源泉徴収とは?仕組みと運用方法を解説

源泉徴収という言葉は経理実務においてよく出てくるものの1つです。今回はその全体像と運用について確認をしていきましょう。

 

なぜ税金を天引きするのか?

日本では申告納税制度が採用されています。納税者は自分自身で申告書を作成し、その申告内容に応じて税金を納めなければなりません。
しかし、もし本当に日本国民全員が申告書作成をするとなると、書類の量があまりにも多く、また内容の精査にも時間がかかります。そこで、給与や報酬などを支払う者(会社や事業者)が、その支払いをするとき、一部について税金を天引きし、残った額をそれぞれの人に支払うようにします。税金を天引きした会社は、その天引き税額を税務署に支払うことで、国全体としての租税行政全般の作業量を削減すると共に、正確性や作業の期間配分を実現しています。これが源泉徴収の全体像です。

 

給与に関する源泉徴収

給与に関する源泉徴収は、以下のような流れで進んでいきます。

  • 社員から提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の内容を確認
    社員本人の住所氏名生年月日、それに扶養している親族の情報が記載されています。
  • 毎月の給与額とそれに対応する社会保険料個人負担分を計算
  • 給与と社会保険、それに申告書の記載内容に応じて源泉徴収税額を確定
    税額は、国税庁が毎年発行している税額表で確認します。

注意が必要なのは扶養親族です。以前は16歳未満の子供も控除対象でしたが、現在は対象外です。毎月の源泉所得税額を計算する時、「何人の扶養親族がいるか?」について間違えないようにしましょう。

毎月の源泉徴収によって税金が天引きされ続け、最後に年末調整と呼ばれる作業で1年分の帳尻合わせをすることで、会社員の税金負担は本人が計算をすることなく終了できるようになっています。なお2箇所以上で勤務している社員や、日勤形式で働いている場合などについては別のルールも定められています。

 

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 交通費・経費精算システム「楽楽精算」

 

報酬に関する源泉徴収

事業には様々な外部関係者も存在します。その中で、一部の報酬については源泉徴収の対象となっています。

  • 原稿料、デザイン料、講演料など
  • 弁護士、会計士、税理士、社労士などの士業への支払い
  • 外交員、集金人、プロスポーツ選手などへの支払い
  • 芸能人やホステスへの報酬 その他/li>

これらに該当しない支払いは源泉徴収の対象とはなりません。単なる外注費や事務代行、管理業務の委託といった費用について源泉徴収を天引きする必要はありません。
一般的によく出てくるのは、士業に対する支払いです。特に税理士や社会保険労務士に対する支払いは、継続的な顧問契約を結んでいる会社が多いこともあり、多くの企業で発生しています。また不動産業では登記の関係で司法書士が、建設業では許認可の関係で行政書士に対する支払いなどが多く出ています。
業種で言えば、広告宣伝やイベントに係る仕事をしている場合、デザインや講演、あるいは芸能人などに対する出演に関する支払いも多発するでしょう。あとはスポーツに関わる仕事をしている場合、プロスポーツ選手に対する支払いも多く見られます。

これらの報酬については、基本的に10.21%の源泉所得税(復興特別所得税も含む)を天引きします。仮に報酬額が100,000円であれば、10,210円を天引きして残額の89,790円を本人に支払い、天引き税額を税務署に納付します。
ただし、報酬の金額が100万円を超える場合、その超える部分の金額については天引きの税率が20.42%に上がります。特に高額な支払いをする場合、この金額基準についても留意しましょう。

なお、基本的には消費税込みの金額全体に対して源泉徴収を行います。

例:税抜き100,000円 消費税8,000円 の場合
  源泉所得税額:108,000円 × 10.21% = 11,026円(円未満切捨)
  本人への支払額:108,000円 – 11,026円 = 96,974円

ただし、請求書において消費税の金額が区分明記されているときは、税抜き額に対して源泉所得税の金額を計算することができます。

例:税抜き100,000円 消費税8,000円 の場合
  源泉所得税額:100,000円 × 10.21% = 10,210円
  本人への支払額:108,000円 - 10,210円 = 97,790円

この他、利子や配当に関する源泉徴収もありますが、実務的にはあまり発生しないので今回は省略をします。

 

納税のタイミングは?

原則的には、その月に預かった源泉所得税を翌月10日までに納税しなければなりません。

例:1/10に給与150万円を支払い、源泉所得税を100,000円天引きした
  1/25に税理士、社労士に対する報酬を10万円支払い、10,210円を天引きした
 ※2/10までに110,210円を税務署に納税する

10日が週末や祝日に該当する場合には、その次の平日まで期限が延びます。
なお、小規模な事業者(社員が10人未満)については、源泉所得税の納税について半年に一度(1月と7月)で済ませることができる「納期の特例」という制度があります。給与分と、税理士や社労士に対する報酬の源泉について半年分をまとめて納税できるという特例です。
ただし、この特例はデザインや講演、芸能人の出演などに関する報酬については適用できません。もしこれらの支払いが日常的にあるお仕事の場合には、規模の大小に関わらず毎月必ず納税があるので注意しましょう。

その他、外国人に対する報酬の場合の留意点など、源泉所得税については実務上の注意点が色々とあります。何か気になる取引がある場合には、事前に調査をするようにしておきましょう。

 

まとめ

会社や事業者は、給与や報酬の支払いをする際、源泉所得税を天引きしなければなりません。各人には天引き後の残額を支払い、天引き税額は税務署に納めます。給与については、社員から提出された申告資料と給与計算資料、税額表などを用いて源泉所得税額を計算します。一定の報酬については報酬額の1割強を天引き(金額により天引き額増加)して支払い、源泉所得税額は預かった月の翌月10日までに納税します。小規模事業者には納期の特例もあります。

 

「経理プラス」メルマガでは、定期的に記事のランキングやおすすめ情報などをお届けしています。読み逃しがないよう是非ご登録ください!

「経理プラス」メルマガ登録は・・・ こちらから

 

WEB帳票発行システム「楽楽明細」

● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。