【経理調査】紙書類処理 『月10時間以上』が半数近く?

【経理調査】紙書類処理 『月10時間以上』が半数近く?

国内では、テレワークとオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」をはじめとする柔軟な働き方の広がりや、デジタル庁の創設などによって、デジタル化の機運が着実に高まっています。その中でペーパーレス化を通じて企業の生産性向上と柔軟な働き方の実現を目指すプロジェクト「紙に縛られない働き方プロジェクト」 が始動していますました。今回は「紙に縛られない働き方プロジェクト」 の概要と、このプロジェクトをはじめるきっかけとなった、経理を含むビジネスパーソンの働き方の調査結果をお伝えします。

調査概要

<調査概要>
調査対象:全国のビジネスパーソン
調査期間:2021年9月22日~9月24日
調査手法:インターネットリサーチ
有効回答数:1,000件(営業・営業企画300人、総務・人事・経理 各200人、その他部署100人)

経理の49.5%が紙書類処理に月10時間以上費やしている

デジタル化の機運が高まる一方で、業務のデジタル化が順調に進んでいる企業はいまだ少数派というのが現状です。ビジネスパーソン1,000人を対象に実施した調査によると、所属する部署における業務のデジタル化について69.1%が「進んでいないと思う」と回答しています。実際、ビジネスパーソンが紙書類のタスク処理に要する1かカ月あたりの時間は、「10時間以上」が最も多く全体の32.0%を占める結果でした。さらに、「10時間以上」と回答した割合を職種別に比較すると、営業・営業企画部門では24.0%に対し、バックオフィス部門(人事、総務、経理)では37.7%、経理のみでは49.5%と、職種により差があることが分かりました。

テレワークの妨げとなっているのは紙書類

テレワークの実施状況について「100%テレワークで勤務している」または「100%ではないがテレワークを実施している」と回答した413名に対し、コロナ禍の状況下で紙書類が理由で出社や外出をした経験があるかを聞いたところ、「ときどきある」が44.3%、「稀にある」が20.6%、「頻繁にある」が19.6%で、計84.5%が「経験がある」ことが分かりました。

また、テレワークが実施できる環境に移行できた理由として、社内外の紙書類のペーパーレス化が上位に入っています。

実際経理プラス会員へ行った調査でも、業務は基本的に出社し行っていると回答した担当者は約74.7%にも上ります。その一方で環境が整えば週に1日以上リモートワークに取り組みたいと考えている担当者は約68.5%に上りました。
その中でも出社と在宅勤務の割合を半々にしたいと回答した方は約40.6%と多くの割合を占めており、リモートワークへの取り組みが進む中、在宅勤務のメリットデメリットを実感した上で、業務効率のいい働き方を求める方が増えています。

「紙に縛られない働き方プロジェクト」とは

このような調査から、企業が柔軟な働き方の選択肢をも持てる社会を実現すべく生まれたのが、 「紙に縛られない働き方プロジェクト」です。このプロジェクトでは、紙書類に関するタスク処理時間の削減による生産性向上を目標として掲げており、ペーパーレス化による業務改善の支援を行います。
具体的には、ビジネスパーソンが紙書類に関するタスクの処理に費やす時間について、「月10時間以上」の割合が現状32.0%であるのに対し、20%以下になっている状態を目指します。

業務デジタル化の促進

紙書類に関するタスクを減らすためには、業務に関するシステム化が必須となります。その中でも企業の中で紙書類を扱うことが多い「経費精算」「採用・評価管理」「契約」業務についてペーパーレス化を促進すべく、下記の状態を目指しています。

  • 経費精算業務におけるシステム導入率 (現状)52.7%※1 ⇒(目標)70%以上
  • 採用管理業務におけるシステム導入率 (現状)32.3%※2 ⇒(目標)45%以上
  • 評価管理業務におけるシステム導入率 (現状)36.3%※2 ⇒ (目標)50%以上
  • 電子契約の利用率 (現状)6.8%※3 ⇒(目標)20%以上

また、企業の「紙に縛られない働き方」実現につながるアクションを促進するため、企業の取り組み事例の発信や、ペーパーレス化と働き方の課題を明らかにする共同調査の実施を予定しています。

※1 企業の経理担当者を対象に実施した経理業務に関するアンケート調査(ラクス調べ)
※2 企業の人事・総務担当者を対象に実施した業務に関するアンケート調査(ラクス調べ)
※3 日経BP総合研究所イノベーションICTラボ 2021年10月調査

プロジェクト立ち上げ企業のコメント

このプロジェクトは、クラウド型経費精算システム「楽楽精算」 などを提供する株式会社ラクス、人財活用プラットフォーム「HRMOS」シリーズなどを提供する株式会社ビズリーチ、電子契約サービス「クラウドサイン」などを提供する弁護士ドットコム株式会社の3社により立ち上げられました。
既に賛同企業は30社を超えており、今後も取り組みは広がっていく予定です。

株式会社ビズリーチ

取締役 HRMOS事業 事業部長

古野了大 氏

当社が運営する人財活用プラットフォーム「HRMOS」シリーズは、採用管理、人材管理、評価業務などの人事業務のデジタル化を支援するサービスです。人事業務は、従業員一人ひとりの大切な情報を扱うにもかかわらず、紙による管理によって管理ミスや情報の点在化等の問題が発生します。本プロジェクトへの参画を通じて、人事部門のペーパーレス化、デジタル化を啓発し、企業が従業員の柔軟な働き方と活躍を支援できるよう推進してまいります。

弁護士ドットコム株式会社

取締役 クラウドサイン事業部長

橘大地 氏

当社は、紙とハンコの文化が根強かった契約締結を変えるべく、電子契約サービス「クラウドサイン」の普及活動を行なってまいりました。政府への提言や啓発活動を通じ、日本の紙による契約文化からの脱却・デジタル化を目指しています。今回、本プロジェクトへの参画を通じて、より一層デジタル庁の掲げる「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を実現していきたいと考えております。

株式会社ラクス

取締役 クラウド事業本部長

本松慎一郎 氏

当社は、約20年に渡り、ITサービスを通じてデジタル化を継続的に推進し、企業の成長を支援してまいりました。近年、デジタル化の機運は確実に高まっていますが、業務のデジタル化による業務改善を着々と進めている企業ばかりではなく、むしろ紙やハンコを前提とした業務フローから抜け出せず、「紙に縛られた働き方」を余儀なくされている企業が数多くあるというのが現状です。本プロジェクトの活動を通じて、一社だけでなく共通の志を持つ複数の企業と共に「ペーパーレス化」の課題に取り組むことにより、企業のペーパーレス化による「生産性向上」と「紙に縛られない働き方」の実現を加速させ、企業の成長とそこで働く人々の幸せに貢献していきたいと考えております。

また、「紙に縛られない働き方プロジェクト」では活動の輪を広げ、社会全体のムーブメントへと発展させるべく、賛同企業・団体を募集しています。
プロジェクトの詳細および、賛同企業のお問合せについては下記特設サイトをご確認ください。

「紙に縛られない働き方プロジェクト」特設サイトはこちら

中小企業庁もデジタル化を後押し

プロジェクトの記者発表会では、中小企業庁の経営支援部経営支援課 課長補佐である小池明氏をゲストスピーカーに迎え、トークセッションを行いました。トークセッションでは、「企業における紙の業務と、それによって起こる働き方の問題」「紙に縛られない働き方を広げるために、これまで業務のデジタル化が難しかった企業でもできること」「『紙に縛られない働き方』を実現した先の将来像」の3つのテーマについて話し合いました 。

ゲスト登壇した中小企業庁の小池氏は、デジタル化による業務改善事例として「先日お会いした鉄鋼業界の社長さんは、以前は締め作業のために月末は夜遅くまでほかの仕事ができず、お困りでした。ところが、新型コロナ感染症により顧客訪問ができ出来なくなったことを契機に、電子請求書発行システム「楽楽明細」 を導入し、請求書や手形の電子化を一気に進めたところ、経理担当の残業も減り、社長も月末でも外出できるようになったそうです」と紹介。中小企業に向けた今後のデジタル化支援策について、「中小企業庁では、令和3年度補正予算にて措置された『中小企業グリーン・デジタル投資加速化パッケージ』の取組として新たなデジタル分野の支援策を準備中です。中小企業のデジタル化にぜひお役立てください」と話しました。

まとめ

これからも業務のデジタル化は課題としてあげられることが予想されます。ペーパーレス化を進めることは業務効率化だけではなく、個人にとってよりよい働き方につながります。2022年の電子帳簿保存法改正、2023年に迫るインボイス制度の開始など、対応のシステム導入や社内ルール・体制の整備が企業に求められるこのタイミングで、もう一度業務のデジタル化について検討してみてはいかがでしょうか。

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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

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※:デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より