領収書等のスキャナ保存制度の規制緩和、平成28年度税制改正大綱を解説!

スキャナ保存制度について

企業等が作成、受領する国税に関する帳簿(仕訳帳など)や書類(決算書類や領収書・請求書など)については、法人税法等の規定により法定保存期間にわたり紙で保存することが義務付けられていますが、平成10年7月に国税関係帳簿書類の保存方法等の特例法として「電子帳簿保存法」が施行され、事前に所轄税務署長等の承認を受ければ、企業等が作成した仕訳帳や決算書類などのデータを、一定の要件の下、データにより保存することが可能になりました。

その後、平成17年4月の電子帳簿保存法の改正により「スキャナ保存制度」が導入され、事前に所轄税務署長等の承認を受ければ、企業等が取引先等から受け取った領収書や、自ら作成し相手方に交付した請求書の写し等の紙の書類を、一定の要件の下、スキャナで読み取った画像データにより保存し、原本書類を廃棄することが可能になりました。

しかし、平成17年4月に「スキャナ保存制度」がスタートしてから平成27年6月までの約10年もの間に、全国でスキャナ保存の承認を受けた件数はわずか152件と極めて少ない件数となっています。これは、国税関係書類のスキャンデータの真正性を担保するため、電子帳簿保存法で義務付けられている要件が非常に厳しいことなどが大きな要因でした。

このような中で、継続して掲げられていた関係経済団体等からのスキャナ保存制度に係る規制緩和要望を踏まえ、国税庁は「平成27年度税制改正」において要件緩和を実施し、平成27年3月31日に電子帳簿保存法施行規則が改正されました。
さらには、昨年末の平成27年12月24日に「平成28年度税制改正大綱」が閣議決定され、連年で「スキャナ保存制度の見直し」が行われることになりました。
以下、各年の改正のポイントをみてみたいと思います。

 

平成27年度改正の概要

平成27年度改正のうち主な項目は以下のとおりです。

(1)スキャナ保存の対象となる国税関係書類の範囲の拡充
それまで、国税関係書類のうち契約書や領収書については、その記載金額が3万円未満のものに限りスキャナ保存の対象となっていましたが、平成27年度改正により、金額に関わらず全ての国税関係書類がスキャナ保存の対象となりました。

(2)実印レベルの電子署名が不要に
スキャナで読み取る際に必要とされていた入力者等の電子署名を不要とし、より簡易的な措置として、入力者等に関する情報を確認できることが要件とされました。

(3)適正な事務処理の実施を担保するための措置として「適正事務処理要件」が新たに追加

適正事務処理要件とは、国税関係書類の作成または受領からスキャナでの読み取りまでの各事務について、「相互けん制」、「定期検査」及び「再発防止」に掲げる事項に関する規程を定めるとともに、これに基づき当該各事務を処理することをいいます。(定期検査が完了すれば原本書類を廃棄できます。)

(注)平成27年度改正の内容は、平成27年9月30日以後に行う承認申請について適用されます。

 

電子帳簿保存法の最新動向と、経費精算業務の未来像

 

平成28年度税制改正大綱の概要

平成28年度改正について、具体的な法律の条文やQ&Aなどについては今後公表されることになりますが、大綱により明らかとなった改正点のうち主な項目は以下のとおりです。
(領収書等の国税関係書類の受領者がスキャナ入力する場合)

(1)スキャナ装置について、原稿台と一体となったものに限定する要件を廃止
これにより、デジタルカメラやスマートフォン等による撮影が可能になります。

(2)国税関係書類の受領後、受領者が当該書類に署名を行った上で、3日以内にタイムスタンプを付与

(3)適正事務処理要件のうち、相互けん制要件及び定期検査要件の緩和

①相互けん制要件については、国税関係書類の受領者以外の者が記録事項の確認(必要に応じて原本の提出を求めることを含む。)を行うことで足ります。
②定期検査要件については、定期検査が完了するまで必要とされている国税関係書類の原本保存を、本店以外の各支店、事業所等でも行うことができます。
③小規模企業者(常時使用する従業員数が5人以下(製造業等であれば20人以下)の小規模企業者)の場合、定期検査を顧問税理士等に依頼すれば、相互けん制要件を不要とすることができます。

(注)平成28年度改正の内容は、平成28年9月30日以後に行う承認申請について適用される予定です。

前述のとおり、平成28年度改正では、領収書等の国税関係書類をスマホやデジカメで電子化できるようになるというのが大きなポイントです。これにより、たとえば領収書を受け取った社員は、外出先や移動中でも領収書を電子化することができるようになり、経費精算事務は大幅に効率化すると考えられます。
また、平成27年度改正における「適正事務処理要件」に掲げられている「相互けん制要件」及び「定期検査要件」を満たすためには最低でも3名の人員が必要でした。たとえば1人で事業を営む者が国税関係書類を受領する場合、領収書をスキャナで読み取り紙の原本書類と同等であることを確認した後にタイムスタンプを付与するまでの事務を「外部の者」に委託し、定期的な検査については「顧問税理士」に依頼するなどの措置が必要でした。
これに対して、平成28年度改正では、小規模企業者の場合、定期検査を顧問税理士等に依頼すれば「相互けん制要件」を不要とすることができるため、たとえば1人で事業を営む者が国税関係書類を受領した場合、自らがスキャナで読み取り紙の原本書類と同等であることを確認してタイムスタンプを付与し、定期的な検査のみを「顧問税理士」に依頼すればよく、「適正事務処理要件」を満たすための人員は事業主と顧問税理士等の2名だけで足りることになります。

  

平成28年度 経済産業省 税制改正について

「平成28年度 経済産業省 税制改正について」(平成27年12月)より
 

まとめ

平成27年度改正における「金額基準の撤廃」・「電子署名の不要化」、平成28年度改正における「スマホ撮影等の解禁」・「小規模企業者の特例」等々、連年の要件緩和により、スキャナ保存を導入しやすい環境は加速的に整いつつあります。
是非この機会に領収書等の電子化を検討し、書類保管等のコスト削減、経費精算事務等の効率化を実現してみてはいかがでしょうか。

 

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● 著者

SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎

SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎

1993年4月に東京国税局入局。 在職中は、国税庁において電子申告システム(e-Taxシステム)の開発運用に従事したほか、東京国税局調査部において大企業の法人税調査事務等に従事。 2013年6月に退職後、同年8月に税理士登録。ファルクラム租税法研究会研究員。 (著書) 「最新!ここまでわかった企業のマイナンバー実務Q&A(共著)」(日本法令)

SKJ総合税理士事務所