減価償却の定率法ほか、固定資産取得に関する償却や会計処理について

減価償却の定率法ほか、固定資産取得に関する償却や会計処理について

固定資産は購入した期に全額費用化できるわけではありません。一般的に使用期間が長期にわたるため(1年超)、耐用年数に応じて、毎年少しずつ費用化していきます。これが、減価償却です。減価償却を伴う固定資産に係る会計処理は、会計独自の思想を含みますので最初は難しいのですが、できるだけ簡単に説明していきたいと思います。

固定資産とは

貸借対照表の資産の部は、大きく3つに分類されます。一つは流動資産です。資産のうち、短期間のうちに現金化もしくは費用化するものであり、短期間とは会計上は1年以内のことをいいます。
2つは固定資産です。販売目的ではなく、長期にわたって利用または所有する資産のことをいいます。長期とは会計上では1年超のことを意味します。
3つは繰延資産です。繰延資産も将来にわたって、効果が継続する支出で、会計上資産計上され、償却されます。資産計上される資産は、株式発行費、社債発行費、創立費、開業費、開発費の5つを会計上の繰延資産といい、税務上の繰延資産は税法に定まられていますが、流動資産、固定資産とは区分掲記されるため、固定資産の範疇ではないので、詳細な説明は割愛します。

一般に固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産の3つに分類され、その内容については、会社計算規則に定められています。

ここからは、固定資産について詳細にみていきましょう。

有形固定資産とは?

有形固定資産とは、固定資産のうち、主に目に見える実態のあるものをいいます。これには、土地や建物、機械、車両、工具、器具、備品、リース資産、建設仮勘定などがあります。
上記のうち、土地と建設仮勘定は償却対象にはなりません。

無形固定資産とは?

無形固定資産とは、固定資産のうち、収益をもたらす具体的な形のない資産をいいます。これは、大きく分けて、「法律上の権利」と「それ以外のもの」にわけられます。前者の例として、特許権や実用新案権、意匠権、著作権、商標権、借地権、漁業権、鉱山権などがあります。後者の例として、ソフトウェア、電話加入権、水道施設利用権、電気ガス供給施設利用権、電気通信施設利用権、営業権などがあります。このうち、電話加入権は償却対象ではありません。

固定資産の償却方法

固定資産の償却方法はいくつかありますが、最も一般的な償却方法は定額法と定率法です。定額法とは、毎年一定額を償却額として費用計上する方法です。
定率法とは、固定資産の未償却残高に償却率を乗じて費用計上額を算定する方法で、償却費の金額は初めの年ほど多く、年とともに逓減するという特徴があります。簡単に償却額の計算事例を見ていきましょう。

条件:取得価額100万円、耐用年数5年、定率法の償却率0.4、改定償却率0.5、保証率0.108(償却保証額 100万円×0.108=108,000円)

(単位:円)

定額法定率法
1年目1,000,000÷5=200,000円1,000,000×0.4=400,000円
2年目200,000円(1,000,000-400,000)×0.4
=600,000×0.4=240,000円
3年目200,000円(600,000-240,000)×0.4
=360,000×0.4=144,000円
4年目200,000円(360,000-144,000)×0.4
=216,000×0.4=86,400円
86,400円<108,000円(償却保証額)の為
216,000×0.5(改定償却率)=108,000円
5年目199,999円(備忘価格1円)107,999円(備忘価格1円)
償却額計999,999円999,999円

上記のように、定率法は取得当初に償却額は大きくなりますが、耐用年数を経過すると定額法と定率法の償却額は等しくなります。
一般的な償却方法についてみてきましたが、減価償却には特例の償却方法もあります。

一括償却資産の特例

取得価額が20万円未満の場合は、法定耐用年数及び会社の規模にかかわらず3年で償却できます。償却計算は月割ではなく、年割で行われます。18万円の資産を購入した場合、年償却額は18万円÷3=6万円となります。

ただし、使用可能期間が1年未満または取得価額10万円未満の少額減価償却資産については、経費として計上が可能ですので、実際は10万円から20万円未満の資産が対象となるでしょう。

中小企業者等の少額減価償却資産の特例

取得価額が30万円未満の償却資産について、少額減価償却資産の取得価額が300万円を限度として、償却資産の取得価額の全額を取得年度に償却費として計上できる制度で、2006年(平成18年)4月1日から2022年(令和4年)3月31日までの間に取得した資産が対象です。

中小企業となる要件は、青色申告法人の企業または組合等かつ常時使用する従業員が1,000人以下となります。なお、資本金1億円以下の法人については一定の要件がありますので、以下の国税庁ホームページでご確認いただくことをおすすめします。

参考:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

それって節税?償却方法の選び方

固定資産の減価償却によって節税できると一般的によく言われますがどういう意味なのでしょう?
一般的に、定額法よりも定率法の方が節税できるというのは聞いたことがあるでしょう。これは、定率法の方が、早い段階で多額の費用化ができるので、取得当初に費用を多額に計上できるという意味であり、定額法によっても定率法によっても費用化できる償却額は、経年で同額になりますから、節税効果はありません(貨幣の時間的価値を考えない場合)。ただし、早期の段階で費用計上することができますので、購入当初の税額は少なくてすみますから、結果的に早期に資金回収できます。利益を出している事業者にとっては、定率法を採用したほうがメリットはあるでしょう。

しかし、固定資産を購入した期に利益を計上できていないけれども、来期以降は収益が改善する見込みがあるような場合は、定額法を採用したほうが、逆に節税になります。利益が計上できない期に定率法により多額の減価償却費を計上し、その結果損失になったら、税額を減少させることはできません。一方、利益が計上できる期に減価償却費を計上できれば、税額を少なくすることができます。実際には、会社の利益状況や繰越欠損金制度により、もう少し複雑な税額計算になることもあります。一括償却資産及び少額減価償却資産についても定率法よりさらに、早期に償却費が計上できる制度なので、会社の現状に即して、定額法、定率法、一括償却資産の特例、少額減価償却資産の特例を検討するといいでしょう。また、設備投資に関しては、さらに償却費を早期に計上できる制度として、特別償却もあります。

なお、建物、無形固定資産および2016年(平成28年4月1日以降に取得する建物付属設備、構築物においては無条件に定額法が採用されます。
以上の説明は、主に税務会計を採用している中小事業者を想定しています。上場企業の場合は、税務上減価償却方法とは関係なく、本来あるべき会計数値を追求しますので、ご留意ください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。