前払費用など、まちがいやすい消費税の取扱い

前払費用など、まちがいやすい消費税の取扱い

消費税の課税対象と非課税対象はどんなもの?

物品やサービスを金銭の授受を伴って受けると、課税される税金、それが消費税です。2019年10月1日からは原則的に商品代金につき10%が課税され、商品を受け取る際に同時に販売元へ支払い、年度末に、販売を行った事業者がまとめて国に納入することとされています。ただし、品目によっては軽減税率が適用されて8%の課税となるものもあります。
この消費税には、課税取引と非課税取引があります。消費税法で定められた「消費に馴染まないもの」「社会政策的配慮によるもの」として挙げられている15項目は、課税するにふさわしくないものとして非課税とされますが、この15項目以外は基本すべてが課税対象となると考えて間違いありません。

では、実際の消費取引がなされる場面で、消費税の取扱はどのようになっているか、間違えやすい勘定科目を例に検証してみましょう。

印紙は課税されるのか?

主に、工事請負契約書や公的書類の作成時、また登記取得に必要となる収入印紙。会計上は、「租税公課」として仕訳を行い、取扱としては現金と同等の扱いとなります。建設業や士業に従事している事業者の経理を行う人にとっては、処理扱いの多い科目ですね。
この印紙は、『購入時は非課税 使用時に課税される』と考えられます。しかし、印紙は納めた時も貼った時も課税仕入れとはなりません。事実、非課税対象です。購入場所は郵便局や公的施設の出先取扱出張所という場面が多くなりますが、郵便局で購入すれば、改めて税率を乗じた価格を支払う事はありません。しかし、商品の買取や販売を行う金券ショップで購入・売却すれば課税対象となります。これは、持ち込まれたものはすべて一律「品物」として扱われるという経緯から、持ち込みの品そのもので価値を判断し、買取や販売を行っているためです。印紙を頻繁に使用する企業では、消費税課税取扱いとなった印紙を使用すれば、消費税節税につながる可能性が考えられます。

また、国税庁は、「課税文書を作成する場合に、消費税額等が区分記載されているとき又は、税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかとなる場合には、その消費税額等は印紙税の記載金額に含めないこと」としています。文書貼付という形で納める為、文書数を削減・少額納付の書面で分割納付できないかを検討することで、印紙の納付額を抑える事もできます。
消費税の課税事業者が、消費税額等の課税対象取引にあたり、この取扱いの適用がある課税文書は、 第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)・ 第2号文書(請負に関する契約書)・ 第17号文書(金銭又は有価証券の受取書) の3つとしています。

協賛金を支払った場合の消費税はどう処理すれば?

夏祭り等のイベントが増える季節になると、各所から付き合いで協賛金をお願いされる事業所も多いものです。その際の協賛金には消費税は課税されるのでしょうか。

実際に帳簿付けする時、注意する点は、協賛金が「寄付」なのか「交際・宣伝として効果があるのか」で異なるという事です。そもそも、消費税は、「物品やサービスなど対価を払い受け取るもの」に課税される前提にあります。寄付は、金品を提供するにとどまり、対価性がない取引となるため課税仕入れにはなりません。ただ、協賛金の提供をした企業名等を、イベントウェブページやチラシで掲載する場合には、単に一方的な提供ではなく、宣伝広告効果が期待されるため、対価性があり課税仕入れとなる点に気をつけておきましょう。
金品のうち、金券で協賛した(ビール券・商品券など)場合も同様に非課税取引です。
お酒やビールの差し入れ・寸志贈答品など、物品で協賛した場合は、購入費は課税仕入となります。

前払い費用(短期)の消費税課税はどのタイミング?

会社会計の処理を行う場面で、「地代、家賃や賃借料、コピーなどのリース料、保険料、手形割引料」など、前払いや未経過分が、各月や年度をまたいで発生する場合は少なくありません。前払いした費用について消費税の取り扱いはどのようにしたらいいのでしょう。
消費税の課税資産譲渡や課税仕入れの時期は、原則は資産の引渡しやサービスの提供があった時となります。これは所得税、法人税の場合も同じです。
工事代金の前受金を受け取った。機械購入の際に前払金を支払った。どの企業でもよくある場面ですが、その受取や支払の時期に関係なく、引渡しやサービスの提供が実際に行われた時が、売上または仕入れの時期となります。未収金や未払金も同じで、代金の決済の時期ではなく、資産の引渡しやサ-ビスの提供があった時が売上げや仕入れの時になります。
なお前払費用のなかで、短期前払費用は、所得税又は法人税の取扱いにより必要経費の額又は損金の額に算入することが認められているので、支出した課税期間の課税仕入れに含めることができます。この場合、法人税で損金処理を行っておくのが前提で、消費税も仕入れの税額控除を受ける事ができます。

企業補助金を受けた事業者の消費税の扱いはどうなる?

毎年度、国税庁や公的機関から、年度内に対応した補助事業予算が組まれる事があり、事業者が助成金を受けて事業運営を計るということも珍しくありません。
補助事業に伴う補助金収入についての考え方は、消費税法上不課税取引に該当するとされています。これは文字通り、非課税の基本となっている「社会政策的配慮」によるものだからです。しかし一方では、補助事業に伴う事業経費は、控除対象仕入税額として仕入税額控除することも可能となっています。 補助事業によっては、課税売上はゼロとなり、同事業にかかった経費について控除対象仕入税額に算入をした場合は、その消費税相当額の還付を受けることができるということになります。
反面、国としては補助金を交付したうえに消費税を還付することになるので、重複してしまうという結果に陥ってしまいます。なので、この調整策として、控除対象仕入税額のうち補助金に係る部分(消費税 の確定申告において控除対象仕入税額に算入した金額に限る)については、全国中小企業団体中央会以下、系列傘下団体が返還を求めています。

最後に

以上、注意すべき消費税の取り扱いについてまとめてみました。経理担当の皆さんの参考になれば幸いです。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。