限界利益とは?損益分岐点分析とは?経営分析の基本知識を押さえる

「限界利益」、「損益分岐点分析」という言葉を聞いたことがありますか。

企業間の競争が激しさを増すなか、これらの経営分析手法の必要性が年々高まってきています。

ここでは「限界利益」と「損益分岐点分析」について基本的な知識とそれぞれの計算式を確認した上で、企業経営にどのように生かせるのか、その実例をみていきましょう。

 

変動費と固定費

限界利益と損益分岐点分析についてみていく前に、まず理解すべきなのが、「変動費」と「固定費」の概念です。

「変動費」とは、操業度に応じて比例的に増減する原価要素であり、「固定費」とは操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素を意味します。

これに関連して、ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これを超えると増加し再び固定化するような原価要素を「準固定費」といい、操業度がゼロの場合にも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素を「準変動費」といいます。一般的に、準固定費と準変動費は、それぞれ固定費と変動費のいずれかに分類して運用を行います。

変動費の典型は、材料費、外注加工費、商品仕入原価、販売手数料であり、原価計算基準には準変動費の例として挙げられている電力料も実務的には変動費に含められることが多いといえます。
例えば、トヨタ自動車においては、製造変動費(素材費、変動労務費)、変動間接費(補助剤、工具、鋳造型、エネルギー)、物流変動費(発送費、運送費)、購入部品費を変動費としています。

これに対して、固定費の典型は、減価償却費、賃借料、固定資産税等です。実務上、変動費以外を固定費として定義することが多く、変動費を定義できれば固定費は自ずと定義できます。

変動費と固定費の分類方法には、勘定科目法、散布図表法、最小二乗法等の方法があります。

勘定科目法は、縦軸に費用、横軸に操業度のグラフを作り、そこに実績データを記入して、散布された各点の中央を貫く費用線を描いて、その費用線を延長して、縦軸との交点で固定費を求め、費用線の傾きを変動費率とする方法です。

散布図表法は、総費用をy、固定費をa、変動費率bとする一次方程式y=a+bxを、グラフを用いて推定する方法です。

最小二乗法は、想定される関数が複数の実績値に対して近似となるように、誤差の二乗和を最小にする係数を決定する数学的方法です。

ただし、実務上は勘定科目法が圧倒的に多く採用されており、経験知により変動費とする勘定科目を定義し、変動費以外を固定費として扱います。
勘定科目法においては、材料費、外注加工費、商品仕入原価、販売手数料を基本的変動費として、仮決定した変動費を過去の売上高あるいは生産高(≒操業度)で除して、変動費率を求めます。
また総費用から変動費を差し引いて固定費額を求めて、その値(変動費)とする勘定科目を再度増減させて変動費と固定費を最終確定します。
しかし実務上は、同じ価格、同じ生産構成で売上高が計算されることは少なく、また同じ生産方法を長期間継続することも基本的にはないので、大きく変動することがない限り良しとしても問題ないといえます。

 

限界利益と損益分岐点分析の計算式

それでは本題の限界利益と損益分岐点分析について、具体的な計算式をみていきましょう。

限界利益とは、売上から変動費を差し引く計算式により算出されますこの限界利益から、さらに固定費を引いたのが利益です。

限界利益 = 売上 - 変動費
限界利益 - 固定費 = 売上 - 変動費 - 固定費 = 利益

また、限界利益率とは、限界利益を売上で除する計算式により算出される比率であり、変動費率を100%から引いても求められます。

限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上
限界利益率 = 100% - 変動費率

一方、損益分岐点分析とは、別名CVP(Cost-Value-Profit)分析とも呼ばれ、費用と収益が同額となる損益分岐点を算出するとともに、変動費と固定費を用いて、収益、費用、利益の関係を分析する手法のことです。

また、利益計画を立てるときに、「いくらの売上を上げるといくらの利益が出る。最低限これだけ売上を上げなければ赤字になってしまう」という関係性を分析的に図示したのが、損益分岐点図表ということです。

 

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損益分岐点分析に基づく意思決定の実例

実際に企業経営の現場で、損益分岐点分析に基づき行われる意思決定について、ご紹介していきます。

売上高減少への対応

損益分岐点金額を算出することにより、どのくらい売上高が減少しても赤字にならないかを事前に試算することができるため、結果的に赤字になる前に対応策を講じることが可能です。

目標売上高の設定

赤字企業(事業)の場合、損益分岐点分析により、黒字化するための目標売上高を設定できるため、売上高を増加するためにどのような施策を採用すべきかの検討が容易になります。

値下げ影響額の試算シミュレーション

企業間競争により、売価の値下げが必要な場合、売価が与える利益額への影響を試算できるため、売価値下げ額を合理的に意思決定していけます。

変動費率の引き下げ影響額の試算シミュレーション

原材料購入価格の引き下げや材料歩留まりの改善等により、変動費率を引き下げた場合の利益への影響額が試算できるため、施策の優先順位付けが円滑になります。

固定費の引き下げ影響額の試算シミュレーション

固定費の引き下げ額が利益に与える影響額が試算できます。例えば、固定費の引き下げのみであれば、固定費の引き下げ額がそのまま利益の総価額になりますが、外部に製造を委託する場合のように、1つの施策が固定費の減少と変動費率の上昇が同時に影響する場合には、損益分岐点分析が有効です。

損益分岐点金額の引き下げ施策

損益分岐点金額を引き下げるための具体的施策としては、販売数量の増加、販売価格の引き上げ、変動費率の引き下げ、固定費の削減などが挙げられます。
販売数量の増加策としては、広告宣伝や営業部門や販売促進活動の強化、新しい販売チャネルの開拓、販売価格の引き下げ、新製品や新商品の上市等が考えられます。
他方、販売価格の引き上げのためには、売上割戻額の削減、販売価格の値上げ交渉、高付加価値商品の取扱い開始などが考えられます。
また、変動費率の引き下げには、原材料購入価格の引き下げ、外部委託の内部製造化、VA(Value Analytics) / VE(Value Engineering)による原材料の見直しや不要機能の削減、歩留まりの改善などがあります。さらに固定費削減には、人員削減、設備投資の抑制、支払利息の削減、経費削減などが考えられます。

 

変動費型企業と固定費型企業

企業は、総原価に占める変動費の割合が大きい企業(変動費型企業)と、固定費の割合が大きい企業(固定費型企業)に大別されます。

変動費型企業の典型は自動車メーカーです。材料や部品を購入し、組立てをして製品として出荷しますので変動費率が高い傾向にあります。また、百貨店などの小売り事業者も変動費型企業が多くなっています。

一方、固定費型企業の典型は、電力、ガス、鉄道等の公共インフラを担う企業です。半導体企業や液晶パネル製造企業も固定費型といえるでしょう。これらの固定費型企業は、多額の建物、設備を保有し、その結果、減価償却費が多額となります。また、コンサルティング会社のように人件費が多額となる企業も固定費型企業に属します。

業界や企業固有の特性により、費用構造は多様ですので、実態に即した管理基準の設定が必要です。

 

まとめ

ここまで限界利益と損益分岐点分析の基本と実例、及び計算式についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。それぞれの言葉の意味は把握していたけれど、具体的な計算式は知らなかったという方も少なくないでしょう。ご自身がお勤めの企業を変動費型なのか固定費型なのかという視点で見てみると、今までとは違った角度で見えてくるものがあるかもしれません。ぜひ、ここで学んだ計算式に実際の経営の数字を当て、経営状況を把握してみましょう。新しい示唆が導き出せるかもしれません。

 

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経費精算システム「楽楽精算」

● 著者

田中 仁

田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。 東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もあり。