年度をまたいだ領収書は経費精算できる?年度をまたぐ経費精算の注意点とは

年度をまたいだ領収書は経費精算できる?年度をまたぐ経費精算の注意点とは

費用は発生主義の原則に則り、発生した会計年度に費用計上することが原則です。しかし、領収書の処理を忘れていたため、経費の精算が年度をまたいでしまうこともあるでしょう。ここでは、そもそも年度またぎの経費精算は可能なのか、年度またぎが起こる原因と対策などについて解説します。

年度またぎしがちな経費精算のケース

経理は1カ月単位で決算業務を行っており、当月発生した費用は極力当月に処理したいと考えています。ただし会計上は、年度内であればいつでも同じように処理することが可能です。社内のルールは別として、例えば1月の経費を2月の月次決算で処理することはそれほど問題にはなりません

しかし、同じような月ズレでも年度をまたいでしまうと、会計上や税法上でさまざまな問題が発生してしまいます。例えば3月決算の会社なら、前年度の経費を4月の月次決算で処理することは原則的にできません。年度をまたいでしまいがちな経費精算の例としては、以下が想定されます。

<例1:出張旅費のケース>

  • 年度末の3月に出張したため、出張旅費の精算が間に合わなかった。
  • 営業でたびたび出張するため、1回分の申請を忘れていた。
  • 経費精算の処理が上司の所で止まっていた。

<例2:接待費等のケース>

  • 取引先との接待費精算を忘れていた。
  • 4月異動の送別会を3月に行ったが会社負担分の精算が間に合わなかった。

<例3:経理処理でイレギュラーがあるケース>

  • 出張の往路が3月末、復路が4月頭のように年度をまたいだ出張があり、年度をまたいで経理処理をせざるを得なかった。
  • 申請項目についての事実確認に時間がかかり、年度末に経理処理を完了できなかった。

請求書に対する支払いを忘れていた場合は、相手先から連絡があるので気づきやすいでしょう。しかし、出張旅費のように社員が立て替え払いをして後日領収書で精算をするようなケースでは、長期間で放置され年度またぎになる懸念があります。

年度またぎの経費精算はできるのか?

年度またぎの経費精算がそもそも可能なのかについては、企業会計と法人税法の2つの論点で考える必要があります。まず会計についてですが、一度締めた期末決算は修正できません。過年度の費用精算は「前期損益修正損」の勘定を用いて、翌期の費用として計上するのが普通です。通常の経費精算締め日は、翌月の第2営業日までと決められていることもあります。もしこれに間に合わなくても、年度末の決算整理は1~2週間程度行うので、遅れた場合は早急に経理に相談するように申請者には周知しておくと良いでしょう。

次に、法人税法上の観点についてです。法人税の申告は、各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に確定申告書を提出しなければならないとされています。つまり、3月末決算の会社であれば5月末に提出します。4月会計で計上する費用の内、債務の確定が3月以前のものがあれば経理で調整することが可能です。会計上は年度をまたいだとしても、税務上は1カ月程度修正の余地があると言えます。

年度をまたいでしまった場合のデメリット

通常、会社には経費精算に関する規定が設けられています。経費の不正使用やトラブル回避が目的ですが、処理を効率化するために申請期限を設けていることが多いでしょう。申請期限は年度またぎにならないよう設定されていますので、過年度の精算は社内ルールに反するため認められない場合もあります。

一方、民法上の債権者が権利を行使できる期限は5年間と決められています。従業員から民法を根拠に経費精算を求められれば、会社として拒否するのは難しいでしょう。

どうしても年度またぎの経費分を法人税法上も修正する場合は、修正申告が必要となります。しかし、修正申告するには税理士への追加の支払いを行うなど、あまり現実的な選択肢ではありません。年度をまたぐ経費精算は経理担当者の手間に加えて、従業員とのトラブル、損金計上できないなど金銭的なデメリットがあると言えるでしょう。

年度またぎの原因と対策

経費精算が年度をまたいでしまう原因と、その対策には以下のような事が考えられます。

1.経費精算の締め日が徹底されない

月次決算をスムーズに進めるため経費精算には期日を設けますが、締め日が徹底されないと年度またぎの原因となります。事前に半年分などの締め日を周知し、その月の締め日が近くなったら掲示板やメールで再度連絡すると良いでしょう。

2.経費精算のルール、申請方法があいまい

上位者の承認方法、経費申請を行う様式、添付する必要書類などのルールがあいまいだと経費精算が遅れる原因となります。特に新入社員や経費精算をする機会が少ない人は、やり方が分からないとそのまま放置してしまう懸念があります。

入社や異動で人は入れ替わりますので、定期的な勉強会が必要です。コンテンツの作成が簡単で受講者数をフォローしやすいe-ラーニングを活用すると良いでしょう。

3.申請書の作成に手間がかかる

申請書の様式を紙で出力して内容を手書きする、上位者の日付印をもらう、領収書などを所定の紙に貼り付けて経理へ提出するといった方法だと、申請者は手作業が多く面倒だと感じてしまいます。そのため、期日ぎりぎりにまとめて申請しようとしたり、そのまま忘れてしまったりといった事象が発生します。様式はエクセルでもかまいませんが、極力入力項目を少なくしプルダウンで選択する形式にすると手間やミスが減るでしょう。

経費精算は従業員からの申請がないと始まりません。年度またぎの経費精算などのトラブルを防ぐために申請が簡単で効率的な、経費精算のシステムの導入を検討してみましょう。

システムの準備も必要

オンラインで外出先からでも申請できたり、一定期間承認フローが止まるとアラーム機能があったりする、経費精算システムの導入を検討すると良いでしょう。システムを導入すると申請者や承認者の効率化だけではなく、金額を経理システムへ自動連動できるといったメリットがあります。

また、諸経費の精算は不正な申請がないかを、定期的にサンプルチェックすることが望ましいでしょう。システムによってデータ化することで、金額の高い順やキーワードによるサンプル抽出などが容易になります。電子データで保管すれば紙ファイルでの管理が不要となり、スペースの有効活用といったメリットもあります。

まとめ

年度またぎになりがちなケースや対応方法、原因と対策などについて解説しました。事業年度終了日から法人税の確定申告書提出までは約2ヶ月間ありますので、極力この間に処理するようにしましょう。年度またぎの発生原因としては、申請者の手間がかかりすぎることも挙げられます。スムーズな決算処理や効率化の観点から、経費精算のシステム化も検討してみてください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。