞税も付帯して発生します。追徴課税は前の事業年度における不足分であるため、当事業年度の法人税とは異なる勘定科目である「法人税等追徴税額」で仕訳を行います。
不足分とは別に、ペナルティとして過少申告加算税や延滞税が課された場合、それらは当該事業年度の「租税公課」などの科目で会計処理します。
仕訳の例:税務調査で決算書に指摘があり、2万円の追徴税が課された
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
法人税等追徴税額 | 20,000 | 未払法人税等 | 20,000 |
仕訳の例:ペナルティとして、延滞税1万円を現金で納付した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
租税公課 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
還付法人税
中間納付した税額より決算時に確定した納付額が少なかったなど、何等かの理由で支払済みの税金の還付を受ける場合は、「仮払法人税等」という勘定科目で仕訳を行います。この場合、まだ還付を受ける前であれば未収額について現金や商品、売掛金と同じ資産である「未収還付法人税等」の勘定科目で計上します。
仕訳の例:5万円の法人税の還付を後日受けることとなった
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
未収還付法人税等 | 50,000 | 仮払法人税等 | 50,000 |
繰戻還付
繰戻還付とは、過去に遡って法人税等の還付金を受けることを指します。例えば、前事業年度に黒字であったため法人税を納めたが、当事業年度には赤字になってしまったとします。この場合、当事業年度の赤字と過去の黒字を遡って相殺し、相殺後の税所得と法人税率で再計算した税額との差額を還付金と言う形で返してもらうことができます。
この場合受ける予定の繰戻還付を「法人税等還付税額」の勘定科目で仕訳します。まだ現金を受け取っていない場合は、未収金として資産計上します。
仕訳の例:5万円の法人税の還付を後日受けることとなった
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
未収還付法人税等 | 50,000 | 法人税等還付税額 | 50,000 |
繰延税金資産や負債の増減
会計上の損益と税務上の損益を認識する時点に差異がある場合、その差異による不一致を調整するため、税効果会計を行います。具体的には、一時的な差異によって将来の法人税が減る場合には「繰延税金資産」、将来の法人税が増えるときには「繰延税金負債」として仕訳し、その反対には「法人税等調整額」の勘定科目で計上します。
仕訳の例:一時差異により将来の法人税が5万円増えると見込まれた
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
法人税等調整額 | 50,000 | 繰延税金負債 | 50,000 |
仕訳の例:前事業年度に発生した一時差異5万円が解消した
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
繰延税金負債 | 50,000 | 法人税等調整額 | 50,000 |
法人税等はタイミングをしっかり理解することが大切
今回は、法人税等の会計処理について説明しました。法人税は期中に支払ったものではなく、期中の利益に対して発生するものであることから、決算時には未払法人税という負債を計上しておくことが注意点として挙げられます。
これらの経費精算や会計処理には、会計ソフトを利用することで、経費に関わる全ての処理を効率化できます。
法人税の勘定科目についてのQ&A
最後に、法人税の勘定科目についてよくある疑問についてお答えします。
Q1.法人税は損金として計上できる?
法人税・法人住民税・法人事業税のうち、法人事業税のみ費用計上して、損金にもなります。
Q2.法人税等以外で法人が納める必要がある税金は?
法人税のほかに、法人住民税、事業税、地方法人特別税、消費税等が挙げられます。
Q3.法人の決算の時期は?
法人の決算時期は、1年以内の任意の時期で設定することが可能です。
個人事業主の場合、事業期間は1月1日~12月31日の1年間と定められています。一方、法人は決算日を自由に設定できるため、繁忙時期などとかぶらないように設定するのがよいでしょう。
Q4.確定申告が遅れた・忘れた場合にペナルティはある?
確定申告が遅れた場合、「期限後申告」となり、本来納めるべき税金に加えて延滞税等のペナルティが発生します。
また、確定申告を行わないまま放置していると、「無申告」と見なされる可能性があります。こうなると延滞税に加え、無申告加算税や重加算税が加算されます。
原則として、無申告加算税は納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円超の部分については20%の金額が増えることとなります。重加算税の場合は、税額に対して40%の金額が増えることとなります。大きな違いとなるため、気が付いた場合にはすぐに申告するのが望ましいでしょう。また、2期連続で期限後申告の場合、青色申告が取り消されますので、注意しましょう。
Q5.納付した法人税額が多すぎた場合はどうすれば良い?
法人税の納めすぎがあった場合は、法人税申告書の提出期限から5年以内に限り、「更正の請求」を行うことができます。この請求が税務署に認められれば、税金が還付されることとなります。
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