減価償却は企業会計の一大テーマ! 押さえておきたい仕組みと処理方法

企業会計の一大テーマである減価償却。今回はその概要について学ぶとともに、特例措置などについても確認していきます。

減価償却とは

減価償却とは「固定資産の費用配分をするための処理」です。これだけではわかりづらいと思いますので、まず企業会計の目的から確認します。

現代の企業会計における目的=適正な期間損益計算を行うこと

この言葉を分解して考えると、

適正な  :正しい方法で
期間   :定められた期間の(通常は一年間)
損益計算 :利益(収益-費用)を計算する

このようになります。ここでポイントなのは期間です。あまり意識したことがないかと思いますが、なぜ経理処理は1年単位で行われているのでしょうか。それは「どこかで区切りをつけないと処理ができないから」です。

本来であれば「設立から廃業までの生涯損益計算」をすることが、もっとも正しい利益の計算方法です。しかし、それではいつまで経っても利益が確定できません。そこで一年間という期間を定め、どれだけの利益が計上できたのかを計算することにしました。

ここで問題になるのが「高くて長く使えるもの」です。例えば次のような事例を考えてみましょう。

(単位 万円)

 1年目2年目3年目
売上1,0001,0001,0000
費用600600600
車購入90000
利益△500400400

開業1年目に、事業に必要な車を購入しています。これを「購入してすぐに全額を費用処理する」と、上の図のような結果になります。しかし、これが“適正な期間損益計算”と言えるでしょうか。1年目だけ大きく赤字で、2年目以降は黒字計上です。

車は一般的な買い物に比べて高額です。また一般的に、車はそれなりの長期間に渡り使用することができます。そういった高くて長く使えるものは、その使える期間に応じて少しずつ費用にしていった方が良いのではないかと企業会計では考えたのです。

(単位 万円) 車は3年間使用できるものとする

 1年目2年目3年目
売上1,0001,0001,0000
費用600600600
車の使用費300300300
利益100100100

この方が、先程より“適正な期間損益計算”が実現できているのではないでしょうか。このように費用を配分する処理のことを減価償却と呼んでいます。

減価償却の対象と耐用年数

減価償却の対象になるのは、高くて長く使えるもの、言い換えると固定資産です。日本の場合、具体的には次の条件に合致するものが固定資産です。

金額:10万円以上
なお、消費税については「その企業が採用している経理方式」に従って判断します。税抜価額95,000円、税込価額102,600円の備品を購入した場合、その企業が税抜経理を採用していれば固定資産の対象外で、税込経理を採用していれば対象に含まれます。

期間:1年以上に渡って効果が期待できるもの
どんなに高額なものでも、すぐに消費してなくなるもの(原材料や短期間しか使えない広告用備品など)は対象外です。
なお、この期間のことを専門用語で耐用年数(たいようねんすう)と言います。耐用年数は、本来は各企業が資産ごとに見積もります。しかし、減価償却の処理は税金の計算にも大きな影響を及ぼします。「耐用年数を短く見積もった企業は税金が安くなる」といった不合理が生じるのは、公平な課税の見地から好ましくありません。

そこで、税法側で考える“法定耐用年数”を用いるのが一般的です。なお、法定耐用年数よりも短い耐用年数で減価償却処理をすることも可能ですが、税金計算の時点で加算調整と呼ばれる処理をする必要があります。

法定耐用年数は、以下のような項目を基に定められています。

固定資産の種類:建物、建物附属設備、機械装置、車両運搬具、工具器具備品 など
その利用目的 :建物の利用目的、その機械でどんなものを作るのか など
素材等    :金属製、コンクリート製、木製 など

取得した固定資産に応じ、法定耐用年数を調べ、その年数で費用処理をしていく。これが減価償却に関する処理の概要です。

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無形固定資産

固定資産というと、建物や機械装置といった形あるものを想像しやすいのではないかと思います。しかし、事業においては「形がない固定資産」も存在します。例えば以下のようなものです。

  • 特許権や商標権、借地権といった権利
  • ソフトウェア

権利の中には、取得のためにかなりの金額を要し、かつ長期間に渡って効果が発揮されるものもあります。また近年では多くの企業が業務用のソフトウェアを使用しています。これらは無形固定資産と呼ばれ、やはり減価償却の対象となります。

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減価償却をしない固定資産もある

“高額で長期間使用できるものは固定資産に該当する”ということを確認しました。しかし、それでは“すべての固定資産が減価償却(費用配分処理)の対象か”というと、そうではありません。

固定資産の中には、時間の経過により価値が減少しないものもあります。例えば以下のようなものです。

  • 土地や土地に付属する権利(借地権など)
  • 美術品や歴史的な価値のある楽器など

これらの中には、時間の経過に従ってむしろ価値が高まるものすら含まれています。こういった固定資産については、減価償却の対象にはなりません。取得した時点で固定資産として計上し、手放すまでその金額のまま資産欄に計上し続けることとなります(時価主義などの考え方は、本記事では割愛します)。

減価償却の計算方法と評価方法

毎年の減価償却費を計算するためには、いくつかの計算方法があります。

定額法:毎年、同じ金額の減価償却費を計上する方法

取得価額 × 耐用年数ごとの定額法償却率

定率法:取得当初に高い金額の減価償却費が計上され、年の経過に応じて計上額が減少していく方法

前年末の帳簿価額 × 耐用年数ごとの定率法償却率

主なものはこの定額法と定率法の2つです。その他、一部の特殊な固定資産については生産高比例法といった特殊な方法もあります。

どちらの方法を選んだとしても、最終的に計上される減価償却費の金額は“固定資産の取得価額”と同額です(正確には備忘価額1円があります)。両者の違いは計上のタイミングで、定額法がずっと同じ金額だけ計上されるのに対し、定率法は早い段階で多くの減価償却費が計上されます。

通常、固定資産を取得したときにはある程度の現金支出を伴います。また融資を活用して取得資金を確保しているとしても、返済分は支出があります。従って「できれば早くに減価償却費を計上したい」というのが一般的な考え方です。多くの費用を計上することで、利益が減少し、その分税金の負担を減らすことができるためです。

そのため、基本的には定率法を採用した方が好ましい、と考えられています。法人の場合、機械装置や器具備品、車両運搬具については定率法による計算が原則とされています。これらの資産については、定率法で計算をしている企業が大多数です。

一方、建物や建物附属設備、構築物といった固定資産については、定額法のみ採用することができます。定率法が採用できた時期もありましたが、2019年現在は不可能です。また無形固定資産も定額法により計算をします。

資産を取得した当初に多くの減価償却費を計上し、利益を圧縮して税負担を減らす。定率法を採用することにより、このような効果が期待されます。ただし、定率法を採用した場合、減価償却費の逓減(ていげん)は相当な勢いで起こります。仮に減価償却以外の状況が何も変わらない場合、減価償却費が減少する分だけ利益が増えていきます。つまり、税金の負担も増えていくということです。事業の全体最適を図り、より多くの手元資金を残し、納税について心配のない状態を構築することが必要不可欠です。

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経理処理の方法と減価償却累計額

減価償却費は、以下のような仕訳をします(今回は建物の減価償却を行います)。

 借方 金額貸方金額
減価償却費(費用)100建物(資産)100

借方に減価償却費という費用科目を計上し、貸方に資産項目を計上することで、資産の減少を記録します。この方法を直接法と呼びます。

ただ、直接法を採用した場合、一つ有用な情報が失われることになります。それは「固定資産の取得価額」です。「再調達をするとしたらどれくらいのお金が必要か?」「仮に処分を考えたとき、購入時はいくらで買っていたのか?」といった判断をするときに、取得価額はとても有用な情報となります。

そこで、間接法と呼ばれる方法が用意されています。

 借方 金額貸方金額
減価償却費(費用)100建物減価償却累計額(資産の相殺項目)100

直接法では建物という資産を直接減少させていました。一方、間接法では資産の相殺項目を用いることで、固定資産の金額は取得価額のまま残しておくのです。

上記の例で建物の取得価額が1,000の場合

(直接法でのB/S表示)

  
建物900

(間接法でのB/S表示)

  
建物1,000
減価償却累計額△100

実際に減価償却累計額をどこに掲示するのかは、いくつかのパターンがあります。しかし、どのパターンにしろ「取得価額は1,000である」「そのうち100だけ減価償却費として計上された」という情報を掲示しています。

経理プラス:減価償却累計額と減価償却 同じ“減価”でも何が違う?

税務処理上の注意点

さきほども確認した通り、10万円以上の価額で1年以上使用できるものは固定資産に該当します。しかし、税務では一部の特例があります。

一括償却資産

10万円以上20万円未満の固定資産については、一括償却資産と呼ばれる簡便的な方法を用いることができます。これは資産の種類に限らず、3年間で費用配分をすることができる制度です。3年間という期間は、通常の耐用年数に比べると短いことが大半です。

少額減価償却資産の特例

一定の条件に該当する中小企業者等が30万円未満の固定資産を取得した場合には、取得して事業供用した時点で全額を経費計上することができます。ただし、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円までに限定されます。

(引用)国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 3 適用対象資産

両制度は、一見すると少額減価償却資産の特例が一方的に優位なように思えます。しかし、実は一点、落とし穴があります。

企業が保有する固定資産には固定資産税が課されます。その対象は土地や建物だけではなく、機械装置や器具備品などの減価償却資産も対象となります。不動産に対する固定資産税とは別に課され、一般的には償却資産税と呼ばれています。

一括償却資産を採用した場合、償却資産税の課税対象から外れます。一方、少額減価償却資産の特例を採用した場合、償却資産税の課税対象に含まれるのです。固定資産を数多く保有する企業の場合、償却資産税の取扱いは重要な意味をもちます。「法人税等の計算ですぐに損金計上できる方が良いのか?」「ある程度の速さで損金になり、かつ、償却資産税の課税対象からはずれる方が良いのか?」について、総合的に判断する必要があります。

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自己金融機能、EBITDA

最後に、財務分析的な点について。減価償却については「自己金融機能」があると言われています。減価償却費は、現預金支出を伴わない費用です。従って、その分だけ利益の数字と現金収支にズレが生じます。

例:現金売上 1,000 現金費用 600 減価償却費 200

 利益 = 1,000 - 600 - 200 = 200
現金収支= 1,000 - 600      = 400
 ※一般的には 利益 200 + 減価償却費 200 = 現金収支 400と計算

この「利益計算に反映されない現金収支への影響」を自己金融機能と呼んでいるのです。とはいえ、別に減価償却費の分だけ現金が入ってきた、ということではありません。どちらかといえば「固定資産を取得したときにあった現金支出が回収された」と考える方が自然です。

現代の会計では、キャッシュ・フロー分析が非常に重要な意味をもちます。例えばその一つがEBITDAと呼ばれる指標です。

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費

営業利益に減価償却費を加えることで「現預金収入の裏付けがある企業価値の増加額」を算定することができます。また三大財務諸表の一つであるキャッシュ・フロー計算書の作成においても、減価償却費の取扱いが大きな論点となります。

経理プラス:減価償却とEBITDAについて詳しく解説!

まとめ

減価償却は適正な期間損益計算を行うために費用を複数年度に配分するための処理で、企業会計における一大論点です。計算方法は定額法と定率法が一般的で、法定耐用年数を用いて計算する企業が大多数です。仕訳には直接法と間接法の2つがあります。税務上、金額の低い固定資産には特例があり、財務分析においても重要な意味をもつので、正しく処理をすることが求められます。

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。