消費税の正しい計算方法は?申告の手順や注意点を解説

消費税の正しい計算方法は?申告の手順や注意点を解説

消費税の計算では標準税率と軽減税率という2つの税率があり、それぞれの売上を分けて計算しなければなりません。納税額の計算方法には、一般的に用いられる本則課税のほか、計算を簡素化できる簡易課税があります。

本記事では、消費税の計算方法やインボイス制度の変更点、申告方法などを解説します。

消費税とは?

消費税とは、商品・サービスの利用に課税される間接税のことです。
ここでは、消費税の仕組みや、課税対象になる取引、税率について解説します。

消費税の仕組み

消費税は、商品やサービスを利用した消費者が負担し、消費税を預かった事業者が、申告・納付する税金です。このように、税の負担者と納税者が異なる税金を間接税と呼び、納税者が直接税金を支払う直接税と区別されます。

商品は、一般的に製造業者から流通業者、小売業者という流れで消費者のもとに届き、それぞれ中間の取引ごとに消費税が発生します。これらの各段階で二重、三重に税が課されることのないよう、 設けられているのが仕入税額控除という制度です。

仕入税額控除は、事業者が消費者から受け取った消費税から、仕入れ先などに支払った消費税を差し引いて納付するというルールであり、税が累積しない仕組みとなっています。

消費税の課税対象となる取引・非課税となる取引

消費税には、課税される取引と課税されない取引があります。

課税されるのは、次のような取引です。

  • 国内で行われる事業者が事業として行う取引
  • 対価を得る取引
  • 資産の譲渡・貸付

国内で行われる、ほぼすべての商品の販売・サービスの提供などが消費税の対象です。また、外国から商品を輸入する取引にも輸入時に課税されます。

一方、非課税になる主な取引は、次のとおりです。

  • 土地の譲渡・貸付
  • 有価証券の譲渡
  • 支払手段の譲渡(小切手・約束手形など)
  • 国等が行う一定の事務に係る役務の提供(徴収される手数料など)
  • 学校教育

いずれも、消費税に馴染まない取引であることや社会政策的な配慮から、非課税とされています。

消費税の税率

消費税は、2019年に8%から10%に引き上げられました。しかし、一部の品目については従来の8%が継続されており、10%の標準税率と8%の軽減税率が混在している状態です

消費税は、国税の消費税と地方消費税の合計額であり、2025年時点の税率の詳細は次のとおりです。

標準税率軽減税率
消費税率7.8%6.24%
地方消費税率2.2%1.76%
合計10%8%

軽減税率の対象になるのは、次の品目です。

  • 酒類、外食等を除く飲食料品
  • 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞

対象になる飲食料品は、酒類以外の一般的な飲食料品の購入、テイクアウト・宅配、学校給食等で提供される飲食料品などが対象となります。外食やケータリングは対象外です。

定期購読の新聞は紙のみが対象で、インターネットを通じて配信される電子版は「電気通信利用役務の提供」に該当し、「新聞の譲渡」に該当しないため、対象になりません。

参考:国税庁「消費税および地方消費税の税率」

消費税の基本的な計算

消費税の基本的な計算について、税込み・税抜きの計算と端数処理をみていきましょう。

税込・税抜の計算方法

商品価格から税込・税抜価格を計算する方法は、次のとおりです

税込の計算方法10%:税抜商品価格×1.18%:税抜商品価格×1.08
税抜の計算方法10%:税込の商品価格÷1.18%:税込商品価格÷1.08
消費税額の計算方法10%:税抜商品価格×0.18%:税抜商品価格×0.08

たとえば、税抜5,000円で消費税率10%の商品の場合、税込価格は次のように求めます。

  • 税込価格:5,000円×1.1=5,500円

税込6,600円で消費税率10%の商品の税抜価格は、次のとおりです。

  • 税抜き価格:6,600円÷1.1=6,000円

5,000円で消費税率10%の商品の消費税額を求める場合、次のように計算します。

  • 消費税:5,000円×0.1=500円

消費税の端数処理

消費税の計算では小数点以下の数字が出ることもあり、端数処理が必要です。切り捨て・四捨五入・切り上げのいずれかを適用するかは、税額計算と請求書の場合で異なります

消費税の仕組みで説明したように、消費税では二重課税を防ぐため、事業者は売上の消費税額から仕入れ等で支出した消費税額を差し引いて納税する仕入税額控除を行います。仕入税額控除の税額計算では、課税標準額は1,000円未満、消費税は1円未満の端数があるときは切り捨てるというルールです。

一方、請求書の端数処理は、事業者に委ねられています。切り捨て・四捨五入・切り上げのどれでも選べますが、税額計算の切り捨て以外を選択する場合は、使い分けに注意が必要です。また、処理方法は取引先ごとに異なるとトラブルの原因となるため、統一したほうがよいでしょう。

消費税の計算方法

消費税の納税額を計算する方法には、すべての取引を集計して計算する本則課税と、売上げにかかる消費税額を基礎にして納税額を計算する簡易課税の2通りがあります。

それぞれの内容とメリット・デメリットを解説します。

本則課税

本則課税とは、一般的に用いられる消費税の計算方法です。「原則課税」や「一般課税」とも呼ばれます。売上のかかる消費税から仕入・経費にかかった消費税を差し引いて納税額を算出します

  • 消費税額=売上にかかる消費税額-仕入などにかかる消費税額

一例として、1年の売上金額が1,000万円で仕入・経費にかかった金額の合計が300万円、消費税率は10%で計算してみましょう。

  • 売上にかかる消費税額:1,000万円×10%=100万円
  • 仕入等にかかった消費税額:300万円×10%=30万円
  • 納める消費税額:100万円-30万円=70万円

実際の計算では10%と8%の区分が必要であり、計算に注意しなければなりません。

簡易課税

簡易課税とは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる計算方法です。基準期間は、法人の場合は前々事業年度、個人事業主の場合は前々年となります。

適用を受けたい場合は、課税期間の初日の前日までに税務署へ「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です

計算には、事業ごとに設定されている「みなし仕入率」を使います。みなし仕入率を課税売上に乗じて求めた金額を仕入税額として、課税売上高にかかる消費税額から控除する方法です。

  • 消費税額=課税標準額に対する消費税額-(課税標準額に対する消費税額×みなし仕入率 )

みなし仕入率は、事業区分ごとに設定されています。

事業区分みなし仕入率
第1種事業(卸売業)90%
第2種事業(小売業)(農業・林業・漁業:飲食料品の譲渡に関連する事業のみ)80%
第3種事業(鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・熱供給業・水道業)(農業・林業・漁業:飲食料品の譲渡に関連する事業を除く)70%
第4種事業(飲食店業など)60%
第5種事業(運輸通信業・金融/保険業・食店業に該当する事業を除くサービス業)50%
第6種事業(不動産業)40%

たとえば、課税売上高にかかる消費税額が100万円の場合、事業が飲食店業にあたるときの消費税額は次のとおりです。

  • 100万円−(100万円×60%)=40万円

基準期間での課税売上高が5,000万円を超えた場合、その課税期間は簡易課税の適用はありません。

参考:国税庁「簡易課税制度の事業区分」

インボイス制度による2割特例

2割特例とは、インボイス制度を機に適格請求書発行事業者となった事業者を対象に、消費税の納付税額を売上にかかる消費税額の2割にできる特例です

インボイス制度とは、2023年10月1日から開始した消費税の仕入税額控除の方式を指します。

それまで免税事業者であった個人事業主や法人が登録した場合に限り選択できる制度であり、もともと課税事業者である場合は適用されません。

2割特例は一般課税と簡易課税のどちらでも適用が可能で、簡易課税を選択していても、確定申告で2割特例を適用したことを記載すれば適用されます。

インボイス制度開始から2026年9月30日までの期間にインボイス制度に対応した免税事業者が対象です。要件を満たしていれば事前の手続きは必要なく、2026年12月までの申告分につき特例を受けられます。

インボイス制度の導入で変更になったこと

2023年に導入されたインボイス制度は、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式です。制度の導入により、仕入税額控除の適用要件と請求書の書式が変更になりました。

ここでは、インボイス制度の導入で変更になったことを解説します。

仕入税額控除の適用要件

インボイス制度導入前、事業者は売上高にかかる消費税額から仕入等にかかった消費税額を無条件に控除できました。

しかし、制度のもとで仕入税額控除を受けるためには、適格請求書(インボイス)を売り手である取引先が発行し、双方が保存することが必要とされています

適格請求書を発行するには、適格請求書発行事業者として登録するための事前申請が必要です。税務署に申請し、「登録番号」を付与してもらいます。

ただし、申請・登録できるのは課税事業者のみであるため、免税事業者は、課税売上が1,000万円以下の場合でも課税事業者になるか、免税事業者のままでいるかという選択を迫られているという状況です。

適格請求書を発行できない取引は仕入税額控除の対象にならないため、相手の取引先は仕入れ等にかかった消費税額を差し引くことができません。そのため、免税事業者のままでいる選択は、今後の取引関係に影響する可能性もあるでしょう。

請求書の書式

インボイス制度では、請求書の書式が区分記載請求書から適格請求書へ変わります。区分記載請求書とは、軽減税率と標準税率を区別して記載する請求書のことです。

これに対し、適格請求書は、従来の区分記載請求書の内容に加え、次の3つの項目の記載が追加されています。

  • 適用税率
  • 登録番号
  • 税率ごとに区分した消費税額

区分記載請求書では税率ごとに合計した金額を記載しますが、適格請求書では、さらに適用税率の記載が義務付けられました。取引ごとに「10%」または「8%」を明記し、取引がどの税率に該当するかを明確にします。

また、適格請求書発行事業者として登録したあとに税務署から割り当てられる登録番号の記載が必要です。

税率ごとに区分した消費税額は必ず1回端数処理をして記載します。切り上げ、切り捨て、四捨五入のいずれを選択するかは、事業者の任意とされています。

消費税の申告方法

消費税の確定申告義務のある課税事業者は、消費税の申告・納付が必要です。申告は、国税と地方税をあわせて行います。申告の期限は、個人事業主が適用事業年度の翌年3月31日で、法人は事業年度終了の日(決算期末)から2か月以内です。

ここでは、消費税の申告方法をみていきましょう。

消費税申告書を用意する

まず、消費税申告書を用意します。申告書は「申告書第一表」「申告書第二表」があり、原則課税方式と簡易課税方式で異なるため、該当する方を用意してください

申告書の入手方法は、次の3通りです。

  • 税務署の窓口で受け取る
  • 国税庁のサイトからダウンロードする
  • 国税庁のサイト内にある確定申告書作成コーナーで入力し、プリントアウトする

添付書類を準備する

消費税申告書のほかに、課税方式に沿った添付書類の提出が必要です。それぞれの添付表は、次のとおりです。

原則課税・付表1-3 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
・付表2-3 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表消費税の還付申告に関する明細書(還付の場合)
簡易課税・付表4-3 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
・付表5-3 控除対象仕入税額等の計算表
2割特例付表6 税率別消費税額計算表

参考:国税庁「消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等」

申告書類に記入する

申告書の記入は、次の手順で行います

  1. 課税標準額および消費税額を計算する
  2. 控除する仕入税額等を計算する
  3. 納付税額を計算する
  4. 計算した金額を申告書に記入する

課税標準額とは、消費税額の基礎となる金額です。まず、非課税取引等の消費税がかからない取引を除いて売上を集計します。合計した金額の1,000円未満は切り捨ててください。算出した課税標準額に消費税率を乗じて、課税売上高にかかる消費税の額を求めます。

次に、消費税の仕入控除税額を求めます。計算方法には「全額免除」「個別対応方式」「一括比例配分方式」という3つの計算方法があり、課税売上割合が95%を超えると全額免除を利用でき、95%未満の場合は個別対応方式・一括比例配分方式を使うという仕組みです。

どの計算方法を使うか決めるため、まず次の計算式で課税売上割合を計算します。

  • 課税売上割合=課税期間中の課税売上高(税抜)÷課税期間中の総売上高(税抜)

「課税期間中の課税売上高」とは、総売上高のうち消費税が課税される収入だけを合計した金額で、「課税期間中の総売上高」とは消費税が課税されない収入を含めた総額です。

算出した課税売上割合と課税売上高の数値をもとに、仕入税額控除できる割合が決定します。

課税売上高課税売上割合仕入税額控除
5億円以下95%以上全額控除
95%未満一部控除
5億円超問わない

簡易課税の場合は、課税売上高にかかる消費税額に「みなし仕入率」を乗じて求めます。

最後に、算出した「課税標準額」「消費税額」「控除対象仕入税額」から納付税額を計算し、申告書の該当欄に記入します。

参考:国税庁「仕入控除税額の計算方法」

消費税申告のチェックシート

国税庁では、​​消費税申告書の作成・提出にあたり、内容の自主的な点検に活用するため、Excel版とPDF版のチェックシートを用意しています。納税義務や課税売上、課税仕入れなど、特に間違いが起こりやすい項目についてまとめたものです

複雑な計算が必要な申告書作成を正しく行うため、活用するとよいでしょう。

消費税申告の注意点

消費税申告では、次の点に注意が必要です。

  • 正しく申告しないとペナルティがある
  • 中間申告が必要な場合がある

それぞれの内容を詳しく解説します。

正しく申告しないとペナルティがある

消費税申告では、正しく申告しないとペナルティとして附帯税を課される可能性があります。附帯税とは、納税者が申告期限までに申告書を提出しなかったり、納めるべき納税額よりも少ない額を納めたりしたときに、本来納めるべき税金のほかに課されるものです。

消費税申告に関連して課される附帯税は、次のとおりです。

附帯税の種類詳細
延滞税・申告期限より遅れた日数分だけ課される
・申告期限までの期間および期限の翌日から2か月を基準に、異なる税率が適用される
過少申告加算税・申告期限後、申告書に記載した税金が過少であったため修正申告書を提出したとき
・申告書に記載した税金が過少であったことにつき税務署より更正を受けたとき
・税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告した場合は適用せず
無申告加算税・期限を過ぎて申告書を提出したとき
・申告書を提出しないため税務署から決定の処分を受けたとき
重加算税過少申告加算税が課される場合で、隠蔽または仮装があり、特に悪質と認められる場合

消費税の確定申告は、個人事業主が行う所得税の確定申告とは異なります。消費税の確定申告期限は3月31日(個人事業主の場合)で、所得税の確定申告期限は3月15日です。

提出する書類は異なりますが、提出先はどちらも所轄の税務署のため、3月15日の期限までに一緒に提出すれば手間がありません。消費税の申告期限に遅れることも防止できるでしょう。

参考:国税庁「延滞金の割合」
参考:国税庁「確定申告を間違えたとき」

中間申告が必要な場合がある

消費税の課税期間は原則として1年ですが、前年の確定消費税額が48万円を超える場合、中間申告が必要になります

中間申告とは、事業年度の途中で、その期に支払うべき税金の一部を前もって申告・納付する手続きのことです。課税期間の税額を概算で見積もり、申告します。

中間申告で納付した税額は、確定申告で計算した年間の税額から控除されます。中間申告で納めた税額が多すぎた場合は還付されるため、最終的に納付する税額は同じです。

中間申告により、企業の税負担が均一化されるというメリットがあります。事業年度の途中で納付すれば、確定申告で一度にまとめて納税するよりも資金繰りがスムーズになるでしょう。

中間申告には予定納税と仮決算という2種類の方法があり、納税者の任意で選べます。予定納税とは、前年に納税した消費税額をもとに算出された額を申告納付する方法です。税務署から納税額が記載された中間申告書および納付書が届くため、そのまま利用して申告・納税します。

仮決算は、中間申告の対象期間を一課税期間とみなして決算を行い、結果をもとに申告・納付する方法です。

参考:国税庁「中間申告の方法」

消費税申告を正しく行うためにはツールの導入がおすすめ

一定期間の課税売上高が1,000万円を超える課税事業者は、消費税申告が必要です。インボイス制度では、適格請求書を発行するため、課税事業者の要件に該当しない場合でも課税事業者に登録するケースは増えてくるでしょう。

課税事業者になれば、消費税申告が必要になります。毎年行っている所得税の確定申告とは計算方法や提出書類、提出期限が異なり、作業が増えることになるでしょう。消費税の計算は税率ごとに行うなど煩雑であり、手間なく行うためには、消費税申告に対応した会計ソフトなどのツールの利用をおすすめします

ツールを利用すれば、銀行やカードのデータを自動取得・自動集計する機能で消費税計算や申告書作成の手間が省けます。手入力による入力ミスも発生しません。

ツールはさまざまな種類があり、所得税の確定申告だけで消費税申告には対応していないものもあるため、よく確認して選びましょう。

導入した当初は、機能を使いこなすことが難しいかもしれません。そのため、サポートが充実しているかどうかもチェックして選ぶとよいでしょう。

まとめ

消費税の計算では、標準税率と軽減税率を区別して計算しなければなりません。税額計算の際は端数処理にも注意が必要です。仕入税額控除を差し引く際もルールがあるため、よく確認しておきましょう。

また、消費税申告は期限までに行わなければならず、遅延や過少申告はペナルティの対象になるため、注意してください。

インボイス制度のもとで課税事業者になり、消費税申告が負担となっている方もいるでしょう。煩雑な計算をスムーズに行うためには、ツールの活用がおすすめです。消費税申告に対応し、自社の業務に合うツールを選ぶようにしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。