e-文書法とは?効率化する税務実務の現場

e-文書法という法律をご存じでしょうか。e-文書法とは、従前は紙の書類の作成や保存でなければ法律上認められなかった民間事業者の文書保存について、規制緩和を実現する法律です。この法律の整備は、企業のみならず社会全体のペーパーレス化と生産性向上に寄与しているといわれています。

今回は、このe-文書法で「どのように税務実務の現場が効率化するのか?」や基本的なポイントなどについてご紹介いたします。

 

e-文書法とは何か

e-文書法とは、正式には、以下の法律の総称です。

この法律は、わが国の電子政府化や電子社会化を目指す一連の「e-Japan戦略」の実施過程の中で制定された法律です。
e-文書法によって、これまで紙の書類の作成や保存でなければ法律上認められなかった民間事業者の文書保存についての規制が緩和され、原則として電子文書の作成や保存などが認められることとなりました。これを狭義のe-文書法とすると、これに電子帳簿保存法を含めた概念として、広義のe-文書法という表現もよく見かけます。非常によく似た法律ですが、厳密には異なる法律なので注意が必要です。

 

e-文書法の経済的効果

それでは、このe-文書法の制定により、どのような経済的な効果が期待できるのでしょうか。

経済的効果を一言で言えば、「コスト削減」と「ペーパーレス社会の実現」の2点に集約されるでしょう。情報通信技術、いわゆるICTを利用した経営の効率化が叫ばれて久しいことは皆さんご存じの通りです。
取引や文書管理においても、文書の入力、作成段階からその利用、最終的な保存の段階まで、可能な限り電子化(ペーパーレス化)が進行・普及しています。こうした電子的な文書管理が確立できれば、電子データと紙、そのそれぞれの媒体返還に伴うコストや、膨大な紙の書類の管理や保管に伴うコストの削減が可能になります。

法令による規制がない範囲では、こうしたペーパーレスの効率的な電子的情報管理が実現可能です。しかし、事業者に対して各種の行政目的から規制を加えてきたものが個別法令といえます。
行政的な監督などの目的から、さまざまな紙の書類の作成、利用、保存を義務付けてきた結果、ペーパーレスの効率的な文書管理が妨げられてきました。また、電子政府の実現により、行政手続きを可能な限り電子化する政策も、紙の添付書類などの存在によって効率的で完全な実現が妨げられてきたと言えるでしょう。

従来、個別法令が民間事業者に紙の書類による文書の作成・保存などを義務付けてきたのはなぜでしょうか。
一般的には、事業者の事業活動が適正に行われていることを担保し、事後的な行政検査や監督の手がかりとすることを主要な目的としていたからです。こうした目的が電子的にも達成される限り、紙の文書による文書管理を電子的に行うことを認めても支障がないばかりか、それにより、事業活動の効率化や、社会全体の電子化を推進する効果も大きく期待されました。

e-文書法はこれらの観点から、行政規制の規制緩和と電子化への対応を図るものです。同法は、これまでのさまざまな法令により文書での保存などが求められているものについて、それを電子的に行うことを認めています。それにより、「電磁的方法による情報処理の促進を図るとともに、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的」(通則法第1条)としているのです。

 

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電子文書の脆弱性

ここまで電子文書の有用性、経済的なメリットを見てきましたが、より理解を深めるために、文書の電子化、ペーパーレス化の推進の障害が存在することにも触れておきます。
文書の電子化推進の障害は、「電子文書そのものの脆弱性から生じる利用者の不安感」にあるといわれています。電子文書は紙文書と比較して保存・管理上、次のような潜在的な弱点を持っています。

  • 改ざんが極めて容易でかつその痕跡が残りにくいこと
  • 記録媒体の経年劣化により内容消失の可能性があること
  • 保存してあった電子文書について、保存期間内に改ざんされていなかったことを事後的に証明することが困難であること

一言で言えば、「電子文書は紙文書と比較して原本性が確保しにくい」ともいえます。この脆弱性からくる利用者の不安感が、原本を電子文書にできない理由となっています。逆に言えば、この不安感を払拭できれば、紙を捨て去ることができると考えられます。

 

e-文書法適用に向けた留意点

それでは実際の企業においてe-文書法に対応したビジネスプロセスを構築していく場合には、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。法律内容の理解を前提として、留意点などについて見ていきましょう。

電子化対象書類の見極め

e-文書法の対象となっている文書の種類はかなり多い傾向です。これらの中で、どの文書を電子化対象にするかを見極めることが重要な一歩となります。
さらにe-文書法の対象は、国税あるいは地方税関係書類のような、企業ならば必ず存在する汎用書類だけでなく、医療関係書類など、業種・業態特有に扱われている書類も多数存在します。

電子文書の積極的な利活用

e-文書法の適用を検討するにあたって、コスト削減効果としては、わかりやすいため重要視されがちといえます。しかし、コスト面だけにとらわれず積極的に「電子文書の利活用の容易化」という側面を活かしてもらいたいものです。
例えば、紙文書をスキャンして電子化するよりも、可能ならば、オリジナルの文書を電子文書で作成して流通・保存できるよう検討すべきでしょう。
紙文書をビジネスプロセス間に存在させず「紙文書を受け取らざるを得ないのか」「紙文書を作成元とのネットワーク化は実現できないのか」などの検討が重要です。

 

まとめ

今回はe-文書法の成り立ちとその有効性について見てきました。e-文書法の成立によって、スキャナ部分を含め、ほぼすべての書類の保存などが電子的にできるようになりました。
今後も対応を検討する企業が増えていくと考えられますが、その効果を最大限に享受するためには、必要な業務フローの整備が必要です。

また、電子文書による保存は最近の個人情報の流出に見られるよう、紛失、改ざんの可能性が高まっています。このような事態が発生した場合の企業側の損失は計り知れません。民間事業者においては、電磁的記録の保存などに際しては十分な注意を払う必要があります。

 

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● 著者

田中 仁

田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。 東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もあり。