経理担当者がスキルアップするためのビジネス文書作成ポイント
経理担当者に求められる文書とは
経理担当者には文書を作成する機会がたくさんあります。宛先は部内や取引先、官公庁、電力会社など多岐にわたるでしょう。また、作成する文書の種類も見積書から請求書、納品書の他、依頼文や通知文などさまざまです。
しかし、多くの文書を作成しても、その目的はすべて「会社の利益を正しく計算する」こと。つまり経理担当者の文書作成で大切なのは、上手い文章を書くことではなく、相手に正しいアクションを起こさせることなのです。
そしてこの文書をいかに効率的に作成できるかが、経理担当者にとって必要な文書スキルの全てと言っても過言ではありません。
ここでは経理担当者向けに、伝わるビジネス文書を作成する5つのスキルアップ法をご紹介します。具体的な文書例も挙げていきますので、参考にしてください。
経理担当者が文書作成でスキルアップするための5つのポイント
余計なことを伝えない
相手に正しいアクションを起こさせる文書に不可欠な要素は、「内容」と「期日」が明確であることです。
ところが、これに余計な情報がついてくると相手が深読みしてしまい、結果として誤解する余地が生じます。たとえば、次の文面をご覧ください。
弊社は3月決算法人であり、このたび、第10期決算の準備のため、
現在関係各位宛てに請求書等の早めのご送付をお願いしているところです。
お忙しいところ恐れ入りますが、御社からの3月分の請求書を早めに送っていただけないでしょうか。
3月5日に役員会議がございますので、3月3日までに頂けると幸いです。
こちらは経理担当者が、決算のため取引先A社に3月分の請求書を早めに送るよう依頼するものです。丁寧さは感じられますが、余計な情報が多すぎます。
何月決算であろうが、第何期の決算であろうがA社には関係ありません。さらに重要なのは、3月3日の期日であるのに、その直前に3月5日という無関係な記載があること。これによって、A社が期日を誤認する可能性があります。
この文書の目的は「3月分の請求書を3月3日までに送付させること」です。そこで余計な情報はカットすると、以下のようになります。
弊社が決算のため、“3月分の請求書”を“3月3日”までに頂けないでしょうか。
ご都合がつかない場合はご連絡ください。
お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
この文書であれば、少なくとも誤解の余地はなく、相手に正しいアクションを起こさせることができます。
受け手の立場に応じて内容を変化させる
相手に正しいアクションを起こしてもらうためには、受け手の立場に応じて情報量を工夫することが必要です。
たとえば社内の営業課長に対し、理由を告げずに通常より早い期日で経費精算書を提出するように伝えるとどうなるでしょうか。受け手の課長は、立場的に部下にこのことを指示しなければなりません。
しかし指示する側は、理由なく指示させられることを嫌がります。部下から「なんで急に?」「この先もずっとその期日ですか?」などと、質問されることが分かりきっているからです。
情報量の工夫とは、相手の立場に立って「どうしたらこの人がアクションしやすいか」という観点で情報を補足することです。先の例の場合、なぜ早く提出することになったか、たとえば「会議が早まった」「社長が急きょ融資の相談に行くことになったため、試算表が必要となった」等の理由を一言添えることで、課長は安心して部下に指示することができます。そうすれば、かえって早く結果を得ることができるでしょう。
読みやすくなる工夫をする
ここまでは文書内容の工夫について説明してきましたが、次は見た目についてお伝えしていきます。
いくら内容がいい文書でも、読みにくい場合が少なくありません。たとえば、こんな文書を作成していないでしょうか。
- 1つのセンテンスが長い
- 句読点が少ない又は多すぎる
- 「これ、あちら」など指示代名詞が多い
- 重要な箇所が、ぱっと見て分かる工夫がない
文書はいくら内容が秀逸でも、文章が長いものや読みやすくする工夫がないものは頭を使わないと読めません。
そして、相手が頭を使わないとわからないような文書は、経理担当者が発信する文書として適切とは言えないでしょう。相手に誤解させたり、読むのを後回しにされたりすると、正しいアクションを起こしてもらえない可能性があるからです。
読みやすい文書の特徴には、次のような点が挙げられます。
- 1つの文章が短く、内容が少ない
- 句読点が適切な位置にある
- 「この〇〇は…」はなど、具体的な記載を意識している
- 重要な部分が、太字や色文字などになっている など
また、冒頭に結論が書いてある、またはタイトルや送付状に相手への要望や目的(質問・回答・報告・依頼 など)が書かれていると、見ただけで何の文書か分かります。
するとその後の予測がしやすく、読みやすい文書となるのです。
読みやすい文書の作成能力は、一朝一夕で身に付くものではありません。そのため、文書作成のたびに読みやすい文書になっているか自分で意識的にチェックしたり、時には同僚や上司など他人の目を借りて読んでもらったりしながら、徐々に自分のスタイルを確立していく努力が必要になります。
定型文のメリットデメリットを知る
よく使う文書は早めに定型化し、データを整理しておきましょう。そうすれば、効率的に文書を作成できるようになります。
しかし定型文を使いこなすには、定型文を使うメリットとデメリットを知っておくことが必要です。定型文のメリットとデメリットには、次のようなものが考えられます。
- 必要箇所を変更するだけで、スピーディに完成する
- 様式ミスや情報の記載漏れがなくなる
- 受け手が文書に見慣れる など
- 時候の挨拶が季節に合っていない場合がある
- 取引先名、価格、年月日などが前回のままになってしまう恐れがある
- 変換ミスなど、誤字がそのままになってしまう恐れがある
- 前回からの変更点があっても、受け手に気が付かれにくい など
特に取引先名や価格は致命的なミスであり、会社の信頼に関わるので注意しましょう。
しかし定型文を使いこなせば、文書作成を大幅に効率化できます。定型文ならではの間違いやすい箇所を把握し、しっかりチェックしてから発信することを心掛け、ぜひ定型文を使いこなしてください。
社内での送受信体制を整備する
社内で文書を送受信する際は、窓口を統一すると効率的です。
成長過程にある中小企業などでは、部署間の窓口が確立されておらず、社員同士が個別に必要な連絡を取り交わしている例が少なくありません。しかしそうすると、事務連絡で終わるはずが社員同士のコミュニケーションツールと化してしまい、挨拶文やその返信などに余計な時間が割かれやすくなります。
また、たとえばベテラン社員に対して個別にメールで資料作成を依頼した新人経理担当者が、そのベテラン社員から「それは何のために必要な書類か」などと詰められ、かえってフォローに時間を割かれたという例も少なくありません。
効率的にビジネス文書を作成するためには、社内文書についてやり取りの窓口となる人物を決め、事務的に行う方がロスを押さえられます。結果、ビジネス文書による情報伝達がスムーズになり、必要なことが伝わりやすくなるはずです。
まとめ
伝わるビジネス文書作成のスキルアップ法として、次の5点を取り上げてきました。
- 余計なことを伝えない
- 受け手の立場に応じて内容を変化させる
- 読みやすくなる工夫をする
- 定型文のメリットデメリットを知る
- 社内での送受信体制を整備する
社内体制の改善などは社内への働きかけが必要なため、できるだけ早い段階から着手すると良いでしょう。また、慣れるまではビジネス文書を作成する際、自身もしくは周囲の人に見てもらい、客観的に内容をチェックすることも大切です。ここでお伝えした内容を1つずつクリアしながら、スキルアップを目指してください。
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